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LeicaM9と私 〜不完全さを愛せるカメラ〜

2019年が終わろうとしている。
いつも一年を振り返りながら何か文章を書かねばという使命感にかられるのだが、今年はあまりにも色々なことが起きすぎて、どうにもまとまる気がしない笑。

だから今年は、たった1つだけ。

私の人生を変えてくれた出会いを1つだけ、ここに綴ろうと思う。

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2019年 8月26日
私は、Leicaを買った。

Leicaとはカメラ界のトップブランドのひとつ。
レンズ一本、ボディひとつで車一台が買えることもあるといえば、そのブランド力が伝わるだろうか。

写真の道に足を踏み入れたものなら、必ず1度は聞く名前

それがLeicaだ。

そんなLeicaを、私は買った。


カメラ機材は決して安いものではない。
ましてやLeicaともなれば、カメラのことを詳しく知らない友人でも何となく聞いたことがあるのか、その値段に食いついてくることも多い。

ここで白状するが、
LeicaM9(2009年発売モデル)中古+50mm 単焦点レンズ

値段は 45万円。

10年も前のモデルに、これだけの値がつくカメラなのだ。

馬鹿だと笑うだろうか。
勿体ないと嘆くだろうか。

こんなに高価なのだから、さぞ高性能なのだろうと思うかもしれない。


だが、実は全くそんなことは無い。

画質は並

ピント合わせは全て手動

夜にもなるとファインダーからはほとんど何も見えなくなる

お世辞にも、性能が良いカメラとは言い難いシロモノなのだ。


「だったらなんで…?」

そんな声が聞こえてくる。

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私がこのカメラを手にしようと決めたきっかけは、夏にとある写真家の方と出会ったことだった。

大杉隼平さん

俳優の大杉漣さんの息子さんで、ロンドンで写真を学んだのち、日本全国、世界各国で活動している一流の写真家だ。

所属しているコミュニティの御縁で、大杉さんの撮影と講演会に同席させてもらう機会があり、持っていたLeicaを触らせてもらった時だった。

「このカメラは写真を撮ることしかできない。だからこそ奥深いんだ。」

大杉さんからそう言われ、全身に電流が走った。

写真を撮ること"しか"できない。

Leicaの本質が、その一言に込められていた。

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少し先に述べたとおり、Leicaのカメラは決して高性能と言えるものではない。
綺麗な動画が撮れるわけでも、モニターが稼働するわけでもない。

多機能さ、手軽さ、値段などを比較すれば、コストパフォーマンスの良いカメラは市場に山ほど売られている。

ただ、そんな合理的なところにこのカメラの価値はないのだ。

このカメラがもたらしてくれるのは、
写真と向き合う”時間”
そして
写真と向き合う”意味”だった。

写真を撮るというシンプルな行為と改めて向き合う重要性に
このカメラは気づかせてくれた。

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写真を撮ることしかできないからこそ、
自分が何に惹かれて写真を撮るのか、
自分が何のために写真を残すのか、
撮るたびに自分の心と対話しているような感覚になる。

これまで、人が喜ぶ姿を見たくて対話手段として使っていた写真が、
自分の思いを乗せる表現手段になるのだと、このカメラは教えてくれた。

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私は、時間が有限だと自覚した人が持つ「儚さ」が好きだ。
私は、自分の親しい仲間たちとの「戻れない瞬間」を残すのが好きだ。

私は、完全などないこの世界で、
少しでもそこに近づこうとする、人の不完全さが

たまらなく好きなのだ。

ありがとうLeica
2019年に私と出会ってくれて。

2020年、沢山の景色を共に見ていこう。

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バナー:Kanae Suzuki
Special Thanks:大竹ダイヤ








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