白髪にピンクのメッシュを入れて
私のやりたいことは、実にありふれている。
髪をピンク色に染めることだ。
私は生まれつき黒々とした髪で、中3のとき、クラスの女の子たちに「うちのクラスで一番髪が真っ黒なのはあなただね」と言われたほどだった。
一度イメチェンしてみたくて、茶髪にした。2年半前、21歳の誕生日のことだ。UNISON SQUARE GARDENというバンドの斎藤宏介の写真を見せ、こんなふうにしてくださいと頼んだ。
似合わなかった。ちっとも斎藤宏介に似ていなかった。のちに黒髪になってから、茶髪時代が見たいと言う後輩に写真を見せたところ、「……黒髪の方が似合いますね」と言われた。失礼だなおい。
それから一度染め直しをしたが、金がなくて染めるのをやめた。徐々に髪は黒に戻っていき、いまでは真っ黒だ。
友達に、会うたびに髪色の変わる女の子がいる。
スタジオミュージシャンでドラムを叩いている人だ。ボブヘア。黒髪に水色や黄色を入れたり、金髪ベースに青と紫のグラデーションのインナーカラーを入れたり、実に自由である。「熱帯魚みたい」と私は言ったが通じなかった。
一度茶髪にしてみたが、すぐに飽きて金・青・紫に戻したそうだ。
彼女を見ていると、いいなあ、と思う。私もやってみたい。黒髪にパステルピンクのインナーカラーを入れてみたい。似合うかわからないけど。
でも、できない。先月までは塾でバイトしていたので、茶髪以上の染髪は禁止だった。
いまはバイトはやめたが、就活継続中なので、染めるわけにはいかない。もしどこかに受かって社会人になれば、ますますピンク髪なんて許されないだろう。
もっと早くやっときゃよかった。大学1、2年のときとかに。こんな状況に陥るなんて思ってもみなかったのだ。
「夏頃に就活が終われば、卒業まで派手髪にしよう」なんて甘やかに思っていた頃が懐かしい。私はもう足かけ10ヶ月も就活をしているのだ。永遠に黒髪七三ポニーテール。泣きたい。
だから私は、いつか髪をピンク色にしてみたい。
もういっそ定年退職したあと、おばあさんになってからでも構わない。白髪にピンクなんて可愛いじゃないか。おしゃれな老人、いいじゃないか。
そんな夢を抱きながら、今日も履歴書に、黒髪七三分けの写真を貼る。
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