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短歌と徒然なる小話4

春風が肌を撫でて知らせゆく一緒にケーキは食べれませんか 頬を撫でるような優しい春風は、忘れかけていたことを思い出させた。今日はあなたの誕生日か。ゴトーの日なんだよね、とくしゃっと笑うあなたの顔は風が吹いては消えていく。どんどん思い出せなくなるあなたの顔や仕草。今1番悲しいことがあるとすれば、あなたといられないことではなくて、あなたとの幸せは過去のものであると実感することだ。 ねえ、愛してほしかったな。終わりが見えていたとしても、あと少しだけ私をその目の中に入れてくれはしない

    • 短歌と徒然なる小話3

      レポートを書かなかった予習すら終わってない頃アメリカを思う レポートが書けてないし、予習も終わってない、なんにもできていなくて焦りだけがたまって絶望する。自分の不自由な生活に心が蝕まれる。 これは誰しもにあると思う。焦りだけが募るときは、きっと、自分の世界に焦点を当てすぎているんだ。 日々の変哲もない生活にすら追いつけなくなったとき、そんなときはアメリカの研修旅行で出会った人のこと思う。ハイスクールの生徒、小太りの陽気な先生、横断歩道でお金を要求するホームレス、チョコレ

      • 郵便局の上にない世界

        私が欲しかったもの。 それは郵便局の上にある6畳のワンルームに詰まってたもの。 まぶたに鮮明に焼きついた部屋の中で、私は何度も幸せを辿った。 私が捨てたいと思ったもの。 あるいは、あなたのために捨てられると思ったもの。 私は結局捨てられなかったよ。私が積み重ねてきた全てを捨てようとしたとき、怖くなった。 指先1本、すんでのところですがって、やっぱり私は今の私でいることを選んだ。 正しかったか分からない。でも、若さゆえの悩みだったような気もする。今の私はきっと、昔よりもっと

        • 短歌と徒然なる小話2

          岐路に立ち選ばなかった未来思う別の世界の私は元気? 今までずっとこの片田舎で生きてきた。この街は田舎だけど、不便じゃない。病院もスーパーも、施設も学校も全てが不自由なく配置され、交通網だって整備されている。全てが嫌になったら逃げ込める大きな本屋さんだってあるし、そこにはお気に入りの店員さんだっている。 けれど、私はこの狭い世界だけしか知らずに死んでいいんだろうか。言葉にできない焦りを感じ、もどかしくなる。 これが人生の岐路ってやつなのかもしれない。こういうとき、案外答えは

        短歌と徒然なる小話4

          短歌と徒然なる小話1

          散らばった髪と一緒に6畳に散らばった愛ともさよならをする 永遠なんてものはない。心のどこかでそれを分かっているのに、私は求めてしまった。あなたが愛してくれた時間の全てが幸せで、それが私を生かしていたことを、あなたは知っているんだろうか。 あなたとの時間が心地よくて、私はずいぶん弱くなってしまった。だからせめて、髪と一緒にこの部屋ともさよならさせて。じゃないとあなたを思い出していつまでもがんじがらめだ。 あなたがいない6畳でゴロンと転がり物思いにふける。しばらくして、軽く

          短歌と徒然なる小話1

          あんなに欲しかったものを手に入れた途端輝きが失せていくように、あんなに味わいたかった幸福も手に入れた途端欲にまみれてしまうのはなぜだろう。 好きになれば好きと言ってほしいと思い、好きと言われれば付き合いたいと思う。付き合えば声が聞きたいと思い、声が聞きたいと思えば会いたいと思う。会いたいと思えば交わりたいと思い、交わればそばにい続けてほしいと思う。 もうその頃には、あんなに言ってほしかった好きの言葉さえ当たり前になって、なんの鮮度もなくなってしまう。私たちが本当に欲しかったも

          ただいま

          ただいま

          幸せの話

          幸せって何だろう。 旅行、食事、家族や友人との時間、眠ること、きっとたくさんの幸せのかたちがあって、それはそれぞれの人の心を造るものになるのだと思う。 私が今日見つけた幸せは、夜中にひとりで散歩することだ。そんな無駄な時間を幸せだと言える私は、色んな意味で恵まれているお気楽な人間なのかもしれない。 今日はとても寂しくなった。誰かを求めたくなった。けれど人といる時間は私にとっては疲れてしまうことだからなんだか違うと思った。 最近家の近くにできたコンビニに行ってみようとふと思い

          幸せの話

          大人にはなれない

          小さい頃、歳上の人を見ると大人だな〜と憧れずにはいられなかった。そして、自分もいつかあんな風に格好良くなると信じて疑わなかった。 いつからだろう。大人は、さほど大人ではないと気づいたのは。 20年生きてやっと、何となくだが、この未熟な状態のまま大人と呼ばれる人間になっていくことに気づいた。これだけ年月を重ねて、やっと自分は進化しないことを知った。プリキュアはできるけど、私にはメタモルフォーゼなんてできないのだ。 「大人になったけど、大人は意外と大人じゃないな。心の中が1

          大人にはなれない

          評価

          自分の考えを書きなさい。 そんなレポート課題が出る。私はこれが苦手だ。 何を書いていいか分からなくなる。 どうして自分の考えを他人に評価され、点数をつけられなければならないのか。 どうして考えたことをそっと自分の中にしまって大切にしていてはいけないのか。 物事にはなにか評価が下されることのほうが多い。 noteを始めたのは、自分の言葉や考えを大切にしていたいからだった。けれど、いつの間にかスキの数なんて気にしていて、他人からの評価をどうしても見てしまう自分がいた。 自分

          手紙

          昔、大切だった人から手紙をもらった。臆病で弱気な私は、何かあるたびにその手紙を見ては泣いていた。手紙は一種の魔法みたいなもので。その中に書かれた私はとても綺麗で、見るたびに私は何にでもなれるんじゃないかと思わせてくれた。 時は経って、私も少しずつ色を変えて、大切だった人以上に今大切な人ができて。 そうやって生きているうちに、私の使える魔法は手紙だけではなくなった。ポケモンだと、体当たりだけじゃなくて水鉄砲や火炎放射を覚えたようなものだ。 そうしていつしか、私はその手紙を見な

          夜の縁

          昔から、ふと夜眠れなくなることがある。朝方新聞紙を届けるバイクの音が聞こえはじめて、誰かが生きている証を見つけて、やっと孤独な夜の縁から救われて、安心して目を瞑れるような気がしている。 今日もまた眠れない。 たまに、このまま夜の縁から落とされてしまうんじゃないかと怖くなる。夜に縁なんてないし、みんなに等しく与えられている時間なのだけれど。 でも最近は、これも悪くない。なんて思っていたりする。だって、この夜の縁を眺められるのは今自分ひとりなんだから。 小さい頃は眠れないこと