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【アニメ感想文】『Night Walker-真夜中の探偵-』

そもそも私が『Night Walker-真夜中の探偵-』というアニメ作品に興味を抱いたのは、このアニメのエンディングを担当しているヴィジュアル系バンド、ラクリマ・クリスティ(以下:ラクリマ)の存在を知ったことがきっかけだった。

エンディングの「未来航路」はラクリマの代表曲のひとつであり、私もいまだに大好きな1曲だ。なぜ『Night Walker-真夜中の探偵-』の視聴感想文においてこの曲のことから書いたかというと、それは個人的にこのアニメと「未来航路」には両作品を知ることで推察できる魅力があると感じたからだ。その魅力については後述するため、まずはアニメ本編の感想から語っていきたい。

『Night Walker-真夜中の探偵-』は全体的に良い意味で観やすく、時折垣間見える物語の重々しさも見応えがあった。視聴した私が感じた奥深い魅力についてさっそく書いていく。

作中で吸血鬼のカインは度々「黄金の夜明け」という言葉を使っていた。この言葉の意味は恐らく、人間と作中に毎回登場するブリードという種族との間に生まれる命を形容したものである。さらに、夜明け=命、というメタファーだけでなく、本編終盤の紫藤と理保の関係性を踏まえてみると、別の解釈が可能になってくる。

それは紫藤たちを見ての通り、吸血鬼と人間、もしくは吸血鬼になった人間との「共存」の可能性の示唆である。

物語序盤の「夜明け」というのはカインが提示した人間とブリードの間に生まれる命のこと。そして終盤では元々異なる世界で生きてきた者同士の共生関係のことだと言える。後者の表現の信憑性を裏付けるひとつの要素として、先述したラクリマの楽曲「未来航路」に注目したい。曲中の歌詞の一部には次のようなフレーズがある。


【二人の影重なった この部屋は朝を迎え】


つまり、手を取り合って生きていく二人がそれまでの-夜明け-を超えたさらにその先の未来を夜明けのあとに訪れる「朝」と表現していると言えるのではないだろうか。

こう考えると、改めて「未来航路」と『Night Walker-真夜中の探偵-』の親和性の高さに驚かされる。

作中で紫藤はこのようなセリフを発している。



「俺だってヴァンパイアという役を演じているだけさ。舞台に上がる以前の自分は、何者だったのかも覚えていないんだから」



このセリフの表現のように、ラクリマも『Night Walker-真夜中の探偵-』という舞台の上でバンドとしての役割を見事に果たしたと言えるだろう。

『Night Walker-真夜中の探偵-』とラクリマ・クリスティ、お互いの魅力を引き立て合う作品に出会えたことに心から感謝したい。

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