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理系の食育

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情緒的になりがちな食育。そんな食育に、科学とクールな精神を。
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記事一覧

レシピの世界のトランスフォーマー

分かりやすいレシピを書けと言われて困る料理好きだけどレシピを書くのが面倒。 世の中にはそういう人もけっこういるのではないかと思います。 自分用にメモとして記録する分には、自由に書きたいように書けばよいし、全部もれなく書く必要もありません。 しかし人に見せるものを書くとなると、話は変わります。 分かりやすく、きちんと伝わる書き方が求められます。 言い換えると「再現性」が必要です。 世の中で目にするレシピには、読んで分かりやすいものと分かりにくいものがあります。 分かりやすさ

地味~なフードテック

なにごとにも派手な面と地味な面があります。 今回は、いわゆるフードテックの世界にも派手と地味があり、地味なものもけっこう大事という話です。 フードテックとは、食の領域を表すフード(Food) テクノロジー(Technology) を組み合わせた造語です。 派手なフードテック数年前からフードテックはメディアなどで注目される言葉になっていますが、メディアが面白がるのは主に以下の3分野です。 調理家電 代替肉 分子ガストロノミー 今回は「地味なほう」にスポットを当て

コーヒーには醤油、紅茶にはトマト

食材にはさまざまな香り成分が含まれていますが、 共通する香り成分を持つ食材どうしは 料理の相性が良い 共通する香り成分の種類が多いほど相性は良くなる という考え方があります。 これを 「フードペアリング仮説」 といいます。 もともとはイギリスのシェフがキャビアとホワイトチョコレートが相性抜群であることを発見したことがきっかけ。 この仮説にもとづき実際に香り成分を調べた結果、相性の良い意外な組合せがいろいろと発見されています。 ▽ たとえば、 チョコレートとカ

分子栄養学について調べてみた

Twitterの栄養界隈は大きく二つに分かれているらしい。 一つは管理栄養士を中心とした、食事摂取基準など活用しつつ、さまざまな独自性を持っておられる方々。世間一般的な栄養の専門家です。 しかしながらよくよく眺めると上記とは異なり、「分子栄養学」「オーソモレキュラー」と呼ばれる、別の集団がどうもいるようです。 とりあえずググってみると、、 うーん、予測変換が香ばしい。 これは調べるしかない!ということで、私なりに調べてみました。 結論「栄養学」とは現場で使える、す

機能性食品はこう調べる(後編)

前回までのあらすじ 機能性表示食品について調べようにも、本家のWEB サイトは分かりにくい・・・そこでわかりやすいサイトにたどり着いた筆者らはいろんな機能性表示食品を調べたり、お目当ての食品の情報を入手することができるようになった。しかし、概要を眺めるだけでは物足りない体になってしまった我々は、巣窟ともいうべき消費者庁のサイトに足を踏み入れるのであった・・・。 という冗談はさておき、後編行きましょう! ※根拠論文を知りたい人は「ついに論文にたどり着く」まで飛ぶべし!

宇宙事業と食の課題

宇宙での食は課題が山積み:宇宙飛行士はカロリー不足になっています。 要員としては、微小重力(鼻が詰まる、腸が動きにくくなる、、など)、 閉鎖環境(騒音、におい、二酸化炭素濃度)などが挙げられます。 今後これらの課題に対して解決策を見つけていく必要があります。 ●はじめに地上でも生きていくうえでなくてはならないもの 「食」 そしてそれは楽しみであったり、 コミュニケーションツールであったりします。 宇宙飛行士のアンケートで、最も楽しみにしている時間に 「食事」を選択している人

機能性食品はこう調べる(前編)

最近何かと話題の機能性食品。 昔は「血圧高めの方に」とか「おなかの調子を整える」みたいなのが多かったけど、最近は眠りの質を高めるとかメンタルサポートとか、色んな訴求(ヘルスクレーム)を見かけます。 これはひとえに機能性表示食品という制度ができたことが原因なのですが、2015年に制度が始まって以降これでもかと新製品が生まれています。 ほんまに効くんかい、とか、消費者庁は認可していません、とか、これは企業の責任です、とか何かと怪しまれやすいのが特徴。 その代わりと言っては

料理をしくみ化したらQOLが上がった話

家事シェアや時短家電を駆使し、日常はまあまあ快適に過ごしている我が家ですが、一点だけなかなか解決できなかった家事がありました。 それは「料理」です。家族の全員が得意ではなく、こだわりもないのに毎日考えなくてはいけない料理。 この課題に向き合い、一つの解決策と言えそうな挑戦をしているので、noteにまとめたいと思います。大袈裟に書きましたが、そのくらいには我が家の食生活にパラダイムシフトが起きました。 料理をしくみ化すると得られるもの我が家は料理をしくみ化したことでこんな

人類史に影響を与えた食の発明

研究とは新しい何かを生み出すお仕事なわけですが、どんなアイディアマンでも無から何かひねり出すのは至難の業。 であれば、過去のとんでもない発明から何か学べるんじゃないのかな?? そんな降ってわいた質問に、Twitterの智が結集し、数多くのコメントをいただきました。 そのコメントに出てきた皆様の意見を、時代背景やその目的別に構造化して図解してみて、私なりの一つの結論に辿り着きました。 それが、 必要不可欠な存在である食に対して、偉大な発明は人はそれを必死に追究しなくて

食育の「文系」「理系」

現在の食育には何となく「文系」イメージがあります。 「家族団らんの食事がよい」 「子どもには母親の手作り料理を 食べさせるべきだ」 「日本人なら国産のものを食べよう」 といった情緒的な側面があるからです。 実際には、 「家族団らん」といっても… 現代の社会で家族団らんは、なかなか難しくなってきています。 「母親の手作り」といっても… そうした役割を母親(女性)に押しつけるのは古い考え方だ、という人が増えています。 「国産」といっても… 一般には国産の食べもののほうが

料理を失敗しない世界

自炊ビギナーの悩みここ2年で料理の宅配が増えましたが、自炊する機会も増えたと言われています。 ですが自炊に戸惑っている人は少なくありません。 …昔はともかく、現代では多くの人が似たような経験をしているのではないでしょうか。 「ショッピング(食材を買う)」 「レシピ」 「クッキング(料理)」 この3つが分断されていることが、こうした「悩み」を生み出しています。 何を買うのか どんなレシピにするのか レシピに沿ってどう調理するのか もっとも難しいところの「火加減」

栄養系情報はなぜ氾濫するのか

少し前にこのツイートにたくさんの反応をいただき、皆さん食と健康に関する情報がSNSに氾濫していることは身をもって体感されてるんだなと改めて感じさせられました。 以前「栄養系情報を読む時に気をつけている七つのこと」と言うコラムで整理してみたものの、そもそもなぜ気をつけなければならない状況になっているのか? そのメカニズムを探ることで、気をつけ方ももしかしたら見えてくるかも? と言うことで、今回は「栄養系の情報はなぜ氾濫するのか?」のメカニズムを探ってみて、なぜ気をつけなけ

『見た目そのまま、やわらか食』は新しい食文化を形成できるか?

「嚥下(えんげ)」という言葉をご存じでしょうか? ザックリいうと、飲み込むこと。もうちょっと言うと、口の中で咀嚼したご飯を飲みこみやすい大きさに取りまとめ、喉の奥へ飲みこみ、食道から胃へ送り込むこと。 この嚥下機能は、年を取ったり、麻痺などの障がいによって、低下します。もしくは、赤ちゃんも嚥下機能は低いですね。 嚥下機能が低下すると、普通のご飯が食べにくくなります。飲み込めなかったり、誤嚥といって食道ではなく、気道側に食べ物が入ってしまったり。それを防ぐのに、使われるの