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72候【花鳥風月】小寒の候


ふる、ふれる、ふえて、ふくらむ、ふゆのたましい


ふゆの語源説に「ゆ」があります。
冬のあいだに行われる行事には「たまふり」から「ふる」「ふえる」という意味があり、御魂がえるので、ふゆとする説です。

それは威霊にれることでもあり、盆暮れの生身魂祭いきみたまさいから受け継がれてきた伝統が息づいているというお話は、
【ハーブ天然ものがたり】昆布 の記事にもご紹介いたしました。

「ふる」には「降る」と「振る」がありますが、どちらも冬期間に魂(たま)を人の身に密着させる手段でもあるのかなと考えています。
雪が降り、縁起物のお飾りが振れて、人の鎮魂式には外来(まれびと)の威霊(たま)は新しい力として身につき、それがまた身の内で膨らみ、広がり、分岐して、創造力となります。

平安時代には、さきに鎮魂式と祓えの式があり、旧霊魂の穢れをうつした衣を穢れと見ないで、分裂した魂と考えるようになったといいます。
そこからお歳暮に衣配きぬくばりの伝統がうまれたとも。

たましいを呼び、いれものに付着させる式をたまふりとよび、古来には鎮魂祭が行われていました。
厳冬に行なわれるその儀式は、時代とともに変化して、内在している魂が抜けたり発散してしまわないよう、たましずめという儀式になります。

恩頼と書いて、みたまのふゆと読む儀式は、コトバンクに

恩頼-みたまのふゆ
「ふゆ」は「振ゆ」または「殖ゆ」の意という。
神または天皇を敬って、その威力・恩恵・加護をいう語。

コトバンク-恩頼

と説明されています。
みたまのふゆは、枝葉をのばして分岐し、増殖したたましいを人に分けることを意味します。

冬の時期には、山びとが山苞やまづとという土産を里に持ってきた、その中に入っているやどりぎ・ほや(ほよ)は、魂を分割する(殖やす)木であると信じられていたそうです。

分岐した魂をいただくことを、のちに本霊の持ち主の護りを受けるものと考えるようになり、さらに加護から眷顧けんこ(とくべつに目をかけること、贔屓)を意味するようになったとも。

ふゆの語源説「冬-殖ゆ」については、折口信夫の「ほうとする話 祭りの発生」に興味深いお話がたくさん収載されており、参照いたしました。



寒の内入り、寒九かんくの水と七草魔法


小寒から大寒のおよそ1か月間を「寒の内」といって、この時期の水は腐らないと伝えられ、古人は薬として飲んでいました。
とくに寒の入りから九日目の水は「寒九かんくの水」と呼ばれ特別な効能があると信じられています。

寒さはきびしいながらも、冬至が過ぎてから陽の気がふえてくるこの時期は、土のなかの水に陽気が生じ、清水がうごきだし、地表にあらわれるという花鳥風月を七十二候にあてはめています。

春の七草はおかゆとして食べましょうということで、セット品になった七草が市場に出回ります。
七草粥をいただく日は、七草を浸した水に爪をつけ、指先を柔らかくしてから爪を切る七草爪という風習も伝えられています。

現在の7種は、1362年頃に書かれた『河海抄(かかいしょう)』(四辻善成による『源氏物語』の注釈書)の「芹、なづな、御行、はくべら、仏座、すずな、すずしろ、これぞ七種」が初見とされる(ただし、歌の作者は不詳とされている)。これらは水田雑草ないし畑に出現するものばかりであり、今日における七種類の定義は日本の米作文化が遠因となっている。

ウィキペディア-七草
春の七草
夏は指先ケアにハーブ水をつかいます
左からスペアミント、レモンバーム、ラベンダー
ホワイトセージ、カモミール、オレガノ、ローズマリー、タイム


七草の原点は、年の初めに雪のあいだから芽を出した草を摘む「若菜摘み」がもとになったと伝えられています。
寒の内に入った地中の妙薬ともいえる清水を含み、年明けたはじめてのの日に摘みにいき、食べる前夜にまな板にのせて、はやし歌を歌いながら包丁で叩き、つぎの朝には粥にする、と。
遊び心に満ちた、魔法の匂いがプンプンする行事だったのだなぁと感じます。

小寒の候(1月6日)から寒の内入りなので、それを区切りと数えるならば今年2023年のはじめてのの日はちょうど1月6日その日にあたります。
冬の土用に入るのは1月17日、次の日の18日は2度目の子日になります。

スーパーで七草を買ってきて、まな板にのせて自分流のライフソングを歌いつつ包丁でたたき、ラップして寒いところ(なければ冷蔵庫)へ置いておき、夜のうちに御霊(元気玉)が付くように願かけします。

1月7日の朝に粥用と指先浸し水に分け、魔力に浸された7つの草を身の内に取りこむのは口から、そして邪気を身の内から放出するのは指先から。
遊び心をもって七草とふれあうのもまた楽しいと思います。

ライフソングのところは古来、はやし歌があったそうで、ウィキには

鳥追い歌に由来しており、これは七種がゆの行事と、豊作を祈る行事が結び付いた物と考えられている。歌の歌詞は「七草なずな 唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、合わせて、バタクサバタクサ」など地域により多少の違いが見られる。

とあります。
この伝統はどこかで途切れてしまい、普遍的に広がることはなかったようですが、料理中、食材に歌を聴かせるという方法は気に入っているので、七草粥にかぎらず年中やっており、シンプルに楽しいです。

ライフソングについては【ハーブ天然ものがたり】アロエ にも綴らせて頂きました。


エネルギーはとんがった先っちょから放出されやすいので、指先から邪気を放出するイメージをふくらませながら空に向けると、即効すっきりして便利なものだなぁと感じてます。(個人的な感想です)

小寒しょうかんの候、今年は1月6日から。

芹乃栄せりすなわちさかう-冷たい流水で芹が葉をひらく
水泉動せんすいあたたかをふくむ-地中に陽気が生じ泉が湧き出す
雉始雊きじはじめてなく-雄が雌を求めて鳴きはじめる



芹の葉がひらくころ


陽気に誘われ、うごきはじめた地中の清水を最初に受けとり、芽吹かせる日本原産のハーブ、芹。
春の七草のなかで芹はとても身近な食材として、スーパーで買うことができます。学名 Oenanthe javanica 、日本原産のセリ科セリ属の多年草です。

少し田舎にいくと田んぼの横にある用水路や湿り気のある土壌で、野生種の芹をよく見かけます。
あたたかい地域では一年をとおして繁殖しています。
り合うように生えてくる植生から、セリという名がつきました。

芹は早春から摘んで食べることができますが、いちばんおいしい時期は春の深まったころで、少し赤らんだ茎(アントシアニンを含む)が四方に伸びたものを「タゼリ」と呼んで、セリハンターの方々は狙い摘みします。
それ以外の芹は「ミズゼリ」と呼んでいます。
タゼリのころは、香り成分がいちばん含まれる時期なので、特別うまいと評価されてきたのだと思います。

「万葉集(753年)」に野草の芹を摘んで食べていたことがわかる歌がのこされています。
栽培種としての一番古い記録は、平安時代の「延喜式(927年)」で、
「芹を植えうる。一反五斛二月植う」とあります。
日本では芹を煮て食べると、神経痛やリウマチに効果があると伝承されてきました。香り成分には健胃、食欲増進、解熱作用があるといわれています。

芹に含まれる水分は約90%、お鍋に入れるとあっというまにカサが減ってしまいますが、食物繊維が豊富で、β-カロテン、ビタミンB1・B2・C、カルシウム、ビタミンK、葉酸、カリウム、鉄、銅などの栄養素をバランスよく含んでいます。

セリ科の植物はハーブと呼ばれる種にとても多いです。
種類も多く、滋養成分が豊富で、香りもさまざまです。
好みの分かれるパクチー(たねはコリアンダー)、カレーのマスト・スパイスになるクミン、過去記事でご紹介した大天使ミカエルのハーブ、アンジェリカ(西洋当帰、和名・当帰)や、フェンネル、パセリ。
そのほかにもディル、キャラウェイ、チャービル、アニス、セロリ、ミツバなど少しクセ嗜好の方にはたまらん風味のオンパレードです。

セリはもっぱら葉を食べる野菜として定着していますが、マクロビオティック食事法を普及する団体に数年お世話になった時期があり、そのとき芹の根を天ぷらや酢の物にして食べるレシピを教わり、いまもできるだけ美味しそうな根がついた芹を選んで購入しています。

セリ科には、春のころには芹と見分けがつきにくい猛毒をもつドクゼリも自生するので、にわか摘みは控えた方が安全です。芹にしてみれば、あっという間に食べられて絶滅しないよう、色々と工夫してきたのだろうと思います。


太陽は山羊座後半です


小寒からの太陽は山羊サイン後半にあります。
ものごとを形成する、カタチを保つ、維持する山羊座のはたらきは、内面に満ちあふれる生命力の保護膜が強化される時期と考えることもできます。

恩頼みたまのふゆは、振り、触れて、殖える季節。
内面の力がふくらみ、コンスタントにエネルギーを増強するためには構造強化のための秩序や制限も必要となります。
外枠をしっかりさせて、高エネルギーを維持、循環させるのが山羊座の目指すところです。

山羊座前半ではハイグレードなものやマニアックともいえるハイレベルな物事への興味関心が強まり、どちらかというと閉鎖的な環境で生命力を高め、特権や優待、優遇されるポジションを獲得したい心理がクローズアップされがちです。

恩頼みたまのふゆから、分岐した魂をいただくことを、のちに加護へ、眷顧けんこへと意味を変化させてきたことも、山羊座心理と同期をとってきたかのようにも思えます。

山羊座後半からは自身の実力を客観視しつつ自己統制するという、かしこでクレバーな山羊座ワイズマンが腕を振るいます。

冬至の候からの山羊座前半に、山羊の執事がハイレベルな「たま」を選出し、身の内に隙間なく詰め込んでいった結果、後半はその新しく仲間になった「たま」と一緒に、花を咲かせる場所を決める、という感じでしょうか。

環境によって花や実の付き方には変化が出るので、ここは慎重に居心地の良い環境を獲得したいところですが、地上的象徴物に反映された「場所・環境」は有限であり、有限なものを得るためには争奪戦があり、決められたルール内での競技参加が必要となります。

現代版の決められた競技場でのルールは、忖度、裏切り、買収、恐喝、なんでもありになっていて、いくら肉を切らせても骨を断つどころか、そもそもデキレースだったわ、なんて結末も珍しくはないありさまで…
勝ち負け判定される競技という世界線では、モチベーションを維持することさえ困難に感じることも多々あると思います。

植物界にしろ動物界にしろ、自然淘汰や弱肉強食はさけて通れぬ、地球競技場の基本ルール、とくに優れた得意技をもつ種は、毒針をもったり、麻痺させる香りを放ったり、猛毒を持つ同じ姿形の種を繁栄させたり、小さく小さく切り刻まれた根っこの切れ端から再生する能力を獲得したりと、さまざま工夫しています。

山羊座社会で真剣勝負をするというのは、けっこう恐ろしいことだと思っています。相当の覚悟がなければ、あるいは無知のまま楽観的にポンと飛びこまない限り、土俵にあがるのはむずかしいような気もします。
土俵に上がってからは、烏賊いかがじっくりスルメにるようなプロセスを地道にすすみ、やがてそう簡単には腐らず破れず、しかして噛めば噛むほど味わいのある実体に変化してゆく(せざるを得ない)道が待っています。

それでも競争することに意義を見出し、敗北した心理と勝利した心理、そのプロセスと葛藤を味わいつくすために、地球競技場はセットされたのかな、とも考えています。
競り合うように成長する芹を、山羊座の花鳥風月と定めた古人は、占星学も学んでいたのでしょうか?

いずれにしても勝ったり負けたりの競争心は(コトバにすると陳腐なものですが)大きな努力や、たゆまぬ集中力、勝負に出るタイミングや、引くべき時を学ぶのに役立ちますし、なんといっても自分の実力を客観視して、自発的に自己教育、自己管理する能力を手堅いものにしてくれると感じます。

獲得した場所・環境で目いっぱい花開き、実を結実させることができれば、必ず次の扉が開きます。
人によっては地球競技場でのプレイには飽き飽きして、次のフェイズへ行きたいと考えるようになるでしょうし、いんやまだまだ地球競技場マスターの道を極めたる、と考える方もいらっしゃると思います。


小野不由美さんの十二国記は、12の王政国家を舞台にくり広げられる異世界ファンタジーですが、聖獣麒麟が天意をあらわす軸となり、ウィキには

政治を行う王、理想や野望を抱く官吏、市井の民などの多様な立場の人々が、過酷な運命のもとで必死に生きる姿を描いた骨太の物語である。
新潮社の担当編集者は「全編に貫かれているのは、生きることの難しさと如何に対峙していくかであると思います。」と述べている。

ウィキペディア-十二国記

とあります。


原作もアニメも舐め尽くすように楽しみましたが、天意というルールから外れた王を選んだ麒麟は、死の病に倒れ、使役してきた妖魔に食われる最期を迎えます。

我こそが次の王に相応しいものである、と、志あるものが大勢、麒麟に拝謁するために聖なる山に登ったり、王に認められて不死となった仙や官吏が慢心したり生に飽いたり、逆に不死たる王族から市井の孤児となったものが自らを律し成長していくさまなど、山羊座成分がたらふく詰め込まれている物語だなぁと感じています。

十二国記で麒麟に拝謁する立候補者が、自分はこんな国をつくりたいとプレゼンするシーンは、いかにも山羊座ぽいなぁと思いました。
場所・環境を獲得するまでの競りあう物語も壮大ですし、じっさいに獲得したのち、預かった場所・環境をどのように管理・運営できるのか、腕が試される物語はさらにスケールが大きくなります。

山羊座後半の活動テーマは場所性、環境の確保と維持、運営です。
その象徴は肉体であり、住む家であり、はたらく場所だったりします。
一時的にあずかっている地球の一部を、豊かにするために人が担う役割はけっこう大きいと思いますし、献身的に尽くす心もちは必要最低限の条件のようにも思います。

それはひとつの国を運営するようなもので、水や火や、風通しのインフラを整え、食べ物、教育、流通、貿易、いろいろなことを総合的・有機的に行う必要があります。
もしも麒麟がいたらと夢想しつつ、麒麟を病ませず弥栄を祈りつつ、少なくともこの肉体の王として、今年も日々精進してまいりたいと思います。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
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