見出し画像

【しまね女子ブログ】隠岐の自然に背を向け、私は引き籠る~第3話:地域おこし協力隊で漫画を描く【後編】~

隠岐の特産品の魅力をストーリーでPRする

こうしていよいよ、協力隊として役場勤務が始まりました。私に与えられた課題は「特産品のPR」です。
自然に恵まれた隠岐の島町には、特産品と呼ぶに相応しい美味しい食べ物がいっぱいあります。松葉ガニ・岩牡蠣・白バイ貝等豊富な海産物。島根県屈指の米所でごはんも美味しいですし、畜産も盛んで『隠岐黒磯牛』というブランド牛もあります。
少し調べただけでも、美味しい食材が沢山出てきました。ですが地元の方曰く「味には自信があるが、どれも他の地域でも食べられる物で、特別特徴があるという食材ではない。」
オンリーワンにも、ナンバーワンにもなれない…だから島外へ向けてどのようにPRすれば良いのか悩む…そんなお話を聞かせていただきました。

隠岐のブランド岩牡蠣『清海』の養殖場

オンリーワンにもナンバーワンにもなれない…私はここが引っ掛かりました。何故なら世の中には、オンリーワンでもナンバーワンでもない…だけど人気で話題の特産品が色々あるからです。いや、それ以前に、ちょっと待って……そもそも「特産品」とは何なのでしょうか?気になってその定義を調べてみました。特産品とは「その土地の風土文化に根付いたもの・独自の技術を用いて生産されたもの」だそうです。

なるほど。そこで私はひらめきました。ならば「隠岐の食材にまつわる隠岐の島町ならではのストーリー」を発信すれば、隠岐産品の魅力を島外に伝えられるのでは⁈そしてストーリーの発信といえば、まさに漫画はうってつけなのでは⁈

私は先日頂いたわかめを思い出しました。わかめも隠岐の特産品の一つです。「よし、あの体験を漫画にしてみよう!」そう思い立ち、早速描いてみることにしました。
役場には当然漫画の道具はありませんが、漫画なんてとりあえず、紙と鉛筆があれば描けるもんです。その辺のA4コピー用紙を引っ張り出して、鉛筆と定規で漫画を描いて行きました。最近、漫画は全てパソコンとタブレットで描いていたので、このアナログで描くという作業は久々でした。なんだか初心に返れたような心地がしました。
こうして、漫画がスランプになって幾数年…本当に久しぶりに、自分の描きたい漫画を描き上げられたのです。

当時のネーム

自分の『楽しかった体験』を詰め込んだこの漫画……早速地元の職員さん達にも読んでもらいました。反応は概ね好評でした!「隠岐の当たり前が漫画になってるって新鮮~」って楽しんでもらえました。V( ̄Д ̄)v イエイ!!
ただ漫画として面白くても「PR企画としてどうなのか」…という慎重な意見もありました。「企画として考えた時、本当にこの漫画にPR力があるのか?」ここを説得できないと、企画は承認されません。
ですがそこに関しては、協力隊の先輩たちが後押ししてくれました。「漫画の内容をもっとPR漫画としてブラッシュアップしていけば、絶対面白い企画になるはず!」と。
そこからは先輩たちが制作に色々協力してくれました。「主人公はみんなが思い入れしやすいよう、オリジナルキャラクターにしてはどうか。」「隠岐の島町らしいモチーフのあるキャラクターデザインにしてみてはどうか。」タイトルは?他のキャラクターは?今後はどんなストーリー展開にする?
こうして、色んな人達から意見や応援を頂いて、隠岐の島町特産品PR漫画『隠岐のナミと離島(しま)ごはん』の連載がスタートしたのです。

ヒロインの『沖野ナミ』ちゃん。前髪が隠岐の島町の町章の形をしています。 (漫画はコチラから読めます)

漫画を通じて食べる・出会う

実は、私は元々食べることが大好きな人間です。それがこの漫画の企画が始まってから、より一層(仕事にかこつけて)美味しいものを探し求めるようになりました。
隠岐ならではの食材・郷土料理の話を小耳に挟むたび「それは何処で獲れますか?!何処で食べれますか?!」と、役場やご近所さんたちに教えてもらったものです。あるいは実際に作っていただいたりもしました。中には私のPR漫画を見て、応援とネタ提供を兼ねて、ご馳走してくださった方もいらっしゃいました。(ホントお世話になりました!)

獲れたてサザエを贅沢に使ったサザエの海苔巻き
カメの手のお吸い物
鯖出汁が沁み沁みで美味しい隠岐そば
ねっとり甘い、紅はるかの干し芋
地区の皆さんとワイワイ言いながら作った焼きあご出汁…

カメの手(左上)、焼きあご(右上)、隠岐そば(左下)、焼き芋を頬張るヘナちゃん(右下)

美味しいごはんの側にはいつも、食事を通じて仲良くなった人たちの笑顔と、楽しい会話がありました。どれも協力隊時代の良い思い出です。

あ…でも一つだけ、ごはん関係で痛い目にあった記憶があります。
隠岐ではアメフラシ(ウミウシ)のことを『べこ』と呼び、捕まえて食べる食文化があります。

ベコ。つつくと紫色の汁を出します。

アメフラシを食べるのは全国的にもかなり珍しいそうで「これは是非漫画のネタにしたい!」と息巻いた私は、ご近所さんにお願いして食べさせてもらいました。隠岐では酢味噌和えにして食べるのが多いそうなのですが、私は山椒とお醤油で味付けしたものを頂きました。べこそのものに味はあまりないのですが、ゴムのような…弾力のある高野豆腐のような食感が独特で面白い!べこはその見た目のグロテスクさから、食べられない人も多いようなのですが、私は気に入りました。(調理して頂いたご近所さんの味付けが良かったってのもあります)
そこまでは良かったのですが、食べてからしばらく過ごしていると、なんか…体が痒い?体中に蕁麻疹がぶわ~っと出て、くしゃみが止まらない…⁈
なんと、どうも私は『べこアレルギー』だったようです!隠岐に移住しないとおそらく気づかなかったであろうこの体質…。幸い蕁麻疹は2日ほどで引きましたが、もうあの新食感を味わえないと思うとちょっと残念です。
私はたまたまアレルギーでしたが、ほとんどの人は支障なく食べられますので、もし隠岐の島町に来てべこを食べる機会がありましたら、是非ご賞味ください。(私の分まで…)

協力隊になって良かったこと

今になって、農林水産課で過ごした3年間を振り返ると、ただただ目の前の仕事をこなすことに必死で、退任後どうするか等、あまり先のことを考える余裕がなかったなぁ…というのが感想です。ただ結果として、役場で漫画を連載していたことは、私が隠岐の島町で漫画稼業を営む上で、大きな足掛かりとなりました。今こうして(細々とですが)専業で漫画家をやれているのは、間違いなく協力隊時代の実績と、そこで出会えた人たちのおかげです。
もし、隠岐に移住して「いずれ起業を…」と考えている方がいらっしゃいましたら、協力隊を選択肢の一つとしておススメします。地域の課題を解決すると同時に、起業に必要な実績作りも兼ねた企画を立案すれば、より隠岐での起業がスムーズに進むと思います。起業支援金もありますしね。
ただ、良い点ばかりではなく難点もあります。隠岐の島町の協力隊は、ほとんどの配属先が役場関係なので「役場勤めが性に合うかどうか」という点は、気を付けなくてはいけません。特に、主体的にバリバリ仕事をこなすことが好きな個人事業主タイプの人は、役場の保守的なシステムにストレスを感じるかもしれません。実際私も苦しい時期が何度もありました。(その都度、定住推進課の職員さんに相談してサポートしていただき、なんとか乗り越えられました。)

ただ、それを差し引いてでも「地域おこしの企画を通して、色んな人と出会える」という体験……それも「隠岐を盛り上げたい!」という想いを持って協力隊を応援してくれるような……前向きでエネルギッシュな人たちとの出会いは、この隠岐の島で生きていく上で、かけがえのない価値をもたらしてくれていると感じています。
もし、これから協力隊に挑戦しようと考えている方には、ぜひその価値を感じてもらいたいと思います。

「美味しい」と「楽しい」が詰まった思い出の食卓


▼過去の記事
《第1話》隠岐の自然に背を向け、私は引き籠る~移住のきっかけ~
《第2話》隠岐の自然に背を向け、私は引き籠る~第2話:地域おこし協力隊で漫画を描く【前編】~

◆◇◆━━━━━━◇ プロフィール ◇━━━━━━◆◇◆

【ペンネーム】あーさ
【居住市町村】隠岐の島町
【UターンorIターン】Iターン
【移住前の居住地(都道府県)】愛媛県
【年代】40代
【お仕事】漫画家
【好きなこと】仕事で漫画を描くこと 趣味で漫画を描くこと
       隠岐の美味しいご飯屋さん巡り インコを吸うこと
【Love shimaneとしてひと言】
隠岐の島町に愛鳥と共に移住して早4年。暇さえあれば家にこもって漫画を描いているため、まだ訪れたことのない隠岐の観光地がたくさんあるという、なんとも残念な体たらく。
そんなインドア派でオタクでおひとり様の私ですが、ここ隠岐の島町で豊かな暮らしを楽しんでいます。
普段は引きこもり、たまに外に出て隠岐の自然や人々との交流を楽しむ…そんな私の日々の感動をお伝えしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!