夜の縁

昔から、ふと夜眠れなくなることがある。朝方新聞紙を届けるバイクの音が聞こえはじめて、誰かが生きている証を見つけて、やっと孤独な夜の縁から救われて、安心して目を瞑れるような気がしている。

今日もまた眠れない。
たまに、このまま夜の縁から落とされてしまうんじゃないかと怖くなる。夜に縁なんてないし、みんなに等しく与えられている時間なのだけれど。
でも最近は、これも悪くない。なんて思っていたりする。だって、この夜の縁を眺められるのは今自分ひとりなんだから。

小さい頃は眠れないことが怖くてたまらなかった。
今は眠れないことに固執せずに生きていける。眠れない以外の世界があることに気づける。どうやら私は少しだけ大人になったらしい。

今日もまだまだ眠れそうにない。
それもいい。眠るかどうかは、私が決めていいんだから。
だから楽しもう、私だけの秘密を。もう少しだけ今日の夜の縁を眺めることにする。