予測不能の時代に企業の進化を阻む4大ルーティンとは #予測不能の時代 まとめ1
本記事は、DX関連の個人的な学びのアウトプットです。
ある大手食品メーカーの経営企画の方から、今年の今の所の一番、と教えてもらった「予測不能の時代」を読み始めました。日立でずっとウェアラブルデバイスを用いたピープルアナリティクスをやられている矢野和男さんの著作。2020年7月についに、事業を分社化しハピネスプラネット社として「企業経営にハピネス・マネジメントを」届けることに取り組まれています。
本書のまとめ記事
<本記事>予測不能の時代に企業の進化を阻む4大ルーティンとは #予測不能の時代 まとめ1
・幸せな組織の4条件FINEとリーダーシップ理論とチームマネジメントの工夫 #予測不能の時代 まとめ2
・対話におけるうなずきって大切なんだなぁ #予測不能の時代 まとめ3
・幸せのスキルと新事業開発って似てるんだな #予測不能の時代 まとめ4
・心の資本を高める簡単習慣3good #予測不能の時代 まとめ5
・予測不能の時代のシナリオプランニング #予測不能の時代 まとめ6
・自由・格差・エントロピー #予測不能の時代 まとめ7
未来は予測不能
本書では、冒頭、ドラッカーを引用し、未来は予測不能であるのに、多くの企業はそれを前提とした経営がなされていないと警鐘を鳴らします。
われわれは未来について、二つのことしか知らない。一つは、未来は知りえない、二つは、未来は、今日存在するものとも今日予測するものともちがう
P. F. ドラッカー「創造する経営者」
多くの企業がハマっている4つの習慣
予測不能を前提にした経営の打ち手はあるはずだが、これまで組織に染み込んできた4つの習慣によって組織が硬直化してしまい、変化へ適応できないでいると言います。それが以下の4つの習慣です。
1. 計画に従ってPDCAをまわす
2. 仕事を標準化し、横展開する
3. 当事者が誤った判断を下すことを内部統制により防止する
4. 順従な人を安く雇い、設備に投資する
矢野和男「予測不能の時代」
例えば、標準化については、フレデリック・ウインスロー・テイラーの「科学的管理法」を発端として20世紀に50倍もの生産性の向上を実現したとしつつも、それが組織に変えづらいルールを作っていく引力となっていると言います。
21世紀、生産性向上が行き詰まった理由
ここで再びドラッカーを引用し、生産性とは「働く一人一人が生み出した付加価値のこと」だが、20世紀その向上は行き詰まったといいます。
20世紀の偉業は、製造業における肉体労働の生産性を50倍に上げたことである。続く21世紀に期待される偉業は、知識労働の生産性を、同じように大幅に引き上げることである
P. F. ドラッカー「明日を支配するもの」
生産性の行き詰まりの理由として、社会インフラ(水、電気、鉄道など)、家庭・職場のインフラ(ビル、家屋、エアコン、テレビ、電話など)、これらを生産する製造設備・材料といった、多くの人々や企業が共通的に必要とする製品・サービスを生み出す生産性を高めるのに科学的管理手法がフィットし、とことん高められたことをあげます。
しかし、その結果、先進国は豊かになり大量の経済的な中間層が生まれました。彼らは基本的な生活ニーズは満たされているので、個人・企業ごとに多様で、うつろいやすいニーズが生まれるようになりました。この多様で変化するニーズに対応することに、標準化による働き方では対応が難しくなった。これこそが生産性引き詰まりの理由だとしています。
変化や多様性に立ち向かうための4つの原則
では、変化と多様性の時代において「PDCA、標準化、内部統制、設備投資」に頼らずに組織を運営するにはどうすればよいのか?本書では、以下の4つの原則に従うことだとしています。
第1の原則 実験と学習を繰り返す
第2の原則 目的にこだわり、手段にはこだわらない
第3の原則 自己完結的な機動力を持たせる
第4の原則 「自律的で前向きな人」づくりに投資する
この4原則を実行に移すことは「楽ではない」、ゆえに常に前向きであることが求められる。そのためには「新たな幸せの姿」が必要だとし、それを第二章で述べるとして第一章「予測不能な変化に立ち向かう」をしめました。
世界標準の経営理論と予測不能の時代
本書の第一章を読んでいて「世界標準の経営理論/入山章栄」の第2部で解説されている組織の学習プロセスとルーティンの理論について思い出しました。組織学習のプロセスは以下のような循環プロセスになっているというものです。
「変化や多様性に立ち向かうための4つの原則」の第一原則「実験と学習」とはここでいうところの①サーチと②知の獲得のプロセスに当たると思います。
「多くの企業がハマっている4つの習慣」と記憶の理論
一方で「多くの企業がハマっている4つの習慣」は③記憶と関連性が高いと思います。組織が知を組織の中に保存するためには大きく以下の3つの方法があるとします。
脳内記憶:個々のメンバーに依存
モノ・ツールでの保存:書類、データ、プログラムなど
組織の標準化された手続き(ルーティン):独自の行動習慣や決まり事として組織に埋め込む
ルーティンの3つの効果と進化の仕方の3つの特徴
この3つ目のルーティンこそが多くの企業がはまっていることだと思います。ルーティンは「世界標準の経営理論/入山章栄」の中のいかように定義されています。
<ルーティンの定義>
組織(not個人)のメンバーが同じ行動を繰り返すことで共有する、暗黙知と形式知を土台にした行動プロセスのパターン
ルーティンは組織に「安定化」「記憶」「進化」という3つの効果をもたらします。
<ルーティンが組織にもたらす3つの効果>
安定化:業務・行動プロセスが平準化され、行動比較を可能とし、管理性が向上する
記憶:ノウハウなどの暗黙知を組織に埋め込める
進化:知の探索を行うための認知キャパシティの余裕が生み出せる
上記のような3つの効果が得られるルーティンですが、過度に固定化されたルーティンは硬直化し、かえって新たな知の探索を阻害するという宿命があります。そういった負の側面も含めて、「ルーティンの進化」には3つの特徴があります。
<ルーティンの進化の3つの特徴>
漸進的な進化:既存のルーティンの制限を受け新たな知の取り込みは徐々に進む
経路依存性:既存のルーティンの形成の方向性によって進化の方向性が制限を受ける
硬直化:行動の安定化が行き過ぎると組織の知の探索を怠る
ルーティンを進化させ続けるためのポイント
こういった特徴を考慮にいれて、ルーティンの硬直化を防ぎながらを常に進化させつづけていくためのポイントは以下だと、説明しています。
<ルーティンを進化させ続けるためのポイント>
ルーティンは硬直化する。①適切な頻度で(やりすぎNG) 、②ときにイレギュラーな行動パターンを織り交ぜ、③性急に結果を求めない、ことで進化し続けられるようにルーティンを形成する
多くの企業がハマっている「PDCA、標準化、内部統制、設備投資」という4つの習慣とはまさに、組織に保存され、硬直化し、新たな知の探索を阻害しているルーティンだと捉えられるでしょう。
「予測不能の時代」を、このルーティンを進化させ続けるためのポイントを意識しながら読み進めることで学びを深めることができそうだな、と思いました。
おわりに
DXについての記事は以下の「マガジン」にストックしてますので、併せて覗いてみてください。フォローや「スキ」を押してもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie