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短歌

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詠んだ短歌をまとめています。
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短歌 25首連作『ある週末』(第3回U-25短歌選手権応募作改作)

短歌 25首連作『ある週末』(第3回U-25短歌選手権応募作改作)

ある週末/白川 侑

空からは腕を引かれてあいさつがしたくなる朝、リモネンの朝

新作のスニーカー履いて作用反作用が小さくなった惑星

口紅の味が好きです生活の味がするから火になれるから

点滅を見送り立ち止まる私、駆けてく昨日までの私

素肌まで晒したみたい透明のケースに隠そうとした執心

本来はガソスタだった建物にコンビニのコスプレが似合ってない

肌を焼く日差し 鼻腔が思い出すシーブリーズと

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2024年上半期自選短歌10首

2024年上半期自選短歌10首

いっせいに大人の服を着せられて時間をかけて着こなしていく

はぐはぐとビッグマックをほおばって強がるための栄養とした

ビルだけが燃えていく朝 いつものように制服のボタンをとめる

「マイペースなあなたらしくていいね」って10%くらいの肯定

ジャスミンが香るさみしいカルピスをテトラポッドのうえで飲む夏

なんとなく作ってあげたハイボールを濃いと言いつつ薄めない父

切るたびにwatermelon

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短歌 7首連作『アイスクリーム』

短歌 7首連作『アイスクリーム』

アイスクリーム/白川 侑

祈りなど知らないままで透明に透明を着せたようなきみは

数学のテストも同じ点数できみは微笑む 風はまだ春

恋人のフリをしてよと言った時きみはわずかに神様だった

放課後はアイスクリームの外側が溶ける速度で過ぎ去ってゆく

写真機のピントが揺れるほどそばにいたのにきみの手は掴めない

わたしたちもう音楽になれたかな河川敷までのびてきた夏

光さえ既視感がしたもうきっと眩

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ド偏見芸人短歌

ド偏見芸人短歌

 偏見で芸人さんの短歌を詠みました。

ド偏見芸人短歌/白川 侑

令和ロマン・髙比良くるま
毛でもってぐるりと顔を囲むのはきみへの返事を丸にするため

ラランド・サーヤ
現代に蔓延る悪は誰のせい?お母さんが悪いってこと?

ウエストランド・井口浩之
記念日に差出人のわからないお花が届いたぞじゃないんだよ

お見送り芸人しんいち
人が好き/うまくいかない人が好き/うまくいかない自分は嫌い

ランジ

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2024年5月自選短歌10首

2024年5月自選短歌10首

はぐはぐとビッグマックをほおばって強がるための栄養とした

骨だけになっても生きる まだ何もやり遂げてなどいないのだから

ビルだけが燃えていく朝 いつものように制服のボタンをとめる

この愛もいつか化石に成り果てて朽ちていく肉だけが鮮やか

気の抜けたクリームソーダを欲しがってやさしさの意味を考えている

「マイペースなあなたらしくていいね」って10%くらいの肯定

エイトビート刻むナイフに横顔

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短歌 8首連作『九萬』

短歌 8首連作『九萬』

 8人組コントユニット「ダウ90000」さんをイメージした連作です。

九萬/白川 侑

はぐはぐとビッグマックをほおばって強がるための栄養とした

まちがえて白いチケットを食べたからドラマみたいなカットがかかる

平成を脱げないドール さびしげな風に吹かれて六度目の春

びいどろのような瞳に騙されて車をとめた夜のシアター

スーパーの酸欠めいたパック寿司にもていねいに合掌、ナミダ

ひとりでも生

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短歌 8首連作『微熱』

短歌 8首連作『微熱』

微熱/白川 侑

冷房をつけて布団にくるまった三十七度五分のおはよう

真上から見たシルエットがひらがなの「よ」になるようにベッドに寝ころぶ

このままじゃ空に落ちちゃいそうだから下向きにパラシュートをひらく

窓際に見える子どものキラキラを指で隠せば、いない、いない

一滴。いま鏡さえ見なければ泣いてなかったことにもできる

ひとりきりの部屋で遮光カーテンのしたから見える窮屈な月

深海でゆれる

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短歌 12首連作風『World Wide Web』

短歌 12首連作風『World Wide Web』

#ネット歌枕 という企画に参加していました。

World Wide Web/白川 侑
#共有からLINE開いて3番目  の人とおんなじ電車で帰る

連れそった青い小鳥は囚われて亡者が集う白い十字架

カチャカチャと氷を掬う梅雨 借りたラジカセで聴く地獄のソナタ

雨はやみ夕霧 かつて僕たちが散弾銃で撃った青春

冬、右の小指が無限にかゆくなる それって肌の乾燥ですよね?

Welcome to

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短歌 10首連作『宇宙まで400km』

短歌 10首連作『宇宙まで400km』

宇宙まで400km/白川 侑

「さみしい」の4文字をすぐ取り消してごまかすために送る「おやすみ!」

落ちるっていうより落ち込むといったような感じで君に恋する

(会いに行く時はテストのスピードで時間が過ぎる)もう品川か

ハッピーで埋め尽くせたらいいのにね。意味のない手で虹を編む午後

吹き出しに先越されるのが嫌だから 2日遅れのMERRY CHRISTMAS

わたしから宇宙まで400kmで

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