見出し画像

失敗から学ぶフェイルファスト(Fail Fast)を実現する心理的安全性と成長思考

今回は、フェイルファスト(Fail Fast)で革新的なプロジェクト(イノベーション)を進めるビジネス手法に関して考察を重ねたいと思います。フェイルファスト(Fail Fast)はイノベーションを成功へ導く戦術です。しかし、並みの組織では限られた効果しか上げることは難しく、高い心理的安全性を礎とした組織文化が求められます。そこでは、個人レベルの成長思考を超えた、組織レベルの成長思考が根付いています。また、その文化を推し進めていくためには、先見性のあるリーダーシップも必要になります。それは、目標に向かって従業員をまとめ上げる能力と、将来のために人材を継続的に育て上げる能力という二つの異なる特性を兼ね備えたリーダーといえます。

そのような高度な組織において、感情知能がどのような役割を果たすのかを TED の動画を参照しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。


失敗を称賛できる心理的安全性の力

この動画は、Google の一部門である X (かつての Google X)でムーンショット(Moonshots)のキャプテンとして舵取りを任されているアストロ・テラーによる、大きなリスクの伴うプロジェクトや大胆なアイデアの探求に、人々が心地よく取り組める組織を作るための秘訣を披露しています。そして、フェイルファスト(Fail Fast)は、そのような高度な組織文化の上に成り立つ戦術として紹介されています。

フェイルファスト(Fail Fast)が必要なプロジェクトとは?

動画の中で、プロジェクトを立ち上げる上で三つの重要なポイントをあげています。

  • 多くの人に価値を届ける規模の大きい未解決な問題である(Huge Problem)

  • その問題の根本的な解決案を見つけられる(Radical Solution)

  • その解決案が実現できそうな画期的な技術革新の可能性を信じられる(Breakthrough Technology)

これは、単なる金儲けではなく、人類にとって真に価値ある製品を生み出すための第一歩は、学ぶことだという事実を物語っています。学ばずに作れる製品は、すでに存在している製品であり、革新的ではないということです。本を読むだけで学べることは、すでに誰かがやったことです。誰も経験したことがないからこそ価値があるわけですが、その結果を誰も知らないというリスクがあるのです。

したがって、実験に挑戦し、失敗し、学ぶことがイノベーションを起こす唯一の方法なのです。逆に言えば、個人的な知識の穴埋めをする程度の実験では不十分ですし、他人と同じ失敗を繰り返しても意味はありません。一方、たとえ製品が完成しなかったとしても、世界の誰も持っていない知識を身につけた社員や特許など、組織が学びの過程から得られる成果には大きな価値があります。特にイノベーションの文化に精通していることは、イノベーションを生み出すために必要な人材を育成する上で財産となります。

フェイル(Fail)とは学びのこと

別の言い方をすれば、失敗とは悪い結果のことではなく、失敗と学びは本質的に同じであるという視点を持つことが重要になります。実験し、失敗し、学ぶというサイクルは、組織の成長思考を支える文化の重要な一部として機能し、高い心理的安全性はそうした組織の礎となります。

動画の中では、リスクの高いプロジェクトを進める際に心理的安全性を保つためのいくつかのヒントが紹介されていますが、心理的安全性が低く、固定思考に陥りやすい組織では、成功や失敗という出来事そのものに焦点を当て、成功は正しいこと、失敗は脅威と認識する傾向から抜け出せなくなる可能性があります。

ファスト(Fast)とは重要な学び(Fail)を継続的に成し遂げること

学びの目的は、アイデアのリスクに対するチームの理解を深めることです。特にプロジェクトの初期段階では、リスクの高い分野を認識し、実験し、学びながら進めていくことが重要です。チームがアイデアに対する理解を深めれば、それがうまくいきそうかどうか、合意形成することができます。これは、チームの一体感を高める効果もあります。また、うまくいかないようであれば、早い段階で次のアイデアを試すことができ、損失を最小限に抑えることができます。

プロジェクトが初期段階でいくつかの大きな峠を越えられると、ある程度の製品のイメージが見えてくることがあります。そうなると、プロジェクトを成功させたいという思いが膨らみ、確かに真新しいが、しかし革新的とは言い難い、小さくまとまり過ぎて不十分なゴールに照準を合わせてしまうという落とし穴に陥ることがあります。

ここにも成長思考を妨げる罠があります。成功は喜ばしいことですし、そのような感情は大切にするべきです。しかし、小さな成功に潜む落とし穴に気を配り、チーム一丸となってそこからうまく抜け出すことが重要です。そのためには、多様性を大切にし、さまざまな視点から建設的な議論を重ねることが必要になります。例えば、動画の中で、初期の植物工場のプロジェクトを中断した話がありました。たとえレタスのような葉っぱが栽培されたとしても、主食となる稲のような食べ物が育たなければ、世界の食料問題の解決にはつながらないでしょう。

フェイルファスト(Fail Fast)を支えるリーダーシップ

この動画では、いくつかあるリーダーシップのスタイルの一つである権威的リーダーシップに焦点を当て、そのリーダーシップにおける21世紀のスタイルを学ぶために、常に三つの質問を自らに投げかけることを提案をしています。

  • 変化で価値を生むのはどこか?(Where are you looking to anticipate change?)

  • 自分の人脈の多様性をどのように確保するか?(What is the diversity measure of your network?)

  • 過去を捨てる決断ができるか?(Are you courageous enough to abandon the past?)

組織や社会に真に価値を生み出す変化を起こすことは容易ではありません。しかし、そのような変化を常に意識し、変化を起こす適切なタイミングを見つけることは、リーダーとして最もやりがいのあることのひとつでしょう。

リーダーシップは、知識によってではなく、学びによって発揮されます。その結果、変化をとらえ、タイミングを計ることができます。効果的に学ぶためには、多様性に富んだ人脈が役に立ちます。人は気の合う人とのつながりを好むものです。しかし、重要なのは、自分にはない経験を持つ人、自分とは異なる意見を持つ人など、多様な人脈を通じて必要な学びをいかに確実に得るのかということです。

また、人は過去の成功体験も好むものです。しかし、単に過去の成功体験をなぞることはイノベーションではありません。ただし、リスクを過大評価したり過小評価することは避けなければなりません。この点でも、多様性に富んだ人脈が役に立ちます。

まずは、共感力を鍛え、チームワークを構築する

フェイルファスト(Fail Fast)の戦術をうまく使いこなす洗練されたチームを作るには、感情知能が提供する枠組みの中での共感力対立管理、そして、チームワークが効果的です。共感力は、単に言葉で意味を伝える以上のコミュニケーションを可能にし、感情的に結束力のあるチームを作ります。対立管理は、建設的な議論を通じて意見の違いを克服し、良いアイデアを育てるのに役に立ちます。そして、心理的安全性の高いチームワークを構築することで、フェイルファスト(Fail Fast)のような高度な戦術を駆使できる組織へと進化することが可能です。


ご愛読いただきありがとうございます。感情知能の記事はこちらのマガジンからどうぞ。

感情知能のトレーニングを始めたい方は、こちらのマガジンからどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?