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ファッショントレンドのしくみと業界構造 その2

二年ぶりくらいの継続記事になります。
この記事一回目は筆者の記事としては超ロングセラーで、寄稿から2年間も様々な読者の方に閲覧いただきました。

前回の記事は欧州のトップトレンド発信から、どのように日本のアパレル&小売業界に落とし込まれてトレンドが伝搬してゆくのか?概要フローを書きました。しかし時代が進み、日本人の生活価値観やライフスタイルの多様化でトレンド発生のメカニズムも大きく変遷してきたのです。

ファッショントレンドの発信源の拡大
ファッション業界の企画担当、バイヤー、デザイナー、マーチャンダイザーは今の時代、自ブランドの毎シーズンの商品企画構成に、相当苦慮しているのではないか?と思います。
かつてであれば売れ筋商品の販売カーブはもっとなだらかであり、ヒット商品が出ればそこから1シーズンは在庫のバリエーション追加や類似商品投入でしのげたものです。しかし現在は生活者の情報ルートが多岐にわたり、またネットのおかげで地域によるトレンドの伝搬前線の予測が難しくなりました。すなわち……

【多様化して錯綜するトレンドのソース
●Eコマースサイトやオンラインモール
●InstagramやLINE、TwitterなどのSNS
●スポーツ・レジャーやサブカルチャーなどのコトトレンド
●モデル・著名人・インフルエンサー発信
●雑誌媒体・電子書籍
●オンラインファッションメディア

といった多様な発信源が複雑に絡み合いながらトレンドが形成されます。

まずコレクショントレンドのキーワードも以下のようにチェックできるので見てみましょう。この情報を探す際のキーワードは『21AW』とか『22SS』です。AW=Autumn winter(秋冬シーズン)、SS=Spring summer(春夏シーズン)の意味でファッション業界用語です。
『21aw トレンド』で検索すると以下のような検索結果。

21AWトレンド検索

これらの記事には欧州コレクション等のトップトレンドの情報と既に国内企画されてる実売売れ筋寄りのトレンド情報が入り混じっているのですが、川上(上流)寄りの2021AWのトレンドワードを抜き出すと以下のような感じ。

ニットアップ
スキー・インスピレーション
アシッドイエロー
2000年代前半ムード
ハイ&ロー
カットアウト
スペースエイジ
プリンセス・ドレスアップ
’80年代風装飾主義
キュビズム

『なんのこっちゃわからん?』という人は以下をご参照。

キーワード『2000年代前半ムード

キーワード『キュビズム』

要はスタイリングとか素材とかアイテムに、何らかの共通のテーマを付けて発信しているわけです。上記の二つはいかにもファッション的でちょっと抽象的ですが、普通にお店にならぶ時には判りやすいアイテムとかデザインとか柄とかに落ちています。
ただ、その出所では広がりのあるコンセプチュアルなテーマを重視していること、かつコレクションとかではショー要素によって極端にデフォルメされているということです。コレクションラインと呼ばれる尖がったアイテムとそのままのスタイリングで街を歩く人は居ないですよね?

これらの上流とから落ちてくるトレンドではなく、ベタベタのボトムアップトレンドを眺めるには、今だとやはりZOZOタウンとかのオンラインモールが良いでしょう。

ZOZOのレディスランキング

ZOZOレディスアウターランキング20210922

ZOZOタウンの場合、年代×アイテムでランキング表示できるので、ジェネレーション別の売れ筋を掴むことができます。購入アイテムによってターゲット層のブレがあるので、その傾向もつかむことが可能。ワンピース・ドレスのランキングでは、比較的フェミニン志向の客層の傾向が出るし、ヤングのアウターではカジュアル志向の客層のトレンドのこなし方がイメージしやすい。

この上流発信とボトム(市場側)への適用の二つをつなぐのが雑誌による解説です。

写真はコレクションを使っているので尖っているように見えますが、テーマはアイテムや色柄に落ちているので、そのまま実売で定着しそうな商品が見えてくるでしょう。

次回に続きます。