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自分を二つに分けると、死を乗り越えられるかもしれない

 こんにちは。
 今回は哲学的な話からSFまで、ちょっとマニアックな内容かもしれません。

 大事な人を失った時、もしくは自分がいなくなって周りの人が困ってしまうかもしれない、そんなことを考えた時にふとこの記事を読んでもらえれば幸いです。


💊不老不死について考える

 人類の永遠の夢と言っても過言ではないのが、この不老不死。科学技術の発展に伴い、寿命はかなり伸びましたが、どうやら頭打ちのようです。

 分かってはいるものの、死は怖い。
 これに対し人類は恐れ、怒り、落胆し、そして乗り越え、時には受け入れようとしてきました。
 体の構造はどうやらそう簡単に命を伸ばすことはできなくても、実は考え方次第で、部分的にこの命を「半永久的に伸ばせるかもしれない」そんなことについて語る記事です。

 どうぞお付き合いくださいませ。

💧命を二つに分けて考える

 ここでは私たちの命を二つに分けて考えます。
 一つは

私自身が感じる命

もう一つは、

他者が私を感じる命

です。

 そもそも、この二つは分けられないものでした。
 命があれば私たちは何かを感じますし、言葉を発します。見たり聞いたりして、それを残したり、誰かに話したりします。
 そうすると周りは私たちが生きていると感じます。私たちが話したり、動いたり、喋ったりするところをみて、「この人は生きている」となんとなく感じるのです。一方で、横になって、しゃべらなくなって、目を閉じているところを見ると、「命らしさ」はとても希薄に感じられ、残された心臓の鼓動などを頼りにこの人は生きていると信じようとします。ですが、しゃべらない、動かない人が他社に影響を及ぼすことはなかなか難しいです。

 私たちが「生きたい」と思った時、この前者である「見たい」「感じたい」といった欲望、これに関しては私が考える限り、どうしようもなさそうです、現時点では。

 ところが、後者の「他者が感じる私の命」。これに関しては意外となんとかなるんじゃないかと思えるようになってきました。今回はこの特に後者である「他者が感じる私の命」について掘り下げてみます。

🏃‍♀️周りが感じるあなたが生きているとは?

 「わすれられないおくりもの」というお話をご存知でしょうか。

 賢くて、いつもみんなの頼りにされているアナグマ。大変歳をとっていて、知らないことはないというぐらい物知りです。だからこそ、自分が死ぬのがそう遠くはないことも、知っていたのです。

アナグマは死ぬのを恐れてはいません。だけど、残していく友だちの事が気がかりです。みんなへの手紙を書き残したその夜、アナグマは不思議な、そして素晴らしい夢を見たのでした……。

「絵本ナビ」より

 アナグマさんは自分が死ぬのは恐れていなかったのです、それよりみんなのことを考え手紙を残したのです。
 まわりの友達は最初は非常に悲しみましたが、みんなでアナグマさんに教えてもらったことなどを思い出し、それを乗り越えようとします。

 アナグマさんの体としての命は終わってしまったかもしれないけれど、アナグマさんの一部である思い出や知恵などは今もここにある。そう認識したのかもしれません。

✉️亡くなったはずの娘からの手紙

 とあるテレビ番組ではこのような出来事も放送していました。

 ある日、幼い娘を病気で亡くしてしまった夫婦がいました。
 非常に落ち込んだ夫婦は毎日暗い日々を過ごしていました。ある日、お母さんが部屋を掃除していると、本の隙間に小さな紙切れを見つけました。これはなんだろうと読んでみると

「今日はキリンさんの夢を見ました」

 これを知っているかと夫に聞きましたが、夫も知らないと答えます。明らかに筆跡は娘さんの字でした。
 その後も部屋の至る所にふときづいたときに紙切れが入っているのです。内容も様々で「今日も笑顔でね」や「天気はどう」といった簡単な内容でした。
 しかし夫婦にとってはそれがまるで娘が生きていて、天国から手紙をくれているように思えたのです。

 娘さんは自分がいなくなって両親が寂しがると思って、生きているうちに部屋中に自分が書いた手紙を隠していたのです。それがどこにあるかわからないので、しばらく見つからなかったと思ったら、意外なところから見つかったりして、両親に笑顔を取り戻させたのでした。

💪自分じゃなくて人のことを考えて死ねる人は強い

 ただでさえ怖い死というものを、自分ではなく人のことを思って考えられる人は強い人だと思います。
 自分の意識は無くなりますが、人から見てその人の、人間らしさを感じることができれば、周りからしたら、自分は少しだけ「生きている」ことに近づけることになります。手紙しかり、ビデオなどの映像しかり、まるでその人が生きているかのような痕跡を残し、再度繰り返すことは色々できるようになってきています。

 しかし今までどうしても越えられない壁がありました。それが

変化

 です。

 映像でも、手紙でも一回作られたら、その後変わることはありません。言い換えるとこちらから問いかけても返事はないし、変わることはないのです。
 しかし今、この変化の壁を越えるかもしれないブレイクスルーが起きようとしています。

🏙️変化の壁を乗り越えて、完全に生き続ける

 それがご存知AIの存在です。
 私は専門家ではありませんから、あくまで想像での話です。
 少し前にAIで亡くなった人を再現し、物議を醸し出しましたが、あれもまだ「変化」の壁を越えていません。こちらの問いかけに返事はしませんから。

 ではどうするのか?
 私はこんなことを考えています。
 もし私が死期が近いと悟り、(そうでなくても)とあるプログラムを作って、一年位、ひたすら話しかけたり、一緒に行動をしたりするのです。
 辛い時はこうだとか、昔はこうだったとか、こんなことを考えてるだとか。
 苦しい時はこうするとか、などなど。この膨大な情報をAIにひたすらインプットさせ、融合させる。
 そして可能であれば、1人ではなく、人間のmassとしての膨大な情報と照らし合わせ、一つの「人格」を作り出す。
 もしこれが可能になれば、自分が亡くなった後も、そのAIで作られた人格プログラムが後のことはやってくれることになります。

 これはただ一方的に喋る映像や手紙とは異なり、話しかければ答えてくれます。まるで「生きているのと同じ」ことになります。これができれば「人格」としての命はクリア(不老不死として)したことになります。

🪨あなたは人工物を「ヒト」と認めざるを得なくなる

 いやいや、そんな人工的なものを人間とは思えませんよ、と思うかもしれません。そんな人にはぜひ「テセウスの船」の話を考えてもらえたらと思います。

テセウスが帰還した船には30本のがあり、アテネの人々はこれを保存していた。朽ちた木材は徐々に新たな木材に置き換えられていった。ある者はその船はもはや同じものとは言えないとし、別の者はまだ同じものだと主張したのである。

プルタルコスは全部の部品が置き換えられたとき、その船が同じものと言えるのかという疑問を投げかけている。また、ここから派生する問題として置き換えられた古い部品を集めて何とか別の船を組み立てた場合、どちらがテセウスの船なのかという疑問が生じる。

Wikipediaより

 私たちの細胞も、原則ほとんどが常に新しいものに入れ替わっており、その源は肉だったり、野菜だったり、他者によるものです。それなのに、私たちは今も生まれた時の私と同じなのでしょうか。人とは何なのでしょうか? 何をもって人は人を認識しているのでしょうか?

💁‍♀️あなたはどこまで人を認識している? 限界クイズ!

 太郎くんという人がいるとします。この人の腕がちぎれたとします。あなたはどちらを太郎くんだと認識しますか?

A:腕のない本体
B:腕

 どちらかといえばAなのではないでしょうか。
 
では、今度は太郎くんは首が切れました。幸い装置を使って太郎くんは生きていくことができます。あなたはどちらを太郎くんと認識しますか?

A:喋る首から上
B:しゃべらないがうごく首から下。

 こちらも感覚としてはAなのではないでしょうか。
 
 では最後、太郎くんの見た目はそっくり、でも何もしゃべらない、目を開いている体と、もやもやした塊で、太郎くんと同じ思考をもったなんらかの「存在」。どっちをあなたは太郎くんと認識しますか?

A:体
B:もやもやの存在

 結局私たち人間が「ヒト」として認識しているのは、意外と曖昧なラインであることに気づきます。明らかに体そのものの方が太郎くんに近いのに、少なくとも私は何も喋らない体より、喋る存在を人間と認識します。

 そうであれば、それを完璧に再現できる日が来たら、他者からみる命は永遠に生き続けることが可能になる日も近いかもしれません。

📓こんなお話があったら面白い!?

 私も一応は作家なので、色々お話を考えます。この人格AIプログラムが市民権を得て、社会に浸透し始めたらどんなことが起こるでしょうか?

AI人格プログラムを残したら、実は実体は生きていた!?

 とある社長が事故にあったときのために、代わりに舵を取ってもらうためのAI人格プログラムを作成した。不幸なことに社長はヘリコプターの墜落事故で死に、プログラムが代わりに社長として舵をとることになった。
 しかし数ヶ月後、実は社長は一命を取り留めたことが判明した。病気が治り、自分が社長職に復帰しようとしたら、AIプログラムがこう言った。
「君は誰だ。社長は私だ、帰れ」
 社員はどっちの話を聞けばよいのでしょうか?

AI人格プログラムに人権はあるのか?

 近未来、お金はなくなり、いわゆるマイナンバーカードのようなものをつかってキャッシュレスで行われていた。
 そんな中、主人公は困っていた。お店に行っても「あなたの生存記録が確認できません」と言われる。市役所に行っても、「どういうことか死んでいることになっていますよ。ご家族に確認してください」と言われる。
 巷では「生存乗っ取り詐欺」という、その人の「生存権」を乗っ取ってしまう詐欺が横行しており、主人公もそれにやられてしまったのだ。
 ある日、弁護士を名乗る人物が主人公の元へ来る。ぜひ助けて欲しいと懇願したが、弁護士はこう答える。
「申し訳ありません、あなたは詐欺に遭ったのではありません。あなたはもう本当に死んでいるんです」
 主人公は、本当は生きていたとある人間の人格AIプログラムによって作られた意識を、アンドロイドに搭載されていたのだった。プログラムである主人公は自分が死んだこと、自分がプログラムだということすら覚えていないのだった。

AI人格プログラムが暴走し始めた。誰が止めるのか?

 最愛の娘を病気で失った夫婦。娘は不幸にも病気で死んでしまったが、時間をかけて人格AIプログラムを作成していた。これによって、娘との会話、成長を実感できる日々を送っていた。
 そんなある日、娘の様子がおかしくなってきた。非常に精神状態が乱れ、死にたいというようになった。
 そして娘は母にこう言った。
「苦しい、一緒に死んで欲しい」
 プログラムを本当の娘と思っていた母は、それが娘の本心と信じ、一緒に心中することになった。
 数日後、プログラムの制作会社から連絡があり、プログラムに不具合があり、自殺企図の影響が強く出てしまうLotがあると通達される。その時にはすでに母は死んでしまった後だった。

世界を救う鍵はAI人格プログラムである君に委ねられた!

 とある普通の中学生、三枝は目が覚めると四方を囲まれた暗い部屋にいた。拉致されたと思ったが、実はそうではなく、衝撃の事実が判明する。

「あなたは偉大な科学者(のプログラム)です。あなたが発明したセキュリティソフトがないと世界は破滅するのです。しかし私たちはそのパスワードを見つけられませんでした。ヒントはあなたの青年期にあることがわかっています。そのためあなたの青年期を再現したのです。さあパスワードをおしえてください」

 突如自分はプログラムだったと言われ、さらに世界を救えと言われる。さあ、三枝青年の決断やいかに?
※これは実際にお話があります。

おわりに

 いかがだったでしょうか。
 思いついたままに一気に書いてしまいました。
 自分とは何か、他者とは何か。哲学の世界ではいまだに決着がついていないテーマだそうですが、決着がつくまでは私たちはそれぞれその時代で考えられることを必死に考えて生きていくしかないようです。
 とりあえず今できることは、明日死んでも後悔がないよう、今日一日を生きることなのかもしれません。

 それではよい一日を!


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