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"マスコットキャラクター"どっちが好き?

こんにちは。
絵本と美術書の出版及び、デザインの基礎研究を行う視覚デザイン研究所の所長、内田です。前回はショッピングモールのデザイン分析を紹介しました。今回はマスコットキャラクターをテーマに好感度の高いデザインを作ってみましょう。
当室では1979年にジャンプ率や版面率など「視覚スケール」の礎となるセオリーを公開し、以降30年にわたって実験調査を続けてきました。その結果、視覚スケールは視覚的要素のユニバーサルな計測基準として有効性があると確信にいたりましたので、多くの方に広く使っていただきたく公開します。

どっちが好きですか?

深く考えないで一瞬の直感で決めてください。

王道キャラクターが好感される

当室では上記a・bを含む24体のキャラクターから、好きなもの嫌いなものを各5つ選んでもらう好感度アンケートを70名を対象に実施し、その結果を好感度A〜Eの5段階に振り分けました。アンケートの結果、bは多くの人の「好き」票を集め好感度Aになりました。一方aは大阪・関西万博の公式キャラクターですが、「嫌い」票を40%集め好感度Eとなりました。マスコットキャラクターの王道は明るく元気で訪問者を歓迎するものです。アンケートの結果は王道の大切さを表しています。

本能の本音
色や形の好みは本能とも言われる意識下の反応です知性脳からは見えない本音が見えます。

安心共感派と冒険派

同アンケートの中で「クリスマスとハロウィンどちらが好きか」も併せて聞いた結果、クリスマス好きと答えたのは70名中66名で、ハロウィン好きと答えたのは4名でした。またハロウィン好きの4名全員が、キャラクターの問いでaのキャラクターを好きと答えました。ハロウィン・aを選んだのは少数派ではありますが冒険派ともいえるでしょう。このアンケートでは好き嫌いは個人的嗜好によって正反対になること、また冒険派が流行をリードする様子も読み取れました。

アンケート調査の方法
当室のアンケートは、回答者が直感的に選択することで、扁桃体の反応を引き出すようにして行っています。またアンケートの選択肢には視覚スケールを用いて制作した、好感度Aを予測したデザインを含めます。アンケート後は結果を踏まえて視覚スケールを再調整し精度を高め、デザインレシピを完成させます。

実習1 : 王道キャラクターをつくってみよう

さて、上記アンケートで安心・元気な王道キャラクターに好感する人が多いことがわかりましたが、多くの人が直感的に好きだと感じるマスコットキャラクターを作るにはどんな条件が必要でしょうか?今回も視覚スケールを用いて、bのキャラクターができる工程を一緒に追ってみましょう。

視覚スケール
当室の提唱する視覚要素の計測基準です。視覚スケールは形や配色など約50本あります。デザインにこのスケールを当ててそのシーンにあった数値を読み取ります。これらを組み合わせると好感度Aレベルになります。

① アイデアスケッチから1点に絞る

仲良しの友達に会った時のような楽しい気持ちでリラックスして描いてみましょう。その中から笑顔のキャラクターを選びます。

②視覚スケール『シンプルな形と特徴』で補修する

細かすぎるタッチはシンプルな線に整えます。特徴がない時はイニシャルや帽子・道具などを持たせたり、装飾を加えます。手や足で動きを表すといきいきします。

③視覚スケール『色量率』『色相』で配色する

配色を変えると全然違った印象になります。 下記の条件を参考に、気に入った配色が出来上がるまで何回も試してみましょう。

色量率

色量率を3~7の範囲に納めることがポイントです。低すぎると元気さがなく、強すぎると怖い印象になります。マスコットキャラクターには色量率3~7が適量です。

色量率
視覚スケールのひとつで、配色の強弱を10段階で表します。彩度を高め、明度差・色相差を大きくするほど色量率は上がり、<力強さ・元気さ>が表れます。反対に彩度を低くし、明度差・色相差を小さくするほど色量率は下がり、<優しさ・上品さ>が表れます。

 色相

紅色、赤色、橙色、黄色の暖色は温かい気持ちにさせます。また、もっとも歓迎感・開放的な気持ちを表すのは黄色です。

④ 完成

元気でユニークなキャラクターができました。

実習2 : aの好感度をあげてみよう

 aは冒険派を虜にしましたが、多くの人には怖い印象だったようです。そこで先ほどと同じように視覚スケールを用い、aを多くの人が好感するキャラクターに変えてみます。目指す方向は怖さを感じさせない形と、穏やかな配色です。

① 視覚スケール『表情とポーズ』

まず異形のもとになっている"ひとつ目"を自然な”ふたつ目”にします。次に手足を広げ、ポーズに自然な動きを出します。元のキャラクターは仁王立ちで手の方向も閉鎖的なので威圧感がありましたが、表情とポーズを変えることで一気に陽気さが表れました。 アンケートでも「表情とポーズ」変更後、好感度が上がりました。

② 視覚スケール『色量率』『色相』で配色する

配色は実習1と同じように色量率と色相を調整します。
色量率
弱すぎず、強すぎない色量率3~7に納めます。
色相
赤と青の組み合わせは力強さを表し、同時に威圧感もあります。また寒色面積を増やすと冷たく冷静なイメージが強まるので、暖色面積を増やしたり他の色相(特に黄色)を加えて歓迎感・開放感を表します。

③完成

完成しました。表情・ポーズだけでなく配色も変えた結果、アンケートでは好感度がさらに上がり好感度Aのグループになり、多くの人が安心した気持ちになるキャラクターに変わりました。

配色の効果

キャラクターのような嗜好性の高いアイテムは実用品と違い、好き嫌いの個人差が大きいため絶対的な答えはありません。しかし下図からは同じ形のキャラクターであっても配色で好感度が変わることがわかります。

次回予告

自作キャラクターをコンクールに出そう(10月3日更新予定)

次回は、読者の皆さんがよりキャラクターを作りやすいよう素材を用意します。視覚スケールを用いて一緒に好感度の高いキャラクターを作ってみましょう。12月1日応募〆切、12月25日発表予定です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

当室では、視覚スケールをより使いやすくする方法を開発中です。視覚スケールについて詳しい本や美術書も出版しています。
デザイン書・美術書ストア

また研究の成果を生かして、子どもの感性を健康に育てるためのえほんを出版しています。
えほんストア

視覚デザイン研究所のWEBサイトでは、選挙ポスターデザインと得票数の関係性や、良いデザインとベストセラーの関係性など、感性の数値化や視覚スケールでの実験を行っています。
また当室出版「レイアウト基礎講座」を再編集したレイアウト様式を決定づける8要素も無料公開しています。発行から年月を経ていますがレイアウトの基礎は不変ですので、ぜひご覧ください。

実験協力者募集

実験のテーマも募集中。読んでみたいテーマがありましたら教えてください。また、自信のある商品ができたら好感度Aデザインにして発売してみませんか?無償で協力させてください。

次回もお楽しみに。


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