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教師の視点:“もしも“ の力

授業が予定よりもちょっと早く終わった時は生徒たちとよく“もしも”の話をします。授業中ならお題を出して即興のスピーチをさせたり、自由に作文を書いてもらったり、小さなグループでディスカッションしたり、と楽しく簡単なタスクです。しかしながら短い時間で想像を働かせて考え、論理的にまとめ、さらに理由や背景の描写を表現する、という多スキルを練習することが出来るので、私は大好きなアクティビティのひとつです。教科を問わずお題を無限に作れるのもいいところです。

お題は雑談レベルのものからちょっとだけ知識を必要とするものまで色々と。

もしも動物に生まれ変わるなら
もしも100万円をどこかに寄付できるなら
もしもこれからたったひとつの料理しか食べられないとしたら
もしも母語以外の言葉が努力せずペラペラになれるなら
もしも自分が世界平和のためになにかを開発するなら
もしも歴史の出来事をひとつ変えられるなら
もしも“お金”がない世界に生きていたら
もしも0の概念がない世界に生きていたら

必ずやらねばならないのは答えを出すだけではなく、理由も述べることです。
たとえば生まれ変わったらハリネズミになりたい!と答えるならばその理由を掘り下げて欲しい・・・ヤマアラシではいけないのか、どんな利点があるのか、人間との差はなんなのか、などなど。

生徒の答えはなるほどな、と思うものから奇想天外で面白いものまで色々で、その子の個性やバックグラウンドも薄っすら見えてきて、聞いている私が得るものは数え切れないほどあります。中には自分の答えに納得できず、帰宅後に調べたりまとめたりして、スピーチの再チャンスを乞う生徒もいます。

もしもの話は現実に近いものではないほうが直接的な欲や目標などにつながらず、発想を飛ばしたり、心の中の深い部分を掘り起こしてみたり、とより面白い回答が聞けます。もし学校の先生がこれを読んでいて自分の授業でもやってみよう、とお考えなら授業のトピックにあわせて現実味はないけれど考えさせるお題を練っていくといいと思います。10分で終わらず、もしもだけで3日の授業をすることもあります(リサーチなどが必要なときなど)。

今学期に教えていた“幸せ”についての授業(科学、歴史、哲学、文学、心理学、コミュニケーション学、言語学、と多方面から幸せとはなんぞや、と考えるクラスです)の子供達にも聞いてみました。

もしも“幸せ”に色があるなら、音があるなら、形があるならどんなものだと思う?
もしも動物と会話できるなら、どの動物の“幸せの定義”を聞いてみたい?
もしも自分の幸せを誰かに譲れるなら、どれくらいの幸せな気持ちをいくらで売る?
もしも全世界の人間が幸せを感じるなら戦争はなくなると思う?

みなさんならどう答えますか?

”もしも”は現実ではないのでそんなことを考えるのは時間と労力の無駄だ、と思う人もいるかと思います。
でもありとあらゆるもしもを真剣に考える、掘り下げる、討論する、そんなステップを踏むことによって人に聞いたり、調べたり、視野を広げたり、新しい表現方法を覚えたり、とたくさんのプラスをもたらします。

一人でやってもいいのですよ、もしもの話。

いい頭の体操になりますので3分あるときにやってみてください。

シマフィー

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