見出し画像

組織の多様性と俊敏性を支える企業文化を構築する

前回の投稿では社会認知 (Social awareness) の中の二つの特性のうちの共感力 (Empathy) について考察しました。今回は、もう一つの特性である組織感覚力 (Organizational awareness) に注目し、どのようにリーダーシップに影響するのかを考えてみたいと思います。

感情知能の四つの領域と14の特性

組織感覚力とは、自分が所属する組織の文化、価値観、力関係の理解や、自分の行動や意思決定が組織に与える影響を認識する能力です。自己認知の上に成り立つ自己管理共感力を高めることが出来たら、集団に対してその力を応用します。今回も TED の動画などを参照しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。


多様性

: 多様性 (Diversity) とは、国籍、民族、宗教など個人のアイデンティティを構成する要素の複雑さを意味します。ダイバーシティー&インクルージョンのダイバーシティーはこの意味のことで、表面的にいろいろあるということではなく、その背景の複雑さを指す言葉です。

この動画は、文化が個人の行動に与える影響の大きさに関するストーリーです。挨拶を一つとってみても、お辞儀、握手、ハグ、キス、など様々な文化があります。挨拶はとても基本的な文化的行動で、これを怠ると、どんなに立派な大学を出ていても、現地の人からは無教養と思われるかもしれません。その結果、あなたの発言はあまり相手にされないかもしれません。

新しい組織に移ったとき、同じような疎外感を感じたことがある方もいるかもしれません。それは、あなたがどこかでそこの文化になじまない行動をとってしまったからかもしれません。香水が当たり前の文化圏からそうではない日本に来たとしたら、何が起こるでしょうか。タバコはどうでしょう?文化は2人以上の人がいれば生まれるものです。単に国の違いや、人種の違いというものではなく、東京と大阪では文化が異なりますし、会社の違い、家族が異なることでも文化は異なるのです。SNSだって文化が違います。Facebook、TikTok、Noteなど、それぞれの文化があります。規範や常識と呼ばれることもあり、時にメンバーに疎外感を与えてしまうこともあります。

多様性とは、相手のアイデンティティを理解したうえで、相手の行動を認識できる能力です。アイデンティティは、国籍、民族、宗教、職業など様々な影響を受けます。共感の場合は、相手の感情を推測する必要がありますが、多様性の場合は、実際に見て、聞いて、体験して自分の中に取り入れることが重要です。

アイデンティティを構成する複雑な要素を考慮せずに、単に相手の行動に敬意を示せばいいというものではありません。多様性の欠如は、発言や行動に表れるので、相手にわかっていないと悟られれば、あなたの評価は落ちてしまいます。多様性を身につける良い方法は、その文化を体験し自ら真似をしてみることです。そうすることで、新しい視点を手に入れる方法を学び、実際に手に入れた新しい視点と今までの自分の視点の二つの異なる方法で世界を見ることができるようになります。この学ぶ方法と成長した自分によって多様性を育むことができます。

動画の中で、人が異文化に出会うと三つの選択肢の中のどれかを選ぶと指摘しています。

  • 相手の価値観を尊重しながらも自分の価値観を主張する (Confront)

  • 相手の価値観に不満を言う (Complain)

  • 自分の価値観を脇に置き、相手の価値観に適合する (Conform)

多様性を身につけている人の選ぶ選択肢は三番目ですが、皆さんはどれを選びますでしょうか?多様性に欠ける人は、自分の価値観というバイアスでしか世界を見ることができないため、相手の行動にストレスを感じることがあり、感情が不安定になることがあります。以前、人生の1/3は自分自身とのおしゃべりであるという話をしましたが、多様性を理解し始めると、このおしゃべりの質は格段に向上します。自分自身のバイアスがより複雑に成長することで、様々な視点を考慮することができるようになるからです。したがって、体験によって得た記憶の整理が格段に変化する様を自分自身で感じることができるようになると思います。

この動画は、視覚障碍者の人に手品を「見せる」というとても心温まるストーリーです。手品の種明かしもしていますので、それを聴きながら、共感や多様性というものの理解を深めることができると思います。ただし、注意してほしいのは、多様性の知識そのものは、多様性を育むことにはならないということです。多様性も慈悲と同様、行動力が必要です。実際に行動して、そこの文化の人からのフィードバックに耳を傾けてみない限り、多様性を育むことはできないことを心得ておきたいところです。ここでもまた無意識のバイアスにより行動力が妨げられることがあるのです。

組織を俯瞰する

組織に対する感覚を向上させるためには、そもそも組織とはどういうものであるのかを理解するのがとても効果的だと思います。理想的な組織の設計を把握することで、自分の組織を理解するための基礎となります。ここでは、現在のハーバードビジネススクールで教えている組織論を時短学習することでそれを補強したいと思います。

この動画にあるように、組織論は時代とともに変化しており、現在の組織には、成果を出すための文化、組織力、俊敏性が求められていると説いています。多様な能力を持つ社員の能力を引き出し、ビジネスの成果を出すためには、それを支援する企業文化や垣根を越えたコラボレーションが重要です。また、今の時代のスピード感は、一つの組織ですべてをまかなうのではなく、その領域に秀でた外部組織とのコラボレーションも必要です。デジタルネイティブな組織を維持するためには、外部の変化に対応する俊敏性と柔軟性が不可欠です。こうしたさまざまな境界を超えたコラボレーションの土台となるのが、感情知能による自制共感、そして多様性を兼ね備えた組織です。

多様性のある組織は、社員一人一人の文化的背景、経験、視点をビジネスに生かすことができるため、既存の固定概念に縛られない想像力豊かな発想を問題解決に活かすことができます。これは組織の俊敏性にも貢献します。組織の多様性や俊敏性は、組織の文化と密接に関連しています。多様性を大切にする文化がなければ、多様性は育まれないと思いますし、多様性がなければ、時代の変化に取り残された硬直した文化になってしまうかもしれません。組織のリーダーは、組織の文化に大きな影響力を持ちます。そのため、より良い企業文化を実現するためには、リーダー自らが多様性を実践することが不可欠です。結局のところ、従業員を理解するにも、お客さんを理解するにも、多様性の実践が必要であり、それなしにビジネスを成功させることはもはや困難な時代であるといえるでしょう。


ご愛読いただきありがとうございます。その他の記事はこちらのマガジンからどうぞ。

感情知能のトレーニングを始めたい方は、こちらのマガジンからどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?