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男を破滅させるほど夢中にさせたマノン・レスコーの恋愛術

フランス文学ほど、恋に役立つ教科書はないと思う。特にファムファタルと呼ばれる男を破滅させるほど虜にしてしまう悪女からは、学ぶことが多い。

今回ご紹介するマノン・レスコーは、ファムファタルが最初に登場した小説と言われている。

ファムファタルにも色んなタイプがおり、方程式のように型にはまっているわけではない。
私が思うに、マノン・レスコーは天然タイプではないだろうか。

なぜかというと計算高くないところがある意味魅力だったりするからだ。

その美貌から色んな男を虜にするわけだけど、好きにさせようと駆け引きをしているようにはみえない。

行き当たりバッタリで、その時の感情の赴くままに突っ走っている感じ。

この天然さの中に男を惹きつけてやまない秘密が隠されていて、そこのところを真似することができるのではないかと思ったりする。

では早速マノン・レスコーを知らない方のために、ざっくりとアラスジをお話するとしよう。

学業優秀で家柄もよく将来を嘱望されている好青年グリューは、馬車から降り立つマノンを一目見ただけで激しい恋に落ちる。

勇気を振り絞り、この場所に来たわけをマノンに尋ねてみたところ、「両親の命令で尼になるために来たのだと、そして運命を受け入れるしかない」と憂いのこもった悲しそうな眼をしていうのだ。

「何でそうなるの? 」と思ってしまうのだが、グリューは出会ったばかりのマノンを自分の力で救い出そうと決意する。そんでもって坂道を転げ落ちるように、転落人生を歩んで行くことになる。

なぜ転落しなければいけなかったのか。それは一重にマノンがお金のかかる女だからにつきる。楽しい事が大好きでじゃぶじゃぶお金を使うのだ。

マノンもグリューを愛しているはずなのに、お金がなくなってくるといとも簡単に、金持ち男に身を捧げてしまう。
自分を愛していると甘い言葉をささやき、熱い夜を過ごしていたかと思えば、次の日にはお金のためとはいえ裏切り行為をするマノン。

そんな魔性の女に翻弄され、詐欺にはじまり最後は殺人にまで手を染めてしまうのだ。

「この男を馬鹿と言わずして何というのだろう」と呆れてしまった私であるが、その気持ちがわからなくもない。

だってマノンは天然だから。お金持ちの男に寝返るのも金の亡者だからではない。ただ単に遊ぶ金が欲しいだけなのだ。

お金が底をついてきても「稼ぎが悪い」となじったりしないある意味、素晴らしい女なのだ。

裏切っておきながら、平気で愛していると囁き。あなたと楽しく生活するために仕方なかったのだと悪びれる様子もなく許しを請い何度も同じことを繰り返す。

「なんという性悪女だ! 」と誰しも思うはず。だけどどうやらいつも本気で生きているマノンに嘘はないようなのである。

ただ本能の赴くままに任せて生きているだけ。そうただそれだけなのだ。

これを天然と言わずして何と言えばいいのだろう。

この天然キャラこそが男心を惹きつけてやまないのである。

なぜかって、グリューはマノンの道楽好きからくるお金のだらしなさ、そして遊ぶお金を手に入れるためなら、平気で裏切り別人のようになってしまうという彼女の欠点を何とかしてやりたいと思い、それは自分にしかできないと思っているからである。

彼女を理解できるのも守ってやることができるのも自分だけ。そんなわけないじゃんと思うんだけど、どうやら承認欲求やら自尊心がくすぐられるようなのである。

守ってやりたくなるような女とは弱い女ではないということをマノン・レスコーは教えてくれる。

守りたい女とは自分の欠点をさらけだし、なんとかしてやらねばと思わせることができる強靭な女なのである。

私たちは大抵いいところを見せたいがために取り繕い、欠点を必死で隠そうとする。完璧を装えば装うほど、可愛げのない女になっていくことがわかっていないのだ。

マノンをみよ。浪費グセという最悪の欠点を抱えながらも、あっけらかんとしたものだ。悪びれる様子もなく、これが私なのだから仕方がないといった感じである。

欠点は余白であり、その余白を埋めることで男は自尊心がくすぐられるものなのだ。

欠点は悪ではない。それどころか可愛げであると言えるかもしれない。

マノン・レスコーという小説は何の計算もなく、感情の赴くままに行動するというその天然さが男心を捉えて離さないということを教えてくれる最高の恋の教科書である。

優等生をどうしても卒業できない方には特にお勧めの本だ。

最後に、恋の天然キャラをここまで持ち上げておいて何ですが、直観や感情だけで生きるというのは物凄くリスクがあることだということを付け加えておきたい。

その意味はマノン・レスコーを最後まで読んでいただくとお分かりいただけると思う。

#推薦図書 #フランス文学 #恋愛 #エッセイ #読書感想文

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