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機能性食品はこう調べる(後編)

前回までのあらすじ

機能性表示食品について調べようにも、本家のWEB サイトは分かりにくい・・・そこでわかりやすいサイトにたどり着いた筆者らはいろんな機能性表示食品を調べたり、お目当ての食品の情報を入手することができるようになった。しかし、概要を眺めるだけでは物足りない体になってしまった我々は、巣窟ともいうべき消費者庁のサイトに足を踏み入れるのであった・・・。

という冗談はさておき、後編行きましょう!

※根拠論文を知りたい人は「ついに論文にたどり着く」まで飛ぶべし!

入り口はこちら

前回見たように、例のデータベースの商品概要欄から消費者庁のサイトに飛べるんでしたね。

https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42203281181300

先ほどとお同じような要約が書いてあるだけなので、ここには特に新しい情報はありません。ここからが届出資料の真価。

「様式」と言うところに詳しく書いてあります。ほ


様式I 届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(今いるところ)
様式II 安全性評価
様式III 生産・製造及び品質の管理
様式IV 健康被害の情報収集体制
様式V 機能性の科学的根拠
様式VI 表示の内容/表示見本
様式VII 食品関連事業者及び届出食品に関する基本情報/作用機序

中でも「様式Ⅴ:機能性の科学的根拠」と「様式Ⅶ:基本情報/作用機序」あたりが機能性について重要なポイント。

では、試しに「様式VII 食品関連事業者及び届出食品に関する基本情報/作用機序」をタップしてみましょう。

それぞれ一度別ウインドウが立ち上がって要約が表示されますが、下部にお待ちかねの届出資料のPDFが鎮座しています。

では見に行きましょう!

作用機序を知りたい

本 まずはなぜ効くのかその作用機序(メカニズム)を探るべく、様式Ⅶ:基本情報/作用機序を見てみましょう。

基本的には様々な文献を引用し、想定される作用機序の考察をしています。

例えば今回の事例だと1000字強で語っておられるのですが、要約すると

一時的な精神的ストレスがかかる状況におけるストレスおよび睡眠の質に対する機能(デルタパワー値UP)は、この乳酸菌の迷走神経求心路に対する刺激、脳視床下部室傍核の神経興奮抑制、および交感神経活動の亢進に対する抑制、コルチゾール分泌抑制等の神経・内分泌系を介した作用機序によるもの。

ということだそうです。

このあたりはエビデンスがどうこうという話ではなく、そのような実験結果があり、文献などの情報をまとめるとこう言えるのでは?というくらいでとらえたらいいかと。メカニズムの場合、in vitroやin vivoのデータを参照することも当然多いですね。

メカニズムはあくまでメカニズムなので、実際の効果効能の確からしさをサポートするものくらいにとどめて解釈すべき。

とはいえ、このあたりが研究的には面白いところではあるんですけどね。

効果を知りたい

大まかな流れ

いよいよ本丸です。「様式Ⅴ:機能性の科学的根拠」を見てみましょう。

・・・これがまぁ長いんですよ。

まずは、機能性表示を届け出るにはどのように機能性評価を行ったかでざっくり分けられていて、「最終製品を使ってヒト試験をしたか」「機能性関与成分に関する既存研究があって、それをレビューしたか(SR)」のいずれか。

なお、前述のレポートによると、届出されている約95%がSR。これは、素材メーカーが研究をしていれば、最終製品を扱うメーカーがいくらでもSRで機能性表示食品として出せるからであって、問題視される(=最終製品で試していない)こともあるとかないとか。

基本的な流れは
・抄録(目的、方法、結果、結論)
・はじめに(背景、目的)
・方法(論文の探し方)
・結果(見つかった論文)
・考察(エビデンスの要約)
・結論

大事なことが「目的」と「結果」にあるので、もう少し見ていきます。

(※)この資料は閲覧を目的に公開されているもので、むやみに転記やスクショなどすべきではないので、これ以降は某乳酸菌飲料の話ではなく、ここを見たらいいよ!というポイントだけお伝えします。興味ある方は実物を見に行ってみてください。

目的(PICO)

P33
PICOとはいわゆるリサーチクエスチョンというやつで、そのヒト試験(介入試験)が
P:誰に(Participants)
I:この介入をすると(Intervention)
C:何と比較して(Comparison)
O:こんな結果になる(Outcome)
が整理されます。

Pについて、広く論文を探す(=特定のヒトだけの者じゃないよ)ため、かなりざっくりしていることが多いので、これを見るだけでは誰に効くのか、だれで実験した結果なのかは分かりません。のちの論文を見ましょう。

またCについて、たまに「ただの前後効果だよ」とか「プラシーボ(気のせい)だよ」という意見もありますが、摂取しない人と比べている論文が基本ですので、そう言い切るのは早計です。

結果

P35
ここでは見つかった論文の概要が書かれています。

試験対象者(人数、性別、属性(肥満?便秘?疲れてる?など))やどんなデータをとったか(体重?体脂肪?睡眠時の脳波?質問票?)がもう少し詳しく書いてあります。

ここを読むだけでも大まかな感触はつかめるので、ここをとりあえず読んでみることをおススメします

今回の場合、SRで引っかかった論文は1件のようですが、複数ある場合は複数ここに要約が並びます。

考察

P36
出てきた論文から最終的なヘルスクレームにこういうロジックでつながるんだよという主張が書かれています。

ついに論文にたどり着く

P42
はい、ここでやっと論文にたどり着きます。ここまで長かった・・・!

そもそもここまで覗こうと思う人は論文が目当てでしょうから、ここが大切!どんな論文が引用されたか、その結果はどうなっているかが表にまとまっています。

さて、この長ーい資料で論文情報がどこにあるのか、見つけるコツを伝授しましょう。

このPDFはA4縦長で書かれているのですが、論文パートだけ横長の資料になってます
なので、ザーッと流しても「あっ、横長になった。論文パート始まったな」ってわかるので、論文がお目当ての方はその見方でも良いでしょう(良いのか?)

採用論文リスト

どんな論文が引っ掛かったのか、それがどんな試験か(PICO)が、これまで以上にまとまっているので、これを見るとどんな研究がなされたのか大体わかります。

特にP(どのような人に)とC(何と比較して)の詳細はこれまで以上にきっちり書かれているので、PとCを確かめたければここを読みましょう。

ちなみに、今回の乳酸菌の件で引用されていた論文はこれですね。

各評価シート

採用リストから少しだけ間をあけて、評価結果のまとめが書いてあります。PICOのOのパート。

ここでは、どんな評価項目(体重とか脳波とか)がどの程度(定量的に)変化してそれは統計的に有意であるか(P<0.05)ということがまとまっています。

ですので、この指標がこれくらい効くという、ある意味ユーザが一番知りたい情報がここにあるとも言えるでしょう。

こんなところに注意しよう

さて、色々見てきましたが、巷でいわれるような効果効能や企業の提示した要約など、全て鵜吞みにしてよいか?と言われると、答えはNO。

ということで、最後にこういうところに注意してフラットに読んでみてねというポイントを独断と偏見でまとめてみました。

たくさん届出資料を読んできた上で全体を通じた感想なので、特定の製品の批判・推奨じゃないよ(しつこい)

いい話がまとまってる

どんな観点で論文を探してきたのか記載はあるのである程度の公平性(バイアスの排除)は担保されているものの、やはり届出する人のまとめなので、全体としてバイアスがある(つまり、贔屓目に書かれている)ことは織り込み済みで全体を眺めるべし。

自分に当てはまる?

よくあるのがダイエット系で、論文ではBMI25以上のヒトなのに、これを飲んでやせようとしてる人がそもそもBMI=20くらいみたいなこと。あるよね。痩せるかもしれないけど、その保証はないと思った方が良い。
これは分かりやすい例だけど、例えばすごく特定の条件下のヒトの試験なのに、だれでもOKかのように書かれているのもちょっとなぁ・・・というのもしばしば。
外挿性の話(つまり、試験条件じゃない人にも当てはまるか)は明確な根拠がないこともあるので、注意しましょう。

効果は体感できるレベル?

「〇〇質問票で0.2ポイント増加し、対照群と有意差がつきました!」
・・・うん、差がついたのは分かった。ところでその0.2ってどのくらいなの?っていうの、結構あります。そして、ここまでの情報は論文(あるいは届出資料の論文アウトカムパート)まで辿らないと分からないことが多い。この数値は目標値になるので、本来は知っておくべき値です。

どのくらいの期間飲むの?

これは要約にもちゃんと書いてあるので、割とすぐ見つかる情報・・・にもかかわらず、「8週間摂取で効きます!」って書いているのに、飲んですぐ効果を求めないように。
ただし、「食品は即効性がない」と断言している人がいますが、そうとは限りません。調べてみると結構飲んですぐ効果を出すものも届出されいるので、ちゃんと読んで否定しましょう。

ということで、最後はネガティブなことばかり書きましたが、届出されている以上一定の研究成果はあるわけですし、何かしらの機能は期待できるのは間違いないはず。

健康食品の基本はそれ自体に過信することなく、生活習慣改善の一助にしてもらい、その伴走者として健康食品を活躍させてもらうことですので、どうやったら自分にとって有用なのか?ということを色々調べてより良い健康食品ライフをお過ごしください!

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