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短歌

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詠んだ短歌をまとめています。
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短歌 連作7首『アイスクリーム』

短歌 連作7首『アイスクリーム』

かすかに覚えている、高校の頃の思い出です。

テキスト

祈りなど知らないままで透明に透明を着せたようなきみは

数学のテストも同じ点数できみは微笑む 風はまだ春

恋人のフリをしてよと言った時きみはわずかに神様だった

放課後はアイスクリームの外側が溶ける速度で過ぎ去ってゆく

写真機のピントが揺れるほどそばにいたのにきみの手は掴めない

わたしたちもう音楽になれたかな河川敷までのびてきた夏

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ド偏見芸人短歌

ド偏見芸人短歌

 偏見で芸人さんの短歌を詠みました。各芸人さんのネタやくだりなんかのフレーズを詠み込んでいます。

テキスト

令和ロマン・髙比良くるま
毛でもってぐるりと顔を囲むのはきみへの返事を丸にするため

ラランド・サーヤ
現代に蔓延る悪は誰のせい?お母さんが悪いってこと?

ウエストランド・井口浩之
記念日に差出人のわからないお花が届いたぞじゃないんだよ

お見送り芸人しんいち
人が好き/うまくいかない

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2024年5月自選短歌10首

2024年5月自選短歌10首

はぐはぐとビッグマックをほおばって強がるための栄養とした

骨だけになっても生きる まだ何もやり遂げてなどいないのだから

ビルだけが燃えていく朝 いつものように制服のボタンをとめる

この愛もいつか化石に成り果てて朽ちていく肉だけが鮮やか

気の抜けたクリームソーダを欲しがってやさしさの意味を考えている

「マイペースなあなたらしくていいね」って10%くらいの肯定

エイトビート刻むナイフに横顔

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短歌 連作8首『九萬』

短歌 連作8首『九萬』

 8人組コントユニット「ダウ90000」さんをイメージした連作です。

 少し前に観に行った単独ライブ『30000』のフライヤーのような、プールの背景にしてみました。

テキスト

はぐはぐとビッグマックをほおばって強がるための栄養とした

まちがえて白いチケットを食べたからドラマみたいなカットがかかる

平成を脱げないドール さびしげな風に吹かれて六度目の春

びいどろのような瞳に騙されて車をと

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短歌 連作8首『微熱』

短歌 連作8首『微熱』

 熱っぽくて寝込んでいた日に、ベッドの上で思ったことを連作にしました。

テキスト

冷房をつけて布団にくるまった三十七度五分のおはよう

真上から見たシルエットがひらがなの「よ」になるようにベッドに寝ころぶ

このままじゃ空に落ちちゃいそうだから下向きにパラシュートをひらく

窓際に見える子どものキラキラを指で隠せば、いない、いない

一滴。いま鏡さえ見なければ泣いてなかったことにもできる

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短歌 連作風12首『World Wide Web』

短歌 連作風12首『World Wide Web』

 X・TikTokで開催されていた、#ネット歌枕 という企画に参加していました。

 ネット文化に最も浸かっていたのは、高校生の頃だった気がします。2chやニコ動など、今よりもくらいインターネットが賑わっていて、その淀みならではの魅力がありました。最近でもX上でのバズやミームも多数生まれていますが、淀みを楽しむのではなく正論で斬るような風潮もあり、かつての高揚は感じにくくなったような気がします。

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短歌 連作10首『宇宙まで400km』

短歌 連作10首『宇宙まで400km』

 短歌を詠むようになって、はじめての連作です。

 国際宇宙ステーションは地表から約400kmの上空に浮かんでいて、それが東京大阪間くらいの距離と知り、遠距離恋愛の短歌を詠んでみました。

 大阪住みの私からしたら、東京は意外と遠いし、宇宙は意外と近いです。

テキスト

「さみしい」の4文字をすぐ取り消してごまかすために送る「おやすみ!」

落ちるっていうより落ち込むといったような感じで君に恋す

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