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【小説】あと1日で新型コロナウイルスは終わります。

~新型コロナウイルスのワクチン摂取の順番~

新型コロナウイルスのワクチン開発に世界的な期待が高まる中、2020年11月18日にアメリカ製薬大手ファイザー(Pfizer)が「臨床試験(治験)が完了した」と発表した。同社によると、ワクチンの有効性は95%。深刻な副作用もなく、今後、当局に緊急認可申請を行なっていくという。



「私たちの知らないところで、政治的な駆け引きが今激しく行われているんでしょうね?」

同僚の看護師が険しい表情で聞いてきた。

「輸入順ってこと?」

アキナは聞き返した。

「ええ。ほんとうにほんとうに安全なら、たくさんの人に早急にワクチンを打ってもらって、悲しいお別れが一人でも減るようになればいいんですけど。」

ほんとうにそれが理想的だと思った。

「これで、飲食店や観光など大打撃を受けている職業の人もあともう少しで、暖かい光が見えてきますね。」

「私たち医療従事者もそうよ。」

私たちは互いに頷きあった。

「恐らく日本では、感染症専門病院の医療従事者のワクチン摂取が最優先されて、内科や耳鼻科がその後に続き、その他の科は病院が先になり、その後、私たちのクリニックにも徐々にワクチンが届くようになると思います。まずは、理事長や院長が最優先で打つことになりますね。」

毎年、インフルエンザ予防摂取ワクチンを受けるとき、院内には暗黙の優先順位が存在した。クリニックと言えども、産婦人科ということもあり、インフルエンザワクチンは潤沢に入ってくるわけではなかったからだ。

インフルエンザワクチンの第1便が届くと、理事長、院長、その他の医師、看護師、受付スタッフ、清掃スタッフ、事務スタッフという具合に、さらに、正職優先で、臨職・派遣・アルバイト・パートがその次になっていた。

「アキナさんはもちろん、医者の次に最優先で新型コロナウイルスのワクチン摂取を希望されますよね?」

「あ、うん? まあ……」

アキナは曖昧に答えた。

「アキナさん、副作用が怖いんですか。」

同僚の看護師はアキナの顔を覗きこんだ。

「いやいや、そういうわけじゃないんだけど。」

そのとき、アキナのナース服のポケットには“白い封筒”が入っていた。

「アキナさん、時間ができたので、こちらにどうぞ。」

アキナは事務長に呼ばれると、

「ちょっと、ごめんなさい。」

同僚の看護師にそういうと、事務長室に向かって行った。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと1日。

これは、フィクションです。

(注)100作連作小説でありますが、最初からお読みの方々には以前お伝えしてありますように、『【小説】あと98日で新型コロナウイルスは終わります。』を飛ばしてしまったため、明日、『【小説】あと0日で新型コロナウイルスは終わります。』を発表し、100作連作小説を完結したいと思います

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 ▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

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 ▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)

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