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母の介護 そして別れ

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#親の介護

プロ

プロ

ベッドから身体を起こして
立たせようとすると
足が痛むようで
顔をしかめて
歩くことができなくなった母

「ここが痛い?」と
色々なところを
触わりながら母に尋ねると
足でも足以外のどこでも
私が触ったところすべてを
痛いと答えて

どこがどう痛むのか
全くわからず
どうしたものかと考えこんでしまい

このまま、もう歩けなくなってしまうのか・・

そして寝たきりになってしまうのか・・

寝たきりに

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真夜中の戦士

真夜中の戦士

母を起こすことから始まる
いつもの朝

母が寝ている部屋の襖を開けると
目に入ってきた母のベッドの景色が
いつもと何か違っている

一体何が起こったのか?
すぐには理解できない光景が飛び込んできて
一瞬とまどったが

しかし
ほんの数秒で状況を把握して
その途端
私は慌ててベッドに駆け寄った

母は、介護用ベッドの
転倒予防の鉄柵の間の狭い隙間から

頭をだらんと下に垂らし
その垂れた頭の下の床は

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認知症の母との初詣

認知症の母との初詣

神社に続く急な長い坂道を
母が乗った車椅子を
息を切らして一生懸命押しながら
やっと坂を上りきって
その先の神社の境内に入っていく

初詣で皆がお詣りをするのは
神殿までの数段の
階段をのぼった先になるが

そこまで歩くことができない母のため
神殿が見える階段下に
母が乗った車椅子を停める

そして車椅子に座る母に向かって
私は少しかがみこんで
こうやって手を合わせてお詣りしてねと
両手を合わせて

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ぶらぶら

ぶらぶら

認知症の母の背中側から
両脇の下に私の腕を入れて
身体を支えて歩かせようとすると

歩くのが面倒なのか
時々母は
軽く足を浮かせて
ぶらぶらさせて
体重を預けてくることがあった

小さな子供の
お茶目な悪戯のようで
微笑ましく思えて
クスッとなっていたが

小柄な母が
足腰も弱って
認知症も段々と進んでいって

自然と
私が母の面倒を見る
保護者の立場になって

少しずつ
親も自分と同じように

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大事件

大事件

触ってはいけない
不浄なものだという事が
認知症の母には分からなくなっていて

便が出てしまったおむつの中に
手を入れてしまう事がある

母はおむつの中が
気持ち悪くて
落ち着かなくて
手を入れてしまうのか

ただ不快を感じたり
自分の欲求に従って
やっているだけの事なのだろうが

母のベッドに近づいた時に
何となく臭ってきたり
母の手が汚物で汚れているのを
発見してしまったら
すぐに対処しないわ

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東京新聞

東京新聞

昔、一時期
家で東京新聞をとっていた

東京新聞と
うちの家族のかかわりは
ただそれだけだったけれど

いつのまにか
母の頭の中では
私が
東京新聞に勤めていることに
なっていたようで

ある日
「東京新聞を取り始めました」と
デイケアの職員の方が
私に言ってきた時にも
ああ、そうなんだと
ただ思っただけで

仕事に介護にと
割と忙しくしていた
その頃の私は
別に気に留めることもしなかったが

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夜中の冒険

夜中の冒険

朝、母を起こそうと
ベッドの脇まできたが
ベッドに寝ているはずの
母の姿が見えない

布団をめくってみたが
そこにもいない

一体どこに行ってしまったのか
母が消えてしまった

家の中の伝い歩きも
一人ではおぼつかないので
まさか
一人で起きて
どこかへ行くとは到底考えられない

母を起こしに来た時に
ベッドに密接している押入れが
開いていることには
すぐに
気づいてはいたが

押し入れとベッドに

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おはようってなぁに?

おはようってなぁに?

朝、いつものように
ベッドで目を覚ました
認知症の母に
「おはよう」と声をかけると

「おはようってなぁに?」
と尋ねられた

母はたびたび
自分がどこにいて
何をしているのか
わからなくなったり

はたまた
自分が誰なのか
わからなくなったり

挙句の果てには
ある日、年齢を尋ねてみると
6歳と答えることもあったが

そんな状態の母にとって
「おはよう」が分からなくても
全く不思議ではない

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むすめがかえてきますように

むすめがかえてきますように

母の通ったグループホームで
ある年の七夕の日に
母が震えるような字で
書いた短冊に
「むすめがかえて(帰って?)きますように」
と書かれていた

母は、一度目の結婚で
生まれて1年も経たない我が子をおいて
家を出されて

2度目の結婚で生まれた私は
幼少時に交通事故で
生死の間をさまようような重傷を負い

奇跡的に助かった娘が
成人して一人暮らしをしたいからと
家を出ていった時には
母が泣いていた

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