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対立を制する者はリーダーシップを制す

感情知能の四つの領域の最後の領域である人脈管理は、影響力 (Influence) 、コーチとメンター (Coach and mentor) 、対立管理 (Conflict management)チームワーク (Teamwork)リーダーシップ (Inspirational leadership) の五つの特性から成り立ちます。その中から今回は対立管理に関して TED の動画などを参照しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。

今回は特にディベートの世界大会で優勝経験のあるスピーカーから動画を選びました。対立管理とは、対立や不和を解決するために、共感力を発揮することです。対立する内容はケースによって異なりますが、勝ち負けを争うのではなく、話し合いによってお互いの共通の目的を見出し物事を前進させる能力であり、時には相手の意見に賛同できなくても、相手の背景に理解を示し、解決に向けて交渉・妥協する能力も含みます。

感情知能の四つの領域と14の特性

建設的な会話

この動画では、建設的な会話を構成する三つの要素を学べます。意見の対立とは、一方から他方を見るバイアスのかかった視点であることにさえ気が付くことができれば、とても有意義なものになります。お互いに同じ意見であれば、そもそも話し合ったところで何も変化は生まれません。異なる意見こそが、物事を異なる方向に進めるための気づきとなるため、建設的な会話となります。

一つ目の要素は、対立ではなく、好奇心を持って議論に臨むことです。もし相手が自分とは異なる意見を持っていた時、こんな感じに聞いてみてはどうでしょうか?「そんなこと考えたこともなかったよ。どういうことか詳しく教えてよ。」相手の意見に関心を持つことは、建設的な会話の最初の一歩です。

二つ目の要素は、議論をアイデアの発展の場と捉えることです。会話が建設的にならないパターンの一つに勝ち負けにこだわることがあります。意見が対立するということは、逆に言えば、相手には自分の意見が見えていない可能性が高いのです。あなたの方から相手の意見を自分の意見と融合させる方向に舵を切ることができれば会話は建設的になります。リーダーシップを発揮しているともいえるでしょう。

三つ目の要素は、お互いの共通の目的を見つけることです。これに失敗するパターンとして、お互いの意見の同じようなポイントに注目してしまうことがあります。同じ意見を並べたところで会話は建設的にはなりません。もしくは、どちらか一方の意見を土台にした話し合いもその後の進展を困難にする場合があります。むしろ、AでもBでもないCを見つけ、そのCによってAとBに重なりが生まれるという心構えが良いと思います。物事が進展するためには、自分自身も自分の意見から離れられることが重要です。

RISAフレームワーク

この動画では、建設的な会話を行うためのより具体的な手法を教えてくれます。RISA フレームワークは、会話を建設的なものにするための四つの確認事項の頭文字から来ています。

  • Real (根拠はあるのか、誤解ではないのか)

  • Important (時間と労力をかける意味はあるのか)

  • Specific (ぼやけた会話になっていないか、具体的な進展は期待できるか)

  • Aligned (筋が通っているのか)

そもそも議論に何の意味があるのかお互いに確認することは大切です。相手の考え方を変えることに成功したとして何が得られるのか、相手の考えに同意することで何が失われるのか、相手は本当に私の考え方を変えたいと思っているのか。誤解がもとになっている議論では意味がありません。単に同意できないことに同意すれば良いのかもしれません。

議論における準備は、自分の意見の確実性を確認することで、時間がかかることもありますが、とても大切な手続きです。単にデータだけであれば相手も知っているはずです。どのようにそのアイデアを売り込むのかを考えるのは、時間をかける価値があります。また、意見の不一致が解決することで物事が前進するためには具体的な議論である必要がありますし、あなた自身の過去との整合性を考える必要もあります。

そして、議論の中でよく語られる「相手の意見を聞く」ことの重要性ですが、具体的にどのようなことなのか、この動画で詳しく理解することができます。相手のあら捜しをしているのは、相手の意見を聞いているとは言いません。そのような行為は、むしろ、相手に対して意見を聞いていないというシグナルを送ることになるため、ほぼ間違いなく議論が進展することはありません。つまり、相手の意見を相手と同じように理解する必要があるのです。これは、相手の意見よりも発展的な自分の意見に対する反対意見を組み立てられるかどうかで判断できます。相手側の議論を進展させることで、相手を見方につけることができ、最終的にその議論を有意義なものにし前進させることができます。

最後に、自分の意見に対する確信感を停止できる能力も求められます。それは、相手の意見の合理性に無条件に乗っかってみて、自分の意見を再度検証する行為です。単に自分の意見に批判的になるのではなく、どのような議論の発展の可能性があるのかを検証することです。

これは多様性と重なる部分があります。つまり、多様性では自分の価値観を脇に置き、相手の価値観に適合する行動が有効である話をしましたが、議論においても同様のアプローチが有効であるということです。そして、このような議論は共感を生み、単に対立という落とし穴を防げるばかりか、お互いに議論できる領域を展開でき、より多くの人々を繋げる効果が期待できるのです。それは人々の結束により生まれる本当の力を発揮させ、物事を大きく前進させる力になります。このような効果を引き出すことはまさにリーダーシップと言えます。


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