くすりの神農・ヤマダノブヒロ

神奈川県伊勢原市で漢方薬販売店を経営しています。神職資格(明階)、登録販売者資格保有。

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神奈川県伊勢原市で漢方薬販売店を経営しています。神職資格(明階)、登録販売者資格保有。

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【漢方】 健康とは

 先代店主は、一貫堂医学の名医の指導を受け、漢方の基礎を学びました。その時の講義録から引用します。(当noteが先生のご迷惑にならないよう、お名前は伏せさせて頂きます。また以降はお師匠と記述します。)  一貫堂医学の創始者森道伯先生は、仏教思想を深く学ばれていました。その視点は弟子たちにも受け継がれていたので、お師匠は「空(くう)」という仏教概念を用いられたと推測します。ただ、難しい仏教哲学を知らなくとも、お師匠の定義は経験的に理解できると思います。  不健康になるほど患部

    • 【漢方薬紹介】 太乙膏

       今回はメルスモン薬株式会社及び、小太郎漢方製薬株式会社から販売されている太乙膏(たいつこう)のご紹介です。暑さの盛りを過ぎ、過ごしやすい気配が感じられる地域もあると思います。これは虫たちも一緒です。特に蚊はやや涼しい方が活動が活発になります。また、蜂たちも晩秋まで活動します。まだまだ虫刺されには気をつけないといけません。今回ご紹介する太乙膏は虫刺されにも使える軟膏です。 皮膚トラブルには太乙膏  太乙膏の特徴は、さまざまな皮膚トラブルに対応できることです。虫刺されの他に

      • 【漢方薬紹介】 二日酔いと熱中症に五苓黄解

         今回はJPS製薬株式会社の五苓黄解(ごれいおうげ)のご紹介です。今夏は対面コミュニケーションの復活もあり、飲み会に誘われる方も多いと思われます。また、夏といえば熱中症の危険性もあります。五苓黄解はこの両者に対応できる漢方薬です。 二日酔いと熱中症の共通点  漢方では熱中症の原因を、「水(すい)」の循環不足による血液の高濃度化と捉えています。水は別名で津液(しんえき)とも呼び、体の表面から内部までを潤す役割を担っていると考えられています。その範疇は、リンパ液や体組織液から

        • 【漢方】 五臓六腑と奇恒の腑

           五臓六腑という言葉は、皆さんも耳にしたことがあるでしょう。この中には、現代の私たちにも馴染みのある臓器の名称もありますが、西洋の解剖学とは概念がやや異なります。また、この他に奇恒の腑(きこうのふ)と呼ばれる臓器カテゴリーがあります。今回は五臓六腑と奇恒の腑について解説します。  五臓とは、肝、心、脾、肺、腎です。六腑とは胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦になります。そして奇恒の腑とは、脳(髄、骨)、脈、胆、子宮(女子胞)です。  五臓には馴染み深い名称が多く、理解しやすく思

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          【神道】 神社の成立はいつか

           神社は、日本の歴史と密接に結びついています。時代が変化するように、現在の私たちが認識する「神社」の多くは、原初の姿ではありません。では、「現代の神社」はいつ成立したのでしょうか。神社といえども、伊勢神宮から田んぼの神社まで、バリエーションがありますので、今回は都市部の「地域の神社」の成立について投稿します。  神社の単語を分解、訓読みすると「神の社(やしろ)」となります。社とは「屋代」であり、代(しろ)とは、ある区域を意味します。糊代や伸び代という単語は現在でも使われてお

          【神道】 神社の成立はいつか

          【神道】 お札の祀り方

           ご家庭や職場では、神棚でお札をお祀りすることが一般的でしょう。最近はおしゃれな神棚も販売されていますね。参拝者のなかには、「ウチに神棚が無いから、お札はいらない」という方もいらっしゃいます。そういう方は、お札をお祀りするハードルを高く見積もっているからではないでしょうか。今回はお祀りの方法について、私の見解を投稿します。 お札を祀る方角  神道を勉強された方には、お札は南向きや東向きに設置することが正しいと教わった人もいらっしゃると思います。神社本庁の「お神札のまつり方

          漢方医のトレーニング

           今回は先代店主から聞いた、お師匠の逸話を投稿します。  店の休憩室で談笑する弟子たちに、お師匠はこのように述べたそうです。お師匠のお店は診察待ちの列が常であったそうです。繁盛している店を切り盛りして、更に弟子たちの指導をしていると、遊びに行く暇など無いでしょう。しかし、お師匠の真意はそこではありません。 漢方医のトレーニング  漢方では、証の判断が重要であるとされています。  漢方医を、「証を判断する職人」として捉えた場合、日々のトレーニング(鍛錬)は欠かせません。

          【神道】 神様とは(6) 神様となる条件

          この投稿は続きです。よろしければ先に下記の投稿をお読みください。 ・神様とは(1) ・神様とは(2) ・神様とは(3) ・神様とは(4) ・神様とは(5) 神様となれる人  当シリーズでは近代から平安時代まで遡り、神様として祀られた人物(人間神)を確認しました。祀られるまでの背景はさまざまでしたが、実は一貫する要素があります。今回の投稿は「神様となる条件」です。  これを確認するべく、これまでご紹介した神社や人間神をお祀りする神社のご由緒を見てみましょう。  もうお分か

          【神道】 神様とは(6) 神様となる条件

          【漢方】 漢方と民間治療

           お客様とお話ししていると、民間治療についてご質問を受けます。多くの場合は、お知り合いの方から「〇〇に効くから□□茶を飲んだ方がいいと聞いたけど、どうだろうか?」という質問です。  当店では「効果は分かりません」とお答えします。なぜならば、民間治療(その多くが植物由来の煎じ茶)は、漢方薬(医薬品)ではないので効能効果を明言できないからです。これは薬機法に基づく対応です。  元来、漢方薬は民間治療から発達したものです。そのため、民間治療の煎じ茶を同じように受け止めていらっしゃる

          【漢方】 漢方と民間治療

          【神道】 神様とは(5) 御霊信仰

          この投稿は続きです。よろしければ先に下記の投稿をお読みください。 ・神様とは(1) ・神様とは(2) ・神様とは(3) ・神様とは(4) 慰撫としての祀り  受験シーズンに賑わう神社が天神様です。太宰府天満宮と北野天満宮を筆頭に全国各地に鎮座し、菅原道真公をご祭神としています。ご承知のとおり、道真公は学問の才に秀でて右大臣まで昇進します。その点だけ取り上げれば、近代、近世の偉人と同様です。決定的に異なるのは、非業の死を遂げたことと、道真公を貶めた人々に怪異が起きたことです

          【神道】 神様とは(5) 御霊信仰

          【神道】 神様とは(4) 神様となる儀式

          この投稿は続きです。よろしければ先に下記の投稿をお読みください。 ・神様とは(1) ・神様とは(2) ・神様とは(3)  前回では、家康公は子孫と江戸幕府を護るために、神として祀られることを望んだことを確認しました。この願いには、死後も人は現世に影響を与えることが可能であると信じられていた共通認識がありますが、神様となるには手順(儀式)が必要になります。今回は少し脇道に外れて、神葬祭(しんそうさい)について投稿します。 神葬祭の始まり  多くの日本人は仏教形式でお葬式を

          【神道】 神様とは(4) 神様となる儀式

          【漢方】 一貫堂医学の基礎理論

          漢方の伝来  漢方は、允恭天皇の御代に朝鮮半島から伝わったとされます。  その後、漢方の受容は、遣隋使や遣唐使を通じて本格化したと考えられます。漢方の創生は中国大陸ですが、現代日本で用いられる漢方は日本国内で独自に進化発展したものであり、その過程でいくつかの流派が生まれました。一貫堂医学は明治末期に創生された新しい流派です。とは言え、基盤になるのは古来より伝わる漢方理論です。創始者の森道伯先生は、古来からの理論を精査統合し、新しい理論を組み上げたのです。  今回は、『漢方

          【漢方】 一貫堂医学の基礎理論

          【神道】 神様とは(3) 権現信仰

          この投稿は続きです。よろしければ先に下記の投稿をお読みください。 ・神様とは(1) ・神様とは(2)  近代では、民衆の後押しによって偉人が神様として祀られました。その骨格を支えたのが権現(ごんげん)信仰です。この権現信仰を、近世(江戸時代)に照準を合わせてお話しします。 人の姿で現れる神様  現代では「権(けん)」という文字は、権利、権力、権限など、他者を従わせる力の印象があります。しかしこの字を「権(ごん)」と読む場合は、仮や副という意味になります。つまり、権現とは

          【神道】 神様とは(3) 権現信仰

          【漢方】 医学の精神

           人類の歴史は試行錯誤の連続の上に成り立っており、それは医学も同様です。しかし、その根底には一貫して流れている精神があると思います。今回は医学の精神について投稿します。 文字の特性  多くの人々は記録に文字を用います。人類は文字を発明することで、情報の保存を可能にし、科学的な検証を成立させました。  「同じ答えや結果」、「原因と結果」。結果という情報が変わっては検証ができません。この膨大な「結果」の積み重ねが知を発展させました。そして、結果を次代に紡いでいく架け橋が文字

          【神道】 神様とは(2) 近代の神様

           この投稿は続きです。よろしければ先にこちらをお読みください。 神道の特異性  私が思うに、神道の特異性は「近代の人物が神として敬われる伝統宗教」という点です。創唱宗教では、創始者を神と同一視する向きもあり、それは新興宗教にも当てはまる部分があるでしょう。しかし、伝統宗教で近代の人物を神として敬うのは神道のみではないでしょうか。  明治神宮は明治天皇、昭憲皇太后両陛下をご祭神としていますし、乃木神社、東郷神社、梨木神社そして靖国神社など、功績のあった方々が神様として祀ら

          【神道】 神様とは(2) 近代の神様

          【神道】 神様とは(1)

           日本文化には神道が深く関わっています。神道は時代を経て仏教との結びつきや研究の発展によって、捉えられ方も変化してきました。今回のnoteは、神道の神様についてです。 日常の神様  多くの日本人は超人的な存在を「カミ」と認識しているようです。神がかり、神業、〇〇の神様、流行語では「神ってる」というものもありました。こうした言葉の使い方を鑑みると、神様はすごい存在だけど、意外とたくさん居て、それなりに接する機会があるようです。 一般的な神道の神観  神社神道においての神