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眠れないあなたのための|出版社逆転対策プラン


あなたは何者でしょうか。


こう書いてみると、いかにも深遠な問いを投げかけた気がしてきます。とはいえ、なにも哲学の真似事をはじめようというつもりはありません。ちょっと気取ってみたかっただけです。

要するに「このnoteって、誰が読むのよ?」これが知りたいわけなんです。

もちろんお返事をいただけるはずもないので、勝手に想像するほかありません。

大所帯のサークルで副代表を務めたかと思えば、アルバイト先やインターンの課題を快刀乱麻。1年間のアメリカ留学では語学力に磨きをかけ、もちろんストレートで大学を卒業する。

……眩しい。眩しくて直視できません。あなたにこんな経験があるなら、たいへん結構。迷うことなくESを仕上げ、自信をもって面接に臨んでください。こんな雑文をここまで読んでいただいたのが申し訳ない。ぜひほかの記事へ。

わたしの想定するあなたには、他人より優れている自信がまるでない。明晰な頭脳も卓抜した経験も、満足な学生生活を送ったという自負もない。それでも「出版社で働きたい」という酔狂と、「もしかすると受かるんじゃないか」という不遜と、このふたつだけは持ち合わせている。

要は、1年前のわたしですね。胃薬を飲んでもろくに寝つけず、仕方がないのでネットを徘徊する。午前3時過ぎ。もう何度検索したかわからない「出版社 入り方」「出版社 ES」「出版社 面接」を打ち込んでは、まだ知らない情報を探している。

そんな眠れないあなたに。
そんな眠れないあなたが、少しでも安心して眠れるために。
長くなる気がします。途中で寝落ちてくださるなら、それはそれで本望です。

……あ、第2部はお手軽Q&Aになる予定です。「べつにぜんぜん眠れてるんだけど。というか、いま昼だし」という方は、ぜひそちらだけでも。



1. そういうあなたは何者なんです?

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ごもっとも。面接でもなんでも、はじめの自己紹介は必須でしたね。では、あらためて。

はじめまして、今年の春から光文社で働くことになりました、さぬきという者です。神保町界隈の、とりわけ「東京堂書店」と「丸香」のあたりに出没します。ESから最終面接まで、一貫して古典新訳文庫と新書を志望していました。

ここではとりあえず、わたしがどういう学生で、自分をどのように捉えようとしたのか、そのあたりのことを書けるとよいなと思っています。

では、はじめに。そもそもわたしはどういう学生だったのか? さきほど特定の学生像をして「眩しい」とか「直視できない」とか書いたわけですが、かく言うわたしも高い倍率をくぐり抜けて内定をいただいたわけです。1年前のわたしが見たら、「安い自己卑下なら他所で」と思いそうです。

そんなわたしの属性を簡単にまとめると、以下のようになるでしょうか。

都内私立大学の文学部生。サークルには所属せず、バイトにも身を入れず、残念ながら留学もしていない。おまけにまわりからは2年遅れ。

「……おいおい、よく受かったなこの人」と思ったそこのあなた。わたしもそう思います。先に働きはじめた高校の友人には、もう後輩ができたそうです。あらためて書いてみると、自分でもどうしようもない気がしてきます。ESはどうやって埋めたんだっけ?

そう、ESです。予想できると思いますが、エントリーシートを埋めるのには苦労しました。もちろん「あんな経験も、こんな経験もした。もうどれを書いていいかわからない」という贅沢な悩みからではなく、「いや、書けそうなことがないんだが?」という難儀な迷いゆえです。

上のことをそのまま書いても、間違いなく採用してくれる会社はありません。祈られに祈られつづけ、自分を信仰の対象かなにかと勘違いするのがオチです。

とはいえそんなわたしにも、いくつか書けそうなことがありました。なんとか捻出した、とするほうが正しいかもしれません。ぱっと思いつくのは3つでしょうか。

① 好奇心のかたまり(のように見える経歴)

「まわりからは2年遅れ」と書きました。が、なにも留年を重ねたというわけではないんです(1年は浪人しているのですが)。

わたしは入学当初、経済学部に所属していました。こまかい経緯は省くのですが、そこから学内制度を利用して文学部に移ったんですね。経済学部に2年、文学部に3年所属して大学を出たというわけです。

おまけに高校時代はいわゆる「理系」でして、たぶん人より多くの分野に首を突っ込んできたと思います。人並みはずれて知的好奇心が強いかと問われると自信はないのですが、少なくともそう映る経歴になっています。……なっていますよね? というわけで、これを利用しない手はないな、と。

なかなか珍しい学歴をこれ幸いと、俗に言う「ガクチカ」では、おもに学業のことを書いていましたね。「大学院で研究していたわけでもない学部生のガクチカが学業ってどうなの?」と思わなくもなかったのですが、結果から言えば問題ありませんでした。ES、通りますよ

② 好奇心のかたまり(のように見える趣味)

「神保町界隈の、とりわけ『東京堂書店』と『丸香』のあたりに出没します」との自己紹介、おぼえていますか? 書店はいいとして、「丸香」ってなんぞや、と思いませんでしたか? 思わなかったあなたとは、どこかですれちがったことがあるかもしれません。

この「丸香」、じつは讃岐うどんのお店なんですね。それはそれは美味しいうどんをいただけるので、面接などで神保町を訪れる際にはぜひ。「かけ」が美味しい時季だと思います。それはさておき、うどんと就活になんの関係があるわけ? というあなたの疑問はもっともです。

結論を言ってしまうなら、「丸香」で讃岐うどんの美味しさに打たれたわたしには、うどんを食べるためだけに香川県へ飛んだ経験があります。観光地には目もくれず、2日で12軒のうどん屋を巡った話をしようものなら、たいていの場合には奇異の目を向けられることでしょう。

ただし、出版就活で出会う面接官は別です。いや、奇異の目を向けられることに違いはないのですが、とても楽しそうに耳を傾けてくれもします。あなたにも、なんとなく想像できるのではないでしょうか。わたしが香川に行ったのも、そのへんの下心がなかったと言えば、まあ嘘になります。

ほかにも、星空を見るために長野県の野辺山という場所を訪れてみたり、静岡県の陶芸工房に伺ってみたり。ちょっとした思いつきで旅行できる場所は、あなたの周りにも無数にあるはずです。多少の予算と時間さえあれば、間違いなく実現できるでしょう。

こんな経験をもとに、ESの「趣味」の欄には「思いつき旅行」とか書いていた気がします。ネタになることが少ないなら、いまからでも作ればいいんです。国内線は、あすも飛んでいるはずですから。

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▲ 香川県坂出市「山下うどん」の「ぶっかけ」。店内の特等席に、村上春樹さんと安西水丸さんのサイン色紙が飾られています。詳しくは『辺境・近境』(新潮文庫)を。ちなみに善通寺市にもまた別の「山下うどん」があるのですが、そちらのうどんも絶品です。

③ 好奇心のかたまり(のように見える嗜好)

「ESから最終面接まで、一貫して古典新訳文庫と新書を志望していました」。前者が第一志望で、後者が第二志望です。光文社というと、ファッション誌と新書を志す人が多い印象があるのですが、あなたはどうでしょうか。

もうすこし広く見てみましょう。世の編集志望学生というのは、文芸・コミック・雑誌への配属を希望する人がほとんどではないでしょうか。もちろん海外文学も広義の「文芸」なのでしょうが、文芸誌や国内フィクションを志す人が大半だと思います。そんななかで、なんで海外文学を志望したのか。差別化は図れるにせよ、やはりマイナーである感は否めません。

ひと言でいってしまえば、やっぱり「おもしろい」からなんですよね。言葉も時代も文化も違う土地で生まれたおはなし。「いま・ここ」から離れ、そしてまた戻ってくるための物語。翻訳された文学は、本というメディアの可能性を、本当にまっすぐ体現している気がします。

……みたいなことは、面接でもけっこう口にしていました。なにせ読者が多くないジャンルです。もしもあなたがコミックやファッション誌を志望していて、にもかかわらず「海外文学も読みます!」的なことを言おうものなら、その幅の広さは面接官の印象に残るかもしれません。おすすめですよ、海外文学

とはいえ、やはり志望先との相性を忘れてはいけません。わたしは面接を受ける先々で、「最近はチェコの作家に注目していて……」とか、「詩人として有名なノーベル賞作家なのですが、ぼくとしては散文作品のほうがアツくて……」とか熱心に語っていました。某大手出版社にて。わたしの話を真剣に聴いてくださったお偉方の一人から言われた「でもウチ、海外文学そんなに熱心じゃないよ?」のひと言。

……返す言葉もございません。やりたいことが明確にあるというのは、裏を返せば融通が利きにくいということでもあると実感した瞬間でした。いや、わたしが頑固なだけかもしれませんが。

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▲ 就活中に読んでとりわけ印象深かった一冊。人生のオールタイムベスト候補です。いつか古典新訳文庫にも……と夢想しています。

こうしてみると、①から③まで全部同じでしたね。3つあります! とか大見得切ったのが恥ずかしいです。

とはいえ、もちろんこれも意図的にやっています。ESでも面接でも、あなたは自分がどのような人間であるのか、一本の筋が通るように提示することを求められるはずです。人間は当然、多面的な存在です。ただ話しているだけでも、あなたのさまざまな側面が滲み出ると思います。それにまかせていると、「結局あなたはどういう人なの?」という疑問を持たれかねません。

わたしは①から③を通じて、自分を「好奇心のかたまり」として印象づけようと試みました。もちろん別の見方も可能です。① 優柔不断② 計画性がない③ 偏狭。とはいえ、わざわざ自分をこのように捉える必要もないでしょう。せっかくなら、それぞれ正の側面に着目して、共通項に軸を通したいものです。とくにESでは。

これがどこまで成功しているかはわかりません。そもそも就活中には、ここまで明確な方向性を打ち出すことは適いませんでしたから。

「何を提示し、何を削るか」「あるものをどのようなものとして見せるか」

いまになって思えば、これは出版社で働く人たちが、つねに実践していることなのかもしれません。これができている人というのは、強いと思います。あなたも脳の片隅にでも留めておくと、どこかで役立つこともあるかもしれませんよ。

自分をどのような人間として提示するか。これにしっかり意識が及んだESを書ければ、あとは自然体で面接に臨めばよいのではないでしょうか。ESどおりに話がすすめば「芯が通ってる」、ESから逸れたところで「ギャップがあっておもしろい」。運に左右されるという側面は、もちろん否定できません。それでも、運に左右されるところまでは持っていけると思います。

どうですか? すこしは安心して眠れそうですか?

▲ わたしの人生を大いに狂わせたブログをふたつ。高校生のときに出会わなければ、たぶんまったく別の人生になっていたと思います。いつまでも読んでいられるので、眠れない夜には向いているかと。


2. きっと何者にもなれないわたしたちのための

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長い。長すぎる。

ほかの二人の記事なら、もう終わっていてもよい頃です。さきほど「何を提示し、何を削るか」と書いた人間が、こうも冗長な記事を書いている。実践できていないじゃん……。

わたしは面接のときも「しゃべりすぎずに、簡潔に」を心がけていました。ずっとこれが奏功したと思っていたのですが、採用からお世話になりっぱなしの人事の方に尋ねたところ、

「けっこうしゃべってたよ~」

とのこと……。だからESも面接も、意外と散らかっていてよいのかもしれません。こればっかりはわからないですね。まあ、だからといってこの記事が長いことの言い訳にはならないのですが。すみません。そろそろ眠くなってきましたか?

最初からここに飛んできたあなたは、べつに眠れないわけじゃないのでしょう。「こっちは使えそうな情報がほしいだけなんだから、さっさと本題に入ってよ」との声が聞こえるようです。ごもっとも。

というわけで、ここからはもうすこし簡潔にいこうと思います。就活、とりわけ出版就活について生じるあれこれの疑問に、一問一答形式で答えていくつもりです。それでは。

Q. どのような業界を受けていた?

A. 意図せずして出版社専願に

7つの出版社にESを提出しました。エントリーするか否かの基準は、自分がアツく語れるレーベルがあるかどうか。これから外れるようであれば、業界最大手でも受けることはしませんでした。いま思えば、とりあえずESくらいは出すべきだったかもしれません。

とはいえこのおかげで、ES作成には多くの時間を費やせました(それでも1社はES落ちしています)。結果は6社で2次面接まで進み、そのうち3社では最終面接に辿りつき、そして2社から内定。結果だけ見れば上々ですが、いまのわたしならもうすこし多めに受けると思います。胃とメンタルが保てませんから。

いや、そのほかの業界でも2社にエントリーしたのですが、どちらもまさかの書類落ち。意図せずして出版社専願に。これが面接のネタになったからよいものの、当時はかなり思いつめましたね。こちらのESも張り切っていたのですが……。なにがいけなかったのか、いまだにわかりません。

Q. ESを記入する際に気をつけていたことは?

A. とにかく推敲

あたりまえの回答になって申し訳ありません。推敲、推敲、とにかく推敲です。一気呵成に書き上げ、それが問題なく通るという方もいらっしゃるのでしょう。が、わたしにはとても真似できないです。

ESが公開されると同時に目を通し、まずは質問事項だけ頭に入れておきます。それからたとえば、お風呂の時間、移動時間、そして横になってから眠るまでの時間に、「こんなことを書こうかなあ」ということを考えつづけていました。

あらかじめ見通しが立っているほうが、間違いなく要を得た読みやすい文章になります。それで実際に下書きをつくってから、削ったり足したり、あるいは最初からやり直したり、とにかく推敲を重ねる必要があると思います。少なくとも、わたしはそうしていました。

一にも二にも、心がけるべきは読みやすい文章です。よく言われる「最初に結論を」という原則。これも、要はそのほうが読みやすいからにほかならないと思います(ちなみにこの原則、わたしはあまり実践できていませんでした)。

読み手の印象に残るかは内容が決め手ですが、読みやすいかどうかは形式がものを言います。内容は人それぞれでしょうが、形式の工夫はあなたとも共有できるはずです。

「形式」というと抽象的ですが、つまりは文章の書き方です。ひとつの文は長すぎないか。この読点はほんとうに必要なのか。漢字とひらがなのバランスはこれでいいのか。「です」「ます」にするのか「だ」「である」にするのか。主語は明示するのか。「私」なのか「わたし」なのか。こういうところには、どんなに注意してもしすぎるということはないでしょう。

どうしても一文が長くなるようだったら、直後の文は短くして緩急をつける。とか。「漢字と平仮名」よりは「漢字とひらがな」だよな。とか。こういう細部への気配りが、全体の読みやすさにつながるのだと思います。

書き上げたら、とにかく読み直しです。音読しないまでも、つっかえずに読めるかどうかの確認は必須だと思います。ついでに、誤字・脱字のチェックにもなりますし。わたしは「業界」をすべて「業会」と書いたまま提出したESがあるのですが、やっぱりこれは避けたいです。面接官がESに視線を落とすたびに、「気づかないでくれ……」と祈ることになります。当然、面接にも集中できません。多少の誤字なら、問題にならないみたいですけど。たしかに「業会」ESも通ったわけなので。

気になるかもしれないことを。「ESは誰かに見せたか?」わたしは見せませんでした。人生の煮こごりを見られるのは恥ずかしい。そしてなにより、他人の手が入ったESで落ちたら、きっとやりきれないだろうな。そんな思いゆえです。 とはいえこれは、完全に人それぞれですよね。ひとりよがりになるくらいなら、誰かの意見を仰ぐほうがよいと思います。

先方がわざわざ締切りを設定してくれているわけですから、それまでの期間は目いっぱいつかいましょう。わたしはほぼすべて締切り前日から締切り1時間前くらいの提出になったおぼえがありますが、おそらく問題なかったはずです。コピーはちゃんと、取っておきましょうね。

Q. 筆記試験の対策は何をしていた?

A. 一定時間で、一定量の文章を書く練習

わたしの筆記対策は、これに尽きる気がします。Webテストも一般常識問題も、対策にはそれほど時間を割きませんでした。予定稿も準備せず、「なんとなく使えるかな」という書き出しをいくつか考えておいただけです。用意したものが使えなくて焦るくらいなら、その場で考えるほうがよいかな、と。

具体的には何をしていたか? 寝る前に、その日の振り返りのようなものを書いていました。

読んだ本の感想、気になったニュースへの所感。これはそのまま、ESや面接の対策にもなっていた気がします。それに、一見すると些細だけれども、よくよく思い返せばちょっとおかしい出来事。これを詳述してみることが、すこし変わった視点をもつ訓練になると思います。なにより、あとで読み返してその情景が鮮明に浮かんでくるのは、就活とか関係なしに楽しいですよ。

毎晩パソコンに向かって、その日ごとの雑記を打ち込んでいました。あまり長く書いても睡眠時間を削られるので、30分程度と時間を決めて。わたしは平均して2000字くらい書いていました。というか、いまでも書いてます。

就活が本格化する時点で、ちょうど1年ほどつづけていました。長い文章を書くことへの抵抗は、たぶん消えると思います。毎日30分割くだけの価値があるかは、その人次第なのですが。もしかすると、一冊でも多く本を読むほうが、よほど有効だったかもしれません。これも、わからないですね。

Q. ほかに何か対策していなかった?

A. 対策というか、気になったことはふだんから調べる

これは対策というか、習性というか。対策になったか微妙なところなので、読み飛ばしてしまって大丈夫です。

あなたはiPhoneのsafariで開けるタブの上限枚数を知っていますか? 「500枚」と即答されたあなたには、なんだか親しみをおぼえてしまいますね。(Androidユーザーの方、先の見えない話ですみません。)

そう500枚です。これを上限に、新しいタブは開けなくなります。そしてわたしのsafariでは、常時だいたい500枚近いタブが開かれています。見聞きしたもので知らなかったこと、おもしろいと思ったこと。これらをその場で、とりあえずメモするつもりでsafariに打ち込みます。

そしてすこし余裕のあるときに、あらためてWikipediaや種々のサイトを読んでみるようにしています。たまに昔のタブをさかのぼってみると、「ああ、こんなこと調べたなあ」というものから「調べたことすら記憶にないのだが」というものまで、けっこうな数の事項を目にすることになります。

これがそのまま筆記試験や面接で生きるかというと、ちょっと覚束ないです。とはいえ、個人的には悪くない習慣だと思っているので、試してみるのもいいかもしれません。さすがに500枚まで溜まったタブは、好奇心の賜物というよりは無精の産物という気がしますが。

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▲ このあたりは、テレビやTwitterで気になったものだった気が……。ずっと「人混み」だと思っていたのですが、NHKでは「人込み」表記なんですよね。言うまでもないですが、Twitterの類はマストだと思います。

あとは人並みですが、国会図書館に足を運ぶ、とかですかね。とくにファッション誌に馴染みがないのを「まずい」と思ったわたしは、光文社の選考が進んだ時点で、もろもろのバックナンバーにざっと目を通しました。さすがに企画を立てるまでには至りませんでしたが、印象に残った特集くらいは言えるようにしておきました。

Q. 面接の対策は何をしていた?

A. 対策ノートを1冊用意

これも基本中の基本だと思うので、あらためて書くまでもないかもしれません。読んだ本の感想流行りものの分析、志望先での企画案、実際に訊かれた質問と自分の回答、それから「こうやって答えるべきだったな」という理想の回答まで。ちょっと厚めのノートに、ぜんぶ書き込んでいきました。

さきにも書きましたが、面接は本当に自然体で臨んでしまってよいと思います。わたしはこの「自然体」の意味がいまひとつ掴めず、実際に面接を受けるまでは悶々としていました。結果が出たので振り返れば、「失礼のない範囲で、ふだんの自分で、普段使いの言葉で」と言える気がします。「自然体で臨もう」という意識も、すでにひとつの作為なんですけどね。

出版社の面接で出会うみなさんは、本当に人の話を熱心に聴いてくれます。なぜか異常なまでにこちらの話に興味をもってくれている年上の方々と、ちょっと偏った世間話をするくらいのつもりで臨めると最高だと思います。まあこれは理想であって、1年前のわたしだったら「それができりゃあ、苦労しないわ」とため息を漏らしそうですが。

わたしは普段の一人称が「ぼく」なので、面接でも「ぼく」を使っていました。予想できるでしょうが、面接ではとてつもなく緊張します。とくにオンライン面接で入室して、相手が現れるまでの微妙な待ち時間とか、それはもうほんとに。

ただでさえ緊張するのに、慣れない「わたし」「わたくし」なんて口にしようものなら、身も心も強張るのが想像できました。そういうわけで、とくに若手社員の方々と面接する際には、けっこうフランクに「ぼく」のままで話をしていましたね。役員面接ともなると、場の空気にのまれて「わたしは……」とか言っていたおぼえがありますが。「ぼく」のままでも問題なかった気もしています。

オンライン面接という単語が出たので、これも少しだけ。基本的な振る舞いは、リアルでの面接に臨むつもりでよいと思います。ただ、面接のコンディションには気を遣うほうが無難でしょう。こちらの顔ははっきり見えているか。自分の声はくっきり届いているのか。通信環境は整っているのか。ご友人と、一度オンラインで確かめ合うとよいかもしれません。

Q. ぶっちゃけ、なんで内定したと思う?

A. わかりません、けど……

これはもう、本当にわかりません。はぐらかしているわけではなく、誠実に答えようとするからこそ「わかりません」になってしまいます。

けど、さすがにこれでは申し訳ありません。なので、ちょっと考えてみることにします。

たぶん、いちばん大きなポイントだったのは、へんに繕っていなかった点だと思います。訊かれたことに、その場で答える。その場で考えて、その場で答える。もちろん、志望動機や志望部署、おもしろかった本などについては、しっかり語れるだけの準備をしてから臨みましたよ、さすがに。

とはいえ面接には、予想すらできない角度からの質問がつきものです。それにそつなく、用意してあった想定質問の回答を援用しながら答えるのではなく、ちょっと情けないくらいに頭を悩ませたのがよかった気がします。

ずらりと並んだ面接官にもかまうことなく、「う~ん……」とか「ええ……」とか、なんとか自分なりの答えを返そうと努めていました。考えてみてほしいのですが、あなたの身のまわりに、ふだんから「理想の面接」みたいに話す方っていらっしゃいますか? つねにすらすらと、流れるように言葉が出てくる。そんな方が。

……たぶんいませんよね。人間ふつうに話していれば、つっかえることもあるでしょう。ときには答えられずに詰まるかもしれません。でも、それでいいのだと思います。面接官も、答えにくいだろうとわかったうえで質問しているはずです。それにすらすら答えられるほうが、よっぽど不自然です。

少なくとも出版社の面接で求められるのは、ごく自然な会話なのだと思います。答えづらければ頭を悩ませ、楽しければ笑う。困ったら天を仰いでもよいでしょう。わたしはきっと、最初から最後までそれができていたのだと思います。もちろん光文社の面接には、それが許されるような雰囲気がありました。受けてみればわかると思います。ひと口に面接といっても、出版社ごとにけっこう違います。感じ方は人それぞれなのでしょう。ただ、あなたが受ける出版社のなかで、もっとも面接にリソースを割いているのは、たぶん光文社だと思いますよ(ほんとに)。

なんて、いい感じのことを書いてみましたが、やっぱり内定した理由はわからないというのが正直なところです。100人の内定者がいたら、100通りの理由で受かっている。それが、出版社の採用なんじゃないでしょうか。

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「第2部はお手軽Q&A」とか「簡潔に」とか書いておきながら、結局けっこうな長さになってしまいました。最初から通読したあなたも、第2部から目を通したあなたも、あるいはなぜかここだけ読んでいるあなたも。お忙しいところ、本当にありがとうございました。少しはお役に立てたでしょうか。

そもそもこの記事は、不安で眠れない、1年前のわたしのようなあなたに向けて書きはじめたものでした。こんな記事を読んだくらいで、あなたの憂いが解消されるだなんて思っていません。それでも、これから日が昇って、少しでも前向きに就活の対策に臨めるのであれば、わたしのささやかな目的は達成されています。


それでは、またどこかで。

(さぬき)


3. 結局この人、何者だったの?

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またもや、同期のnoteを読んでひぃぃぃと悲鳴を上げているたまひなです。
ちょっと、これは有料noteの完成度ですよね。わぁ、、、うまい人の文章はあっという間に1万字読めてしまうということがわかりました!!

なぜさぬきさんが、内定をもらえたのだろうか。

私は2点あると思います。まずは、この文章力です。私が面接官だとしたらさぬきさんの書く文章をもっと読んでいたいので、採用しちゃいます笑。

2点目は、さぬきさんの自然体な感じです。私はグールプディスカッションが同じグループだったので、そのときのさぬきさんを覚えていますが、とても自然体で物腰が柔らかそうな印象がありました。

自然体でいることによって、この人が実際にここで働くとこんな感じなんだろうなと面接官に思ってもらえるのかもしれません。

さぬきさんは豊富な語彙を通して世界をつぶさに観ているのか、物事を捉える鋭い洞察力もあると思っています。これから、同期で何かを創作していく機会もありますが、とても心強いです!!

(たまひな)


さぬきさんが私を「行動力おばけ」というのなら、
さぬきさんは「知識量おばけ」です。

興味の幅がとっても広い。
私が今まで会ったOBの方々も、知識量と人当たりのよさがすごかった、、。

さぬきさんは、現役で編集者をされている方と似ていて、
それプラス「うどん好き」という語れる趣味がある。
「ああ、こういう方が出版社に入るんだなあ」
と納得しました。

もし、この記事を読んでいるあなたに「幅広い好奇心がある」ならば、食わず嫌いをせずにその知識量を広げるのが#逆転対策プランのひとつになるのではと思います。

そして、“自分がどのような人間であるのか、一本の筋が通るように”

これは当時私も意識していました。就活において、大切なところです。

記事を通して、さぬきさんが何を考え、どんな就活をしていたのか
それを見つけるだけでも、あなたの就活を助けてくれるはずです!

(ネガ子さん)

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