つやちゃん

文筆家。音楽誌や文芸誌、ファッション誌などに寄稿。著書に、女性ラッパーの功績に光をあて…

つやちゃん

文筆家。音楽誌や文芸誌、ファッション誌などに寄稿。著書に、女性ラッパーの功績に光をあてた書籍『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』(DU BOOKS)等。 プロフィール画 illustration:hakuro background:freepik

最近の記事

【創作】2045年から見たRed Velvet『Perfect Velvet』

2045年に、地球はまだ滅びていないと言える? 私がはくろさんに出会ったのは、2023年11月に開催された大規模のデザインフェスタでした。約6,500の出展者の作品に目を通し、そのタッチがどれも何種類かの画一化された傾向に分類されることを確認した中で、小さなブースにて光る才能を醸し出していたのが彼女だったのです。 テキストとイラストの相互関係を信じてみたかった私たちは、共同制作をはじめました。未だはくろさんの素性はよく知らず、どこで何をしている人かも分からないのですが、ことば

    • 『オルタナティヴR&Bディスクガイド』刊行にあたって

      この度DU BOOKSさんから、書籍『オルタナティヴR&Bディスクガイド—フランク・オーシャン、ソランジュ、SZAから広がる新潮流』を刊行いたしました。雑誌の特集の企画・監修はこれまでもありましたが、書籍の監修というのは初めてです。DU BOOKSの編集者である小澤さんからお話をいただいたのは2023年の9月頃。そのあたりの話は、書籍のあとがきに記したので一部引用いたします。 近年のグローバルにおけるポップミュージックの動向を見ていると、SZAの大ヒットやBeyoncéの歴

      • KUVIZMさんミニインタビュー

        ――最近はどのくらいのペースでトラック制作をしているんですか? KUVIZM:ペースは落ちています。なぜかというと、最近は毎年アルバムを作っていて、そうすると作り込みの時期が必要なんですよね。ビートを作ったあとにレコーディングしてミックスして再アレンジをして……となると時間を要してしまう。本音では、ミックスを外にお任せしてビートメイクに集中したいという気持ちもありますけど。今また次のアルバムも作りはじめているので、どうしても時間はかかってしまいますね。 ――今も作ったビー

        • 柴田聡子インタビュー 飛躍のアルバム『ぼちぼち銀河』で本格導入したDTMの「雑感」を訊く

          昨年リリースした6枚目のアルバム『ぼちぼち銀河』が反響を呼び続けている柴田聡子。すでにキャリア10年以上を数えるが、音源を重ねるごとに作風は変化を見せ、いよいよ彼女でしか表現し得ない唯一無二の音楽が生まれつつある。実はその変化の大きなポイントとなっているのが、数年前から取り入れ始めたといういわゆる「打ち込みサウンド」へのアプローチ。そもそもなぜ柴田聡子はDAWを導入したのか、どのように曲制作に活かしているのか、これまで明かされることのなかった制作の裏側をDTM視点で探ってみた

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          MINAKEKKEインタビュー ミステリアスなそのアーティスト像を探る

          MINAKEKKE(ミーナケッケ)は、不思議な音楽家だ。弾き語りアーティストとしての活動を経て、2017年に『TINGLES』でデビュー。UKロックの新人として聴いたとしても誰も疑わないであろうサウンドで、当時謎めいた魅力を発していた。インディ/オルタナ系のバンドはこの何年かで海外とのサウンドの違いがほとんどなくなってきているが、2017年時点でリリースされた『TINGLES』は、今思えばそれらに先んじて放たれた一枚だったと言える。 その後、彼女の作風はEP『OBLIVI

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          Risa Taniguchi インタビュー 初クラブでの衝撃からDJ活動を経て探し続ける「刺激的な音」

          日本のみならずアジアを代表するDJ/プロデューサーとして、近年めきめきと頭角を現しているRisa Taniguchi。彼女の活動で注目すべきは、やはりテクノの本場であるヨーロッパにおいての存在感であろう。そのプレイはアムステルダム・ダンスイベントやヨーロッパ・ツアーといったライブ出演だけでなく、スペインの〈Clash Lion〉からEP『Ambush』を発表し、Pan-Pot主宰の〈Second State〉、Dense & Pika主宰の〈Kneaded Pains〉などの

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          Sakura Tsuruta インタビュー エレクトロニックミュージックに取り組む必然性と、シーンにおけるジェンダーギャップの現在

          あなたは、2022年の末にSakura Tsurutaが初めてリリースしたアルバム『C/O』を聴いただろうか。強力なビートにアンビエントが絡んだ、鋭いけれど柔らかい8曲。リスナーをひとつのストーリーへといざなう本作は、素晴らしい強度を誇る一枚としてエレクトロニックミュージックの早耳リスナーを虜にしている。 Sakura Tsurutaは、アメリカでバークリー音楽院の音楽療法科を卒業した後に音楽療法士として働き、その後またバークリーのElectronic Production

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          rowbai インタビュー レーベル〈LOW HIGH WHO?〉所属、謎に包まれたトラックメイカー/シンガーソングライターの思考に肉薄する

          形容しがたい、凶暴さと安らぎ。言語化しようとした途端にするすると言葉の間をすり抜け空中に霧散してしまう音楽。近年早耳のリスナーの間で話題を呼んでいるrowbaiの作品は、決して捕まえることのできない音の戯れとして、ゆらゆらとアンダーグラウンドシーンを浮遊し彷徨ったままだ。とりわけ、2021年にリリースされたEP『Dukkha』は衝撃的だった。本人は自身の音楽について「ナイーブな音楽」と説明するが、もしそうであるならば、「ナイーブ」の背景にある作家性をどうにか紐解き分解していき

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          中村さんそインタビュー 音楽も人生も肯定するコンセプト「カワイイ×ポップ」を深掘りする

          「カワイイ×ポップ」をコンセプトに掲げ、Soundcloudを中心に大きな支持を集めているシンガーソングライター・中村さんそ。DTMを駆使してのトラックメイキングをゼロから始め、コンスタントにアルバムやEPをリリースし続けることで着実にビートは研ぎ澄まされ、世界観も確立されてきている。 アンダーグラウンドシーンにおいて「カワイイ」をテーマにしたアーティストが多くひしめく中、なぜ中村さんそは独自のポジションを築けているのだろうか? 楽曲制作の方法はもちろん、彼女にとっての「カ

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          e5インタビュー 「私には絶対に凄い曲が作れる」――ボカロ・邦ロックの影響からラップシーンに躍り出た新世代のカリスマの現在地

          近年再び熱い盛り上がりを見せている、SoundCloudを中心としたラップシーン。従来のヒップホップとハイパーポップがクロスオーバーしはじめたのが2020年頃で、最近はそうした土壌の上で多種多様なビートが影響を与え合い、リアルの場でのイベントの熱気も絡み合いながらさらなる拡大と熱気を帯びている。 e5(えご)は、そんなシーンで最も注目を集めているトラックメイカー/ラッパー/シンガーのひとりだ。ジャンルレスなビートに、抜群のラップスキル、ムードを変える力を持つ歌唱。多彩なコ

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          TORIENAインタビュー 「音楽は天命」――10年の活動でさらに自由を獲得したサウンドクリエイターの今

          女性のトラックメイカーを紹介する本インタビュー企画。前回お話を伺ったuyuniが「昔から好き」とラブコールを贈っていたのが、この道10年選手のTORIENAである。デビューは2012年、その間リリースしたアルバムは実に8枚。私立恵比寿中学はじめ様々なアーティストやアニメ、ゲームへの楽曲提供も幅広く行っており、数少ない女性のトラックメイカーの中でも最も息長く活躍しているひとりである。TORIENAはデビュー直後からチップチューン界の若き旗手として注目を浴び、当時盛り上がっていた

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          uyuniインタビュー「バンドやネットカルチャーもルーツに持つ、多才な女性トラックメイカーの現在地」

          uyuniは、今の日本の音楽シーンでも稀有な存在だ。数少ない女性のトラックメイカーとしてトラックメイクやリミックスを手がけながら、自らリリックを書き、歌う。時にラップもする。作曲過程においてはギターも弾く。 立ち位置も独特で、いわゆるSoundcloud以降のエモラップ~ハイパーポップシーンでリスナーをつかみながら、そもそもSALUの「RAP GAME」リミックスで注目を浴び本格的なキャリアが始まっている事実から分かる通り、ヒップホップシーンともゆるく繋がりつつ活動を続けて

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          櫻井敦司さんの訃報によせて

          不思議なことに、私がBUCK-TICKを聴くとき、必ずと言っていいほどその音は櫻井敦司の映像とともに再生されていた。聴覚と脳と視覚が瞬間的につながることで櫻井敦司のあのたたずまい、身振り、所作、表情、全てが一瞬にして想起され、音楽が「イメージの櫻井敦司から」鳴らされた。そんなのよくある話だよ、と思うかもしれない。確かに、音楽を聴いていて何かしら景色が想起されるというのはよくあることだ。ただ、私におけるBUCK-TICKを聴くという体験は「音楽を聴くことで景色が想起される」とい

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          新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』

          醒めやらぬ感動を書き殴るべくいつもの通りnoteを開いたのだが、今回は新国立劇場バレエ団の『白鳥の湖』全幕上演について。2021年のピーター・ライト版の再演ということで、6月10日から18日にかけて7日間に渡って公演中である。連日twitterのアートカテゴリのトレンドに「白鳥の湖」が現れるという盛り上がりを見せているが、私が鑑賞した6月11日13:00~の回も満席で熱気を生んでいた。 実は初日の米沢唯&福岡雄大の回に行こうと思っていたのだが、チケットを手配したのが二か月ほ

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          2022年7-12月Works

          2022年下半期の全作品と振り返りコメントです。 【書籍】 ◆【共著:『現代メタルガイドブック』(P-VINE RECORDS)】 和田信一郎 a.k.a s.h.i.さんからは日頃大いに刺激を受けているが、何よりも共感するのは、メタルを起点にしつつ彼が意識的に広げている俯瞰的な視座。ポップミュージックからの視点をメタルに還元しながら――逆も然り――常に対象に迫ろうとするまなざしに学ぶことが多い。メタルとハードコアは自分の大切なルーツの一つなので、そういった点でもこのジャ

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          笑えない喜劇――プルカレーテ×佐々木蔵之介『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』の素晴らしさ

          池袋は、いつ行っても殺伐としている。 『リチャード三世』以来、五年ぶりとなるプルカレーテ×佐々木蔵之介のタッグ。11月23日から東京芸術劇場で公開されている『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』は、音楽や美術が渾然一体となったプルカレーテ組の作家性みなぎる演出がヴィヴィッドな表現で迫ってくる、素晴らしい舞台だった。 様々な対比関係が見られた。舞台を仕切っていた簡素なセットがひらひらと風に揺れ、その狭い空間を貧相な格好のドケチ主人公・アルパゴン(佐々木蔵之介)が歩き回る。けれど

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