私はいちおう音楽家の端くれなので、本業は歌を書いて歌うこと。ただ、子どもの頃から本の虫で、小学校の作文に始まり書くことも好きで、自分のサイトに日記的なものを書いたり、ノーコンエッセイというページを作って気になったことを好き勝手に書いたり、スポーツ好きがご縁で知り合った方が当時やっていた有料メールマガジンで観戦記の連載をやらせていただき、それをまとめたものが本になったり(「スポーツに恋して〜感傷的ウォッチャーの雑食観戦記〜」花伝社 2015年上梓)、とにかくあっちゃこっちゃい
むき出しの肩とふわふわの羽飾り。華やかでタフでコケティッシュなレディ・ガガの、まさしく「キャバレー」ショウタイムから始まり、これから満ちようとする月のような不屈の荘厳さを湛えた、セリーヌ・ディオンの「愛の讃歌」で開幕を宣言したパリ・オリンピック。 街が舞台。何百年もあるがままの川が、建物が舞台装置。そこに散りばめられる人間たちは、過去も未来も理想も現実もごちゃまぜで、勇敢で負けず嫌いで、時に醜悪で不遜で、良識が眉をひそめようとも、つんと顎を上げて、濃い化粧とフレンチ・カ
「たぶん夏以降プレイすることはないだろう」 すでにカウントダウンは始まっていたから、今シーズンに入って伝えられたコメントを聞いて、驚く人はいなかったと思う。夏、イコール、パリオリンピックがおそらく最後の花道。そして直前のウィンブルドンが、地元である聖地でのラスト・ダンス。 2度の全英優勝を含む3つのグランドスラムタイトル。「ビッグ4」の一角を担い、オリンピックはロンドン、リオ連覇の金メダル。でも勝っても負けてもわあわあひいひいの気性難。17年にナイトの称号を授与され
久しぶりにラグビーの代表戦を見た。6月22日、対イングランド。去年の秋、時折ささやき声の混じる、いささか腑に落ちづらい道のりを経て、新しい年から再びジャパンのコンダクターに就任した、ミスター・ハードワーク(最近はあんまり怒らないらしい)、エディ・ジョーンズ初采配となるテストマッチ。おお、リーチがキャプテンに戻ってるけど知らない選手ばっかだ。普段こまめにチェックしない怠惰なファンゆえ、馴染みのない顔が並ぶスコッドに戸惑いつつ、でも、次のワールドカップに向けてまた新しいフェーズ
クレジットを見なくても、出だしの一行で、あ、と気づく。スポーツライティングの界隈で知る人ぞ知る名文家である藤島大さんの文章に出会ったのは、たぶんもう四半世紀近く前、100年が次の100年にバトンを渡す頃に愛読していたNumberの誌面だったと思う。ベテランから新しい人まで、さすがNumberだから上手に書く人はたくさんいたけれど、何を書いても言葉の匂いのする、既存のスポーツ記事とは一線を画す藤島さんの文章がとても好きで、いつも楽しみに読ませていただいていた。もともと、きちん
クレイコートシーズンが始まる4月。まずはモナコ。モンテカルロで空と海の青に映える赤土を堪能し、カジノをちょびっとだけ覗いたらスペインへ。クレイキングの名を冠したセンターコートを持つバルセロナからマドリードへと転戦。古い神殿とコロッセウムの趣漂うローマを経て、パリ、ローランギャロスへ。 全仏が終わると短いグラスコートシーズン。フェデラーが愛したハレオープンでドイツの田園を楽しみ、ナダルのふるさとマヨルカオープンにも立ち寄ってリゾート気分を味わい、クラブハウスがゴルフ場を思
年が明けて、冬本番に突入する日本。さぶいさぶいと呪文のように唱えながら、あちーあちーの大合唱響く真夏の南半球、テニスシーズン開幕を告げる1年最初のグランドスラム全豪オープンを眺めるのが我が家の恒例。今年は前半雨が続いたり、涼しい日も多かったようで。 女子は、アザレンカさんの健闘がうれしかったな。同郷で同じく国旗も国名も出ない国のサバレンカさん、パワーだけじゃない、技も磨いての優勝、お見事でした。準優勝は、もともとロシア人、いまはカザフスタン国籍の「笑わない」美少女リバキ
終わらせ方も、一流だった。 膝の故障、手術による長期離脱。23年復帰が伝えられる中、7月のウィンブルドンセンターコート100周年記念イベントに登場。来年はここでプレーしたい、と、にこやかにコメントした時は、ほんとうにそう思っていたと思う。 9月のレイバーカップ参戦表明は今年の2月。復帰に向け様子を見ながら試運転というようなプランだったのかもしれない。しかし開幕を翌週に控えた9月15日、同大会をもっての現役引退を発表。リリースにはこうある。”I also know m
※この文章は17年に書いたものです。先頃引退したフェデラーがナダルと最後にグランドスラム決勝で対決した全豪オープン。偶然ですが、こちらもどうやら引退のセレナ最後のグランドスラムタイトルとなった、8年ぶりの姉妹対決女子決勝もすこし書いてます。 〜〜〜 赤道を挟んで時差2時間。真夏のメルボルン・パークはシードダウンが相次ぎ、波乱、と言うより、混乱、と言った方が正しいようなてんやわんやぶりでびっくりの1週目。同じ頃、あちこち大雪の日本では、万年大関がまさかの(失礼!)優勝と横
※この文章は08年に書いたものです。先頃引退したフェデラー、最強ライバルだったナダル、ふたつの太陽が競い合った日の記録。 〜〜〜 もちろんベストは実際に足を運ぶことだが、母業嫁業歌手業やってるとそうも言ってられず、スポーツはせめて出来るだけ生放送で観ると決めている。 例えば私がプロ野球をほとんど観なくなったのは、子供が産まれて、夜7時がゴールデンタイムではなくなってしまったからだ(サッカーの代表戦とか、バレーボールとか、息子@5歳と一緒に観るけど、今何点!?あと何分
羽生結弦選手で思い出すのは、2020年暮れの全日本。SP首位で迎えたフリー、完璧だった新プログラム「天と地と」。文字通りストイックな戦国武将が乗り移ったかのような勇壮さあふれる表現。ジャンプもすべて成功。パンデミックにより世界中が沈んでいた時期。あの時はやっぱり私も気持ちが弱っていて、先が見えなくて、息をひそめるように過ごすしかない日々だったから、氷上をたったひとりで走り、これでもかと見ている側を鼓舞するようにジャンプを決める姿に、ただひたすら胸打たれながら、奮い立つような
主催者「ロシアとベラルーシの選手はダメ!」ATPとWTA「じゃあポイント無し!」選手「えー」という感じで始まった今年のウィンブルドン。 セレナの復帰に沸いた女子は、2月から負けなしシフィオンテクの快進撃がどこまで続くか注目されたが、3回戦で力尽き、抜け出したジャバーがアラブ系初のグランドスラム王手、と思いきや、最後はカザフスタンの「笑わない」美少女リバキナが逆転勝ち、という相変わらずの予想屋泣かせの展開。 ナンバーワンのメドベージェフ、それに続くルブレフ、ハチャノフ
元世界3位。将来を嘱望されながらキャリアの多くをケガとの戦いに費やし、つい先日何度目かの復帰が伝えられたデル・ポトロ。今年はあちこちで見られるかな、とうれしく思っていたら、復帰戦となる地元ブエノスアイレスでの大会前会見で、これで最後になるかも、と大会後の引退を示唆する発言があったというニュースを見てびっくり。日本ではたぶんほとんど話題にならないと思うけれど、海外のテニス関係を多くフォローしている私のツイッターのタイムラインは朝から嘆く声であふれかえっている。私も長いこと好き
贔屓のない、当世風に言えば推しのない単なる野球ファンにとって、今年の日本シリーズはかつてない多幸感に満ちたものとなった。エースがエースらしく投げ、主砲が主砲らしく打ち、最後は今季頂上決戦だけに許された延長での決着。一生のような一球。永遠のような一打。まさしく威風堂々。がっぷり四つの千秋楽横綱対決。野球好きでよかったなあと試合のたびに思い、まさかの引き分けが続いて第10戦くらいまでやるってどうよ!? と半分本気で思ったりしていた。長いことプロ野球を眺めてきたけれど、終わってこ
3試合終わって勝ち点3。あと7試合あるとは言えいきなり崖っぷち感漂う展開になってしまった、サッカー日本代表のワールドカップ最終予選。先日のホームに戻ってのオーストラリア戦、薄氷気味ではあったもののちょっと劇的に勝ち切ってひとまずめでたし。試合後、ホッとした顔っていうのはこういう顔ですよという顔でインタビューに答えていた森保監督。「試合前の君が代も今日で終わりかも、、、」と思えば歌いながらそりゃ感極まるよね(笑)。代表監督になった時から覚悟はしていたと思うけれど、とりあえず首
サッカーW杯アジア最終予選第三節。日本代表、痛い黒星。でもやっと面白くなってきたんじゃないかな。ほんとうに欲しいものがあるのかないのか、ギリギリのとこで考えるのは全然悪いことじゃない。ぶっちゃけ、長い目で見たら、逃して雌伏、という時期があることも自然、と思うのは、私がスポーツファンだけどサッカーファンではないからだろうか。 もうちょっとめちゃくちゃな選手がいると、見てる方は楽しいんんだけどね。こういう状況で、「うるせえ、ばか」って言える度胸のあるやつ。あるいは、照ノ富士