【ミカタをつくる広報の力学】 #30 PRにおける「目的」を考える
今回は、PRにおいて最も大切なのに忘れがちな、「目的」について書きたいと思います。
これ、実はPRだけではありません。ビジネスすべてにおいて大切なのに忘れがちです(笑)
プレスリリース、オウンドメディア、CSRの目的設定について書いていきます。
※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。
なぜ「目的」を忘れてしまうのか
なぜ「目的」を忘れがちなのか?
その答えは、「捉えにくい」からではないかと思います。
「捉えにくい」というのは、「目に見えない」「実体が無い」「今ここに無い」「触れない」など様々に表現できますが、要は「具体性に乏しく漠然としている」という意味です。
「目的」は、5W1Hの中でいうと「Why」になります。
「What」は具体的にモノやコトを示します。「How」も具体的な方法です。「When」「Where」「Who」も、「いつ」「どこで」「誰が」という具体的な対象を持っています。
ところが「Why」だけが、指差しで示せるような具体的な対象を持っていません。しかも大抵の場合、未来にある。これはとても捉えにくい。
関わる人たちが少しずつ違う未来を描いていたりすると、これはもう完全に見失います。
そんなことにならないように、見失わない方法を書いていきます。
プレスリリースには「Why」を記載
プレスリリースのタイトル周りには、ぜひ「目的」を書いてほしいのです。
「#09 プレスリリースに大事なこと」でも書きましたが、「Why」が報道理由をつくるからです。
「○○○キャンペーンを開催」や「新製品△△△を発売」といった事実はもちろん大切なのですが、記者や読者は、「何のために開催するのか」とか「どんな効果がある新製品なのか」ということを知りたいのです。
利便性やデザイン性の向上など、リリースに製品の開発目的が記載されていれば、ユーザーが読む価値があると判断できますので、製品ターゲットを対象としたメディアが取り上げやすくなります。
一方、「環境に配慮した新製品」とか「チャリティキャンペーン」となると、全国紙が取り上げる可能性が出てきます。
例えば「紙製ストローの使用を開始」をPRするなら、そのまま書くのではなく、「プラスチック削減のため紙製ストローに変更」という感じで目的を書いた方が、より分かりやすくなります。
オウンドメディアごとに目的設定
プレスリリースの場合は、配信するタイミングで目的について考えることが出来ますが、SNSやメールマガジン、ホームページ、社内報などといった、定期配信されるオウンドメディアになると、いつの間にか目的を忘れてしまうなんてことも、結構ありがちです。
そもそもオウンドメディアの活用は、ステークホルダーとの関係維持を目的していますが、ステークホルダーといっても、社員、社員の家族、株主、顧客、協力会社、地元住民など、様々です。
つまり「オウンドメディアの目的」は、ターゲットごとに設定しなくてはいけないということ。
株主には株主通信、社員には社内報、顧客にはメールマガジンというように、大抵の場合、ステークホルダーのカテゴリーごとにメディアが分かれているかと思います。
なので、株主通信では収益性、社内報では情報の共有、メルマガではファンづくりなど、メディアごとに長期的な目的を設定する必要があります。
それでも日々の更新をしているうちに忘れてしまう、ということにならないように、それぞれのメディアごとに、最初に年間計画の立案をお勧めします。
年間計画の立案については、「#23 年間広報計画をつくろう」をご参照ください。
CSRでは企業哲学を表現
最後にCSRの目的です。
ソーシャルレスポンシビリティ(社会的責任)なので、社会に貢献できることなら何でも良いのですが、本業に関連しなくても良い活動だからこそ、企業哲学を存分に発揮できると思います。
メセナ活動として美術への投資やスポーツイベントへの協賛などをしている企業がありますが、そこには例えば「人生を豊かに」や「人間の美しさ」など、本業に通じる哲学があったりします。
もちろんシンプルに「社長の趣味」という場合もありますが(笑)
私のいた会社は児童向けの商品が多かったので、CSRとして小学校向けの出張授業や工場見学を実施していました。
一方で機能的な製品を開発している企業などは、情緒的なイメージを発信しにくいのではないでしょうか。
そういうときには、製品に込めた哲学をCSRで発揮すると、機能的な製品の背景にある思いを表現できると思います。
そう考えると、CSRの目的は正にプレゼンスの向上。ブランディングの最たるものであるといえます。
マーケティングでは提供できない企業の価値や哲学を伝えられる、大切な活動なのではないでしょうか。
おわりに
今回のコラムは「目的について考える」という、概念的で少しハードな内容でした。目的論だけで1本書くなんて、少々無謀な挑戦でしたね(笑)
目的は何においても大切な要素なので、今後もテーマごとに触れていきますね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。
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