短歌と徒然なる小話2

岐路に立ち選ばなかった未来思う別の世界の私は元気?


今までずっとこの片田舎で生きてきた。この街は田舎だけど、不便じゃない。病院もスーパーも、施設も学校も全てが不自由なく配置され、交通網だって整備されている。全てが嫌になったら逃げ込める大きな本屋さんだってあるし、そこにはお気に入りの店員さんだっている。

けれど、私はこの狭い世界だけしか知らずに死んでいいんだろうか。言葉にできない焦りを感じ、もどかしくなる。
これが人生の岐路ってやつなのかもしれない。こういうとき、案外答えは決まっているものだと思う。本当の私は、何をしたいんだろう。何を望むんだろう。

大袈裟な程までの岐路に立ち、思ったことがある。それは、岐路なんてものは大小こそあれ毎日何千何万とあるということだ。例えばバイト先で飲み物をこぼさなかった私、お昼寝しなかった私、夜ご飯を食べなかった私、今日勉強した私。人生は、毎日は、選択の連続だから、その選択のたびに、私の中には選ばなかった私の未来が存在する。選ばなかった私自身の上で、今の私は生きている。

選ばなかった未来の私たちは、今も元気だろうか。そんなことをふと思いながら、私は片田舎発都会行きのバスに揺られる。窓の外に流れていく片田舎を眺めながら、片田舎に残った分かれ道の先の私もどうか元気でありますように、と願っていた。