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欧文書体の種類を知ろう:スクリプト編

火曜日なのでデザインの話。その他のデザインの話はこちらに。


欧文書体に詳しいメリットとは

欧文書体、つまりアルファベットの種類やなりたちを知ると世界が広がって楽しいとのビジネスで役に立つのでざっくり紹介していきます。

どうして世界が広がるかと言うとたとえば、ブルガリというブランドがあります。創業が1884年の歴史あるイタリアのラグジュアリーブランドです。ブルガリのロゴはこうです。

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そして、ブルガリの綴りは、こうです。

Bulgari

なぜ「u」がロゴでは「V」になっているのか。理由はこれ。

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Wikipedia「u」から引用

Uは昔Vだったんです。単語の場所によってuとvを中世あたりから使い分けるようになりました。単語のあたまにくるならv、途中とか終わりに来るならu。だからuponという単語は、むかしvponと表記されて、haveならhaueと表記されていました。

だからUをVと表記すると「歴史が深い!」という印象を与えられるんです。ブルガリが創業されたあたりではすでにUは使われるようになっているので、あえてVを使っているのだと推測していますが。

とこんなふうに世界が広がって書体の知識は楽しいんです。またビジネスにどう役立つかと言うと欧文の種類の背景をしっておくとパッケージデザインや企業などにつかうロゴなどをデザイナーやブランディングファームに依頼し、検討するときに是非を判断したり、理解したりするのに役立つから。また名刺の表記なんかも欧文の知識がないと欧米文化からみてちょっと恥ずかしいかったり違和感のあるものがあったりするので、それを避けることもできます。

わたしの会社では、グローバルはフィールドの企業や個人がクライアントに多いので、そのへんは徹底して制作しています。


欧文の種類はざっくり言って4つ

欧文の種類は、ざっくり言って4つ。

•セリフ
•サンセリフ
•スクリプト
•ディスプレイ

セリフとサンセリフについてはすで他の記事で紹介しています。


今回はスクリプトについてです。

スクリプト体とは筆記体

スクリプトというのは、手描きのニュアンスを表現した書体です。

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こちらは、Macにプリインストールされている(と思う)Zapfinoという書体です。美しいですね。これがスクリプトです。

ちなみに、意外におもわれるかもしれませんが、こちらもスクリプトの一種です。

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ニューヨークタイムズのロゴですが、これはブラックレターという種類のスクリプトです。詳しくはのちほど。スクリプトには、5種類あります。ただこの分類、人によるというかばっちりと決まっているわけでもないんです。なのでざっくりした理解で良いでしょう。

3-1 フォーマル・スクリプト

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これは、Snell Roundhandという書体です。優雅で高級で線が細い。フォーマル・スクリプトは、元来、銅版印刷が背景にあります。銅版印刷とは、17世紀くらいから生まれた印刷技術で、凹版印刷なんです。何を言っているかわかりにくいと思うのですが、それまでグーテンベルクさんが発明した印刷は、凸版印刷でした。凸の出っ張った部分にインクがのって、それが紙に写って印刷される印刷技術です。それに対して凹版印刷は、凹んだ部分にインクを残してあとは拭き取って印刷する技術です。どういう違いが生まれるかと言うと

•細いラインが可能になる

•手間がかかるし、インクも多く使うので豪華

これが、高級レストランのメニューなどが細くて読みづらいスクリプトのフォーマルで印刷されていることが多い理由です。うちは高級なんです!と言っているんです。


3-2 カジュアル・スクリプト

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これはBrush Scriptという書体です。カジュアル・スクリプトの特徴は、フォーマル・スクリプトが銅版印刷だったのに対して、その背景が筆書きというところ。


3-3 カリグラフィック・スクリプト

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さっきもでてきましたZapfinoという書体です。「カリグラフィック」とは、「カリグラフィーの」という意味なんですが、カリグラフィーがそもそも何かというと

文字を優雅にみせる手法

なんです。

動画でみるとわかりやすいかも。


代官山にあるオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)というところで香水を買うとあなたの名前をカリグラフィーにしてパッケージに書いてくれます。

https://www.buly1803.com/


フォーマル・スクリプトのように優雅ですが、カリグラフィーはカジュアル・スクリプトと同じ手描きが背景にあります。ちなみにですが、Appleの創業者、スティーブ・ジョブズは、大学を中退したあとに、好きな講義を勝手に受講していて、そこにはカリグラフィーの授業が含まれていました。これがのちにマッキントッシュに複数の書体が使えるようした仕様に反映されます。


3-4 ブラックレター・スクリプト

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これはOld Englishという書体です。ニューヨーク・タイムズ紙など新聞のロゴによく使われています。これはアルファベットのある意味ひとつの起源でもあります。というのも、印刷がこの世に生まれたのは、ヨハネス・グーテンベルクの印刷の発明のときなんですが、このとき、広く使われていたアルファベットがこのブラックレターなんです。古い文字の印象がありますが、18世紀までドイツで普通に使われていました。だからブラックレターは、手描きが背景にあるんです。

グーテンベルクは、その文字に似せて活字を作って印刷していたんです。

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Quoted from Daily Philosophy_ Happy Birthday, Gutenberg Bible!

ブラックレターには、今では使われなくなった小さいs、大きいsがありました。ということでこのブラックレターは西暦1400年ごろにその起源を遡ることがデキる書体です。


3-5 ハンドライティング・スクリプト

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これはBelloという書体です。ハンドライティング・スクリプトは文字通り、「手描きのスクリプト」です。カジュアル・スクリプトが筆書きなのに対して、こちらは、「べつに筆じゃなくても良いし」というニュアンスで現代的です。変な話ですが、カジュアル・スクリプト以上にカジュアルです。われわれ、日本人には読みづらいかもしれませんが、欧米では、文字を手書きすると普通こんなニュアンスになるので、読みづらいってことはないんです。なので、とても親しみやすい印象があります。


まとめ

スクリプトは、基本手書き。ただしフォーマル・スクリプトは、美しき手書きを元にした銅版印刷がベースになっています。意外なのがブラックレターも手書きのニュアンスのある書体だということ。カリグラフィーは、美しさを意識した特殊な技術のある書体。カジュアル・スクリプトとハンドライティング・スクリプトは、どちらもカジュアルだけれど、カジュアル・スクリプトが筆書きなのに対して、ハンドライティング・スクリプトは、筆ではない。

以上が、スクリプトについてざっくりしたまとめです。

ところで、馴染みの浅いわたしたち、日本人は欧文書体をけっこう間違って使ってしまいがちなんですが、スクリプトについての使い方の注意を少し紹介しておきます。


恥ずかしいスクリプトの使い方

スクリプトは、筆記体。手描きのものであることを意識した書体です。なので、大文字で続けて使うというのは、基本NGです。カジュアルなスクリプトならあるんですが、本来ならNGなので、見かけると「なんじゃこりゃ!?」という印象を欧米人には与えます。たとえばこんな感じ。

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さきのZapfinoという書体でくみました。こんなふうにZapfinoを大文字だけ使ったお店のロゴを見かけたことがあります。

ただしく使うとこうなります。

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追記

U は昔アルファベットになかった」という話を冒頭でしましたが、WやGやY、J、Zもありませんでした。逆にあったのに無くなった文字もあります。


欧文書体を知ろう:ディスプレイ編も追加しました。


参照


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