見出し画像

若者の価値観を「音楽文化」を通して読み解く

前回の記事

この続きに当たります。

さて、生徒とのコミュニケーションを考える上で相手の価値観を理解することは重要であるということを書きました。

では、どうやって価値観を理解すればよいでしょうか。

何が価値観を反映するか

価値観を反映する最たるものは「文化」です。

民族や国家の文化となると芸術や音楽、歴史や言語といったものになります。

では、「高校生」の文化とは何でしょうか。

私は「サブカルチャー」大きな部分を占めているのではないかと考えています。

彼らがよく見る漫画やアニメ、小説、音楽などには彼らの価値観が表れていると考えても、そう間違いはないでしょう。

何を好むかを知ることは、何を善悪の基準とし、どういった倫理観で、何をもとに価値判断を行っているかを知ることにもつながるでしょう。

そして私は「音楽文化」がその大きな手掛かりの一つと考えています。

2020年代の音楽と若者

音楽はその聴き方から配信方法まで周辺環境が大きく変わりました。CDを買って、取り込んだりする若者は一人もいません。

スマホからサブスクで音楽を聞いています。そのため、アルバムを全曲聞くのは熱心なファンだけです。

ランキングの高さ、人気、再生数の多いアーティストは存在しますが、かつてのようにクラスのだれもが聞いている歌手やアイドル、楽曲はありません。個々人の聞いている傾向でおすすめ曲が変化するためです。

つまり、現在の高校生には誰もが知っている有名歌手という存在がいない、ということです。仮に知っていても、曲をみんな聞いているということはまずありません。

サザンオールスターズや山口百恵、私の世代で言えば尾崎豊、Mr.Children、B'z、宇多田ヒカルや浜崎あゆみなどに相当する歌手は現在には存在しないのです。

カリスマ性や歌唱力の問題ではない

こうした文脈において、私たちおじさん世代は「最近の歌手の力量が低いからだ。昔は~」という昔語りをしがちです。
(自分たちも上の世代に石原裕次郎を熱く語られて、話半分で聞いていたくせに勝手なものです)

歌詞には恋愛や悩みなどのものが多いのはいつの世も同じです。

JPOPの基本形である「イントロ・Aメロ・Bメロ・サビ」の構成もいまだに現役です。(ボカロからの派生であるYOASOBIやAdoなどはやや異なる印象を受けます)

カリスマ性や歌唱力が劣っているわけでもありません。

変わったのは音楽が集団で楽しむものではなく、個人とその趣味でつながった人で共有する文化となっているということです。

一人で聞き、SNSで共有する音楽

そもそも、聞き方自体がスマホでサブスク、ワイヤレスイヤホンでながら聞きをします。(ここまでは少し前のiPod世代もそこまで変わりません)

そして、気に入った曲をSNSでシェアします。同じ曲を気に入った相手とネット上でゆるくつながる、という具合です。

その結果、クラスの友人とSNSの友人のどちらに自分の価値観を共有できる相手がいるでしょうか。

彼らにとってクラスの友人はたまたま生まれた場所が近かったり、学力層が近かっただけの存在に過ぎないのです。

アンチ反社会性

また、彼らは安定した社会で共生関係を維持するという価値を重視する傾向が強いです。

Twitterでもたびたび話題になる話ですが、「盗んだバイクで走り出す」ことを全く共感できません。彼らにとってあれはただの反社会的行為です。

オルタナティブロック系の薬物やアングラ、反社会性というワードには嫌悪感を抱くことが多いようです。ホワイト化の顕著な例と言えます。

このあたりは、フォーク、ロックやパンクがカウンターカルチャーとして親しまれていた時代との違いかもしれません。

相手の文化を知ること

若者文化を知ることに対し「いい年をして、若者におもねる見苦しい奴だ」という批判を受けることがあります。

しかし、仕事上取引のある相手に対して、その相手の文化や価値観を知ろうとすることは決して少なくないと思います。

海外の取引先と交流を図る場合、重要なのは相手の文化を知ることです。相手の国の文化や風習、流行などを知らずに商談をするビジネスマンはいるのでしょうか。

教員にとって生徒は最も頻繁に訪れる主要顧客なのです。その人だけでなく、周囲を含めた価値基準を知ることは決してマイナスにならないはずです。

TSUTAYAでCDを借りている場合じゃない

現代の若者の価値観に触れることのスタートは、SpotifyやApple musicなどのサブスクに契約して、とりあえず音楽をガンガン聞いてみることです。
(個人的には音質の良いDeezerをお勧めしますが、邦楽が少なめです)

流行っていそうな曲やグループを片っ端から聞いて、その感想を生徒と話してみるのです。

そして、ほとんど話が通じない、お互いの聞いている曲が違い過ぎて話が合わないということに気づきます。
(あるいはたまたま同じ傾向に気づき、強烈な親近感を感じるか、です)

そういった、オフラインでの分断と細分化、オンラインでの交流とネットワーク化に気づくことが若者文化に近づく第一歩であり、生徒の価値観を理解するきっかけになるのではないかと感じています。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?