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2020.12.14 眉村ちあき日本武道館LIVE「日本元気女歌手〜夢だけど夢じゃなかった〜」の輝き

気鋭の弾き語りトラックメイカーアイドル、初武道館を配信で視聴。世に出て以降、不調な時期を見たことなかった彼女、ライブのできない今年はさすがに参っている部分も顔を覗かせていたが、年の瀬にどでかいのを持ってきた。ジャングルを模したセット、ニンテンドー64っぽいオープニングVTRを経て、黒マントを羽織った眉村ちあきが現れる。1曲目は「冒険隊~森の勇者~」より。初めて外部アレンジャーを招いた曲で雄大に幕を開けた後、続く「顔ドン」では早速トロッコに乗って会場を廻ろうとする、、と登場するのは眉村の実母。実母がトロッコに乗って観客に挨拶をして回る、少なくとも2曲目でやる演出ではないことは確かだが呆気に取られているうちに「ナックルセンス」。<僕ら真っ暗にされたって踊ることはできる>という言葉、さっきまでの爆笑はなかったかのように泣きそうになってしまうのだが、最後にはフライングを披露。またしても3曲目でやる演出ではない。本人も「前半に畳み掛けすぎなんだよ」と呟き、理解しつつやっているのがまた楽しい。

「リアル不協和音」からはしっかりと聴かせるブロック。今田耕司に向けた歌を美しく仕上げた「マーメイドボーイ」はモニター演出によって水中にいるような演出を施す。「夕顔バラード」では画面がモノクロに移り変わり、楽曲のやりきれない世界観を体現。ウェルメイドなポップス職人でもある彼女、ストレートプレイも武道館の大舞台で堂々とやり切る。そんな感慨もよそに「おばあちゃんがサイドスロー」ではバキバキのトラックの中へ誘い、頓珍漢なダンス空間を生み出していく。彼女のライブと言えば、コールで成り立つような曲も多いがこの日は叫ぶことは許されない状況。そんな折を逆手に取り、「シュビデュバ・オブ・クラティー」では観客にエア壁ドンを求める。ここでは突然のピアノソロも披露するなど、いったいどこに小技が仕込まれてるかが分からない。「手を取り合うからね」ではキッズダンサーが登場し踊り出すという、実に彼女らしく正しい試みもあった。そして第1部は夢の舞台をしなやかな舞踊と共に彩る「夢だけど夢じゃなかった」でシメ。

換気タイムを経て始まる第2部は、弾き語りメドレーから。強いメロディを持った曲たち、当然のようにアコギ1本でも映える。トラックを流して歌うのが主で、アコギのみで歌うのはトラブルが起きた時のみ。しかしここで見せつけた一連は急ごしらえの域を超えた見事なパッチワークだった。そしてスタンドマイクで大事そうに歌われた「Dear My Family」、駆け付けたファンに向けて放たれた「本気のラブソング」、そして音楽そのものへの愛をぶつけた「音楽と結婚ちよ」、この特大の"好き"が降り注いだコーナーはハイライトだろう。涙ぐみながら歌う姿が印象的だった。新作より映画タイアップも付いた「36.8℃」では雲海が焚かれ、雪が降るというスケール感ある演出。その後、切り株に座り春を告げるような「やさいせいかつ」が軽やかに鳴るとまるで彼女の祈りかと思ってしまう。「偏差値2ダンス」では作曲とコーラスで客演したWienners玉屋2060%が突風のように参加し、スペシャルなライブとしての項目もしっかり満たしながら、ライブは終盤へと向かっていく。

ようやくトロッコに乗って歌い出すのは「ビバ☆青春☆カメ☆トマト」だ。ライブでは祀り上げるようにして狂騒を生むカルトソング、接触がない代わりにフロアを周遊しながら心の距離を埋めていく。ステージに戻り、過去に路上ライブで言われた暴言やスタッフとの喧嘩を振り返りながら武道館の感慨を語る。「等身大の眉村ちあきが一番魅力的だと思う」という頼もしいエンパワメントもかました後、彼女の名を知らしめるきっかけとなったゴッドタン発の名バラード「大丈夫」がクライマックスを作る。声を震わせ、いつもは完璧な歌唱が僅かに崩れる瞬間もまた美しかった。アンコールでは父親も巻き込んでの小芝居から、ジャンプアップ×2、太鼓の達人的な拍手ゲームを山盛りにした「奇跡・神の子・天才犬!」と、アンセム「ピッコロ虫」を披露。<明日 朝起きたら 眉村ちあきのまんまがいいなぁ>という歌詞変が全てだろう。彼女の輝かしい人生の、現時点での最高輝度。けどきっともっと輝く。こんなしんどい世界でも、彼女がはしゃげば笑えてしまうんだよな。

<setlist>
第1部
1.冒険隊~森の勇者~
2.顔ドン
3.ナックルセンス
4.リアル不協和音
5.マーメイドボーイ
6.夕顔バラード
7.おばあちゃんがサイドスロー
8.シュビデュバ・オブ・クラティー
9.壁みてる
10.手を取り合うからね
11.夢だけど夢じゃなかった
第2部
12.弾き語りメドレー(顔面ファラウェイ~ツクツクボウシ~チャーリー~荻窪選手権~顔面ファラウェイ~I was born in Australia~東京留守電話ップ~緑のハイヒール)
13.Dear My Family
14.本気のラブソング
15.音楽と結婚ちよ
16.36.8℃
17.やさいせいかつ
18.偏差値2ダンス
19.ビバ☆青春☆カメ☆トマト
20.大丈夫
アンコール
21.奇跡・神の子・天才犬!
22.ピッコロ虫


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