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場面94:体育館(合唱コンクールの会場、劇中劇)、場面95:体育館(劇中劇、続けて)(音楽劇「君の名は希望」94)

乃木坂46の「君の名は希望」を題材にした舞台脚本。「透明人間」と呼ばれている女子が、お調子者の男子との出会いを通してクラスの中で居場所を作っていく物語。

希(松井)がどうなるのか気になりますが、場面は変わって文化祭の舞台の本番、ラストの場面です。舞台ならではの場面転換の妙を想像してみて下さい

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場面94:体育館(合唱コンクールの会場、劇中劇)

(舞台セットが全くない舞台上で)

翔が祖母(成瀬先生演じる)と一緒に母親の春美(藤山演じる)が来るのを待っている
翔と祖母の周りには七海に加え、真穂、遠山、岩田、久米川、有田、北村、川上、東条が翔を囲むようにいる

祖母「春美は遅いわね。翔の合唱の出番に間に合うのかしら?」
「おばあちゃん、今母さんからメールが来た。何とか来れると思うけど」
遠山「で、お母さんに合唱を聴きに来て欲しいって関谷君が頼んだんだよね」
「うん、そうだよ。ピアノ弾くし、それに友達を紹介したくて」
久米川「あれ、今私たちのこと『友達』って」
「そうだけど。まずいかなぁ?」
七海「そんな。翔君は立派な友達だよ」

その時、祖母が下手側を見て

祖母「あれ、春美じゃない。やっと来たわね」
「そうだね」

派手なメイクをした翔の母、春美がやって来る

場面95:体育館(劇中劇、続けて)

春美「いやぁ待たせたわねぇ。駅でタクシーが来なくて」
祖母「何言ってるの?もう始まるわよ。いつもギリギリで行動するから」
春美「私だって朝早く家を出たのよ。翔に会いたいでしょ」

春美、祖母の相変わらずの嫌味に食って掛かる

祖母「だから、時刻表とか確認したの?今なら携帯でも調べられるじゃない」
春美「そんなの調べたわよ。けどね、乗り換えの駅で迷って。で、相変わらず私に向かって嫌味ばっかり。何でいつもそうなの?」

翔、いつものように母と祖母が険悪になるのを見て

「だから二人とも。友達だっているんだしさ」

春美、翔の言葉に驚いた表情を見せる

春美「友達って?」
「ここにいるみんなそうだよ。母さんにも紹介したかったんだ」
春美「そうなんだね」

春美、翔を改めて見る

春美「翔はいつも店の裏で本を読んでて。でも友達が出来るか心配だった」
祖母「春美、みんなが遊びに来てくれてね。翔が今まで見たことのない笑顔を見せて。それで思ったの、お前をここに呼ぼうか、って」

春美、見たことのない祖母の穏やかな顔を見て驚く

祖母「お前を悪く言う田舎の人間からは私が守る。だから来なさい」

春美、顔を上げ祖母と向き合う

「母さん、僕はここを離れたくない」

春美、翔の方を向く

「母さんと一緒にここで毎日を大切に過ごしたい」

春美、翔の真剣な眼差しに驚く。翔は知らぬ間に大人になっていた

春美「お父さんは泣いて謝った。翔を残して旅立つのかって。その時お父さんに翔を守ると約束したのに」

七海を始めとする翔の同級生たちも皆春美に視線を注いでいる

祖母「いや私もあの人に『あなたに家庭が養えるの?』なんて言って。それであの人は必死に働いて体を壊して」
春美「お母さん、もういいよ」

春美、祖母に近づき、祖母の肩に手を置く
祖母、春美にあどけない笑顔を向ける。いつも嫌味を言う母親のよろいを脱ぐように
北村、春美と祖母に向かって

北村「あの、すみません、もう僕たちの出番です」
祖母「あら、もうそんな時間なの?春美、一緒に行く?」

春美、うなずく
祖母、春美、翔たちから離れようとする
その時有田、二人を引き止める

有田「すみません。もう一ついいですか」

春美と祖母、再び振り向く

有田「関谷君がこのまま転校してたら、そんな人がいたな、で終わってました」

同級生たち、有田の一言に呼応するように

真穂「関谷君と遊んで楽しかったんです。新しい一面が分かって」
岩田「だから黙って転校してたらと思うと怖くなります」
七海「そうです。翔君は最初私たちに心を開かない転校生でした。でも勇気を持って声を掛けて良かった。それがきっかけで私もこんなに仲間が出来ました」

春美と祖母、七海を見つめ返す。感謝の気持ちを込めて
七海、春美と祖母に席に着くよう無言で促す

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