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ギターロックのすべて〜Base Ball Bear×ASIAN KUNG-FU GENERATION@2022.8.26 Zepp Osaka Bayside

伝説の夜だった。Base Ball Bearが今夏開催した対バンツアー「I HUB YOU 3」、その大阪公演に招かれたのがASIAN KUNG-FU GENERATIONだった。ともに下北沢のギターロックシーンでの出自からは20年以上、メジャーシーンを駆け抜けて15年以上のキャリアを持つ2組。互いへの同志としてのリスペクトとその歩みをこれでもかと見せつけるステージングは何もかもが素晴らしく、ずっと大切なベボベとアジカンの存在を自分の中で更に確固たるものにした夜になった。もらったエネルギーの量が莫大すぎてこの日はほとんど眠れなかったほどに。筆圧強めの5000字超、お付き合いください。


19:00- ASIAN KUNG-FU GENERATION

ツアーと同じく、アチコ(Cho)とGeorge(Key)を招いての6人編成にて登場。1曲目でいきなり「Re:Re:」を鳴らして驚く。今夏のフェスでだいぶ独特な選曲をしてきたと噂になっていたこともあり、人気曲からの幕開けであればどうなってしまうのかとワクワクする。そして間髪入れずに「リライト」なのだから沸き立つしかない。今やワンマンでは定番でもなくなったし、アジカンが出るイベントにはあまり行かないので「リライト」をライブで聴くのはもしかしたら3年ぶり?聴き慣れきった巨大なロックアンセムもコロナ禍を超えて轟くと胸が熱くなる。マスクの下で静かに消してリライトした。


イントロでフロアがどよめいた「ソラニン」。ここまで3曲、大盤振る舞い。様々な感情を引き出すアジカンの培ってきたギターロックの醍醐味を食らえる。また大型フェスでこのようなセトリせず、世代の近い後輩バンドとの対バンで自分たちの歩みを追想しているかのような選曲をしたのはとても粋だと思った。ここで挟まれたMCでは後藤正文(Vo/Gt)がベボベとの付き合いの長さを語る。2002、3年頃に新宿ロフトで学生服姿でやってきたベボベを観たこと、タバコの絵のジャケットのデモCDをもらい未だに持っていること、当時のベボベのキラキラ感にやられてたこと。初めて聴く話ばかりだった。


そんな歳の差も「60歳過ぎたらただのジジイ」とリアム・ギャラガーの言葉を引用して笑い飛ばすゴッチはとても微笑ましく、年齢という記号に囚われない今のアジカンを象徴する場面だった。そして同窓会のようなMCの流れで最新アルバムから「You To You」を歌うのも最高だ。ただ無闇に懐かしさや“あの頃”感だけでやり切らないこのスタンス。楽曲としても、温かな調和と緩やかな連帯がテーマであるためこの「I HUB YOU」というツアーコンセプトにもしっくり来ていた。《ミュージックというディスカバリー》を続けてきたアジカンとベボベの初ツーマンという舞台だからこそ一層の輝きがあった。

山田貴洋(Ba)の前にシンセベースが置かれて静かに始まったのは「触れたい 確かめたい」。アチコとデュエットで織りなす歌唱形態やダンサブルなサウンドデザインなど今のアジカンのモードをじっくり味わえる。そして続いては来月リリース予定の新曲「出町柳パラレルユニバース」。こちらはアジカンが初期から希求してきたパワーポップを今の鍛えあがったグルーヴで更新した1曲。新曲ではあるが即座に観客を反応させるキャッチーかつドライブ感溢れる楽曲で、それこそ新宿ロフトでデビュー前後から大切に築いてきたアイデンティティも未だに磨き続けていることが分かる。風格が桁違いだ。


最後のMCでのゴッチの言葉もグッときた。アジカンもベボベも職場や学校ではそこまで人気はないがこうして全国から集うくらいには多くの人に刺さっているバンドだということ。何万人単位は無理でも音楽でならば何千人からなら共有できるものがあること。ゴッチが少し口ずさんだ「CRAZY FOR YOUの季節」がどんな季節か分かんなくても何か“わかる”ということ。この日の観客の盛り上がりがこれらの言葉の証明だ。そのかけがえない感覚をともに紡ぐ同志に向けたような「荒野を歩け」は眩しく力強かった。喜多建介(Gt)のギタープレイは絶好調にも程がある。彼はやはりアジカンのエンジン。


最後を告げる挨拶とともに伊地知潔(Dr)が例の四つ打ちを鳴らし始めれば「君という花」である。アジカンとベボベの音楽性を強く繋げる要素の1つである“ギターロック×四つ打ち”。アジカンが開祖となり、ベボベがそこにスピード感を加えて進化し、その後2010年代以降のシーンに与えたのは有名な話だろう。このライブにおいて鳴る「君という花」は確かな誇りとして伝わったし、角度や手法は違えども”ポップでもある“ことも重要視してきたバンドとしてその矜持を共有しているようにも聴こえた。この日、アジカンが駆け抜けた50分。何度も聴いた楽曲がここまで違う意味を帯びるのかと感嘆。

<setlist> 
1.Re:Re:
2.リライト
3.ソラニン
-MC-
4.You To You
5.触れたい 確かめたい
6.出町柳パラレルユニバース
-MC-
7.荒野を歩け
8.君という花



20:01- Base Ball Bear

XCTのSEに乗せて3人がステージイン 。1曲目が「senkou_hanabi」でかなり驚く。アルバム未収録の曲で去年の夏ツアーでも披露されてはいたがまさか今年もセトリに入っているとは。個人的にはROCK IN JAPAN FESTIVAL.2014ぶり。あぁそういえばあの時はアジカンがトリで「透明少女」を演奏していたな、、と夏の風景を思い起こすこの曲に合わせ僕もあれこれ思い出してもう感極まっていた。そんなこちらを殴打するように「真夏の条件」が鳴らされて熱気が噴出。3ピースの骨太なサウンドと歌謡メロディ、「ギター俺!」と小出祐介(Vo/Gt)がソロを弾く間奏などアジカンとの対比が浮かび上がる。


ここでMC。アジカンに対しての尊敬の念や初めて共演した時のエピソード、さらにその新宿ロフトのタイムテーブルまで詳細に語られ、この対バンへの解像度をかなりあげていた。「アジカンこそがロック・イン・ジャパンだ」という至言も飛び出し、この対バンがいかに彼らにとって感慨深いものかがつぶさに分かった。そんなMCを経て歌われるのは「short hair」だ。この曲はベボベがアジカンに憧れインディーズ期を過ごした下北沢のギターロックをイメージしながら2011年に作られた1曲。そう思って聴くと、戻れない青き日々と現在地のコントラストによって一層に心を揺さぶってくれた。


この日、夏がテーマの楽曲を多数披露したベボベ。バンドにとってひとつのトピックスであり続けた夏を様々な形でプレゼンしていくのもアジカンとの対バンという大舞台に相応しいバンドらしさの発露だろう。そんな流れでプレイされた「Summer Melt」は3ピースになってからの曲でここまでのキャッチーさからは距離を置き、淡々と感傷を募らせる曲。またソリッドな音で切なさを歌う「海へ」もシリアスで物憂げな魅力が全開。夏の余韻や悲しみを新機軸なサウンドで聴かせるこの2曲。夏や海というこれまでも多く扱ってきたテーマだからこそ、バンドの経験値がよく伝わってくる意義深い選曲だ。

次のMCでもベボベが浮き足立っている様子が伝わる。そして音楽的探求でファンを篩にかけてきたという共通項や、2組とも「SCHOOL OF LOCK!」にレギュラーラジオを持ち10代に支持されたことで“青春時代のバンド”と括られがちであることに触れていた。故に今、現在進行形で続いている姿を観ている我々を「マイプレジャー」と讃えた一連の話は今までベボベのライブで聴いた言葉の中で最もストレート感動的だった。「久々に観る人たちにも今のベボベをぶち込む」という心意気で披露された最新曲「DIARY KEY」のエッジーな鋭さはいつにも増していたように思う。太くて強い、鋼鉄の音だ。


ここからは必殺のナンバーが続く。2009年の「LOVE MATHEMATICS」、フロアライクな威力は未だに健在。”速い四つ打ち“のクラシックとしての機能的な耐久力をじっくりと思い知れる。その攻撃性を引き継ぎ関根史織(Ba)のベースラインで始まる「Stairway Generation」でもうひと沸かし。しかしこの曲が2009年当時の小出のもがきを体現した楽曲だということを考えるととても深みのある選曲に思える。先のMCで「やっと最近自信がついた」「アジカンと対バンするに相応しくなったんじゃないか」と語っていた小出が歌う《僕はどこに?僕はここにいる。》は切実かつタフな証明として耳に残った。


最終盤、ここで「祭りのあと」が繰り出される。先程のアジカンのセトリを「ハンバーグ→冷やし中華→ハンバーグ」だと形容していたが、ベボベも負けじと最後はガッツリとハンバーグだ。堀之内大輔(Dr)の乱れ打つビート、大団円に相応しい強烈なグルーヴ!ここでシメでも全くおかしくない高揚感ではあったが、最後に間髪入れず「BREEEEZE GIRL」でとびきりの涼風を吹かせてくれた。バンドとしての魅力であるアッパーな疾走感をどれだけ時を経てもも今の武器として磨き続ける姿。これはアジカンとベボベに通ずる部分だろう。声を出したくなる曲だがぐっと我慢し、本編は終了となった。




鳴り止まぬ手拍子の中、ステージには機材が1セット運ばれる。再度登場したベボベが、アンコールのお楽しみコーナーを説明。パターンA:ゲストのカバー、パターンB:ベボベとゲストでベボベ曲の演奏、と予告をしたうえで、アジカンからギタリスト喜多建介を呼び込み、4人でアジカンカバーというパターンCだと伝えられ超ブチあがる。2日前に共通のレコーディングエンジニア中村研一氏を通じてこのセッションが決まったと話しそのスピード感にも驚いたが、小出が「最後に特大のハンバーグを」と伝えて始まったのが「ループ&ループ」だから驚嘆が止まらない。あのイントロを4人が奏でてる!

四つ打ち、キャッチーなリフ、ポップなメロディ。人によってはロックとは程遠く感じる曲だろうけど少なくともここにいる僕らは最高のギターロックアンセムとして抱きしめてきた。この日、自分達のギターロックを信じ続けてきたベボベとアジカンがこの曲の《君と僕で絡まって繋ぐ未来/最終形のその先を担う世代》と歌ってしまうのだから涙せざるを得ない。これがギターロックのすべてだと思ったし、未来永劫閉じることのないギターロックの希望だと思った。4人が呼吸を合わせ、徐々に曲が引き締まっていく様もこれぞロックバンド!時代遅れなんかじゃない、人力が為せる奇跡だった。

万感の思いで仕上がった伝説の1日。その最後に、「また来年の夏もまた会えますように」と小出が告げて始まったのは「PERFECT BLUE」。アジカンとベボベの共通項としてこの記事でも書いたが、“別れの瞬間/終わりの刻への自覚的な目線“というものがある。「PERFECT BLUE」は隠されてはいるものの実はベボベの中でも屈指の“別れ”を強く感じる1曲だがこの日は初めてその表立った爽快感や再会のテーマとしての部分が色濃く胸に突き刺さった。この曲がこんなにも晴れやかな想いをくれるなんて、予想もしなかった。この届き方もまた、アジカンとベボベが共演したからこそ生まれたものだろう。

<setlist>
1.senkou_hanabi
2.真夏の条件
-MC-
3.short hair
4.Summer Melt
5.海へ
-MC-
6.DIARY KEY
7.LOVE MATHEMATICS
8.Stairway Generation
9.祭りのあと
10.BREEEEZE GIRL
-encore-
11.ループ&ループ(with 喜多健介)
12.PERFECT BLUE


MDに大事に保存してきた記憶、通学路に聴きながら抱いた種々の感情、各地で観たライブの瞬間。記憶を絡め取りながら肥大していった思い出たちを噛み締めるような日になるかと思いきや、アジカンもベボベもそういうノスタルジーを凌駕する“今”の凄みを叩き込んでくれた。常に変化しながら、しかし芯を持ちながら、着実に重ねてきた歩みの交差点に立ち会って思う。2組の音楽を10代の欠片や同窓会カラオケの素材だけにするのは勿体無いと僕は強く言いたい。こんなにも刺激的で魅力的なギターロックのすべてを鳴らし続けるバンドなのだから。青春を超え人生に必要な2バンドなのだから、と。

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