東京キャリ子

小説家、始めました。

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  • 【小説】ある喫茶店にて

    オリジナル小説『ある喫茶店にて』をまとめてあります。

  • 有料記事まとめ

    noteで「18歳以上用」と判断された記事を有料化しました(1記事:100円)。 それらをまとめたマガジンです。 10記事以上すでにあるので、こちらのほうが絶対にお得。

  • 【小説】オレンジ色の男

    一部成人向け表現を含む小説をまとめたマガジンです。

  • 登場人物まとめ

    Sex And Tokyo Cityの登場人物のまとめ

最近の記事

ちょっとイイ感じの素材を見つけちゃったんだよねぇ。でも、彼は客としてこのお店を気に入っているみたいだったし、あんまりお客様を取り込むのもためらわれる。どうしたもんかな。この図書コーナーにあんなに真剣な目を向けたのは彼が初めてだったから、つい嬉しくなってその後ろ姿を眺めちゃったよ。

    • 【小説】図書館-5【ある喫茶店にて】

      「ふーっ。背中ガバキバキ言ってる……。ああああ。」 無事に本を読み終えたオレは思い切り背伸びをする。 何かがはがれるような感覚と、ベキベキという音を聞きながらさっきまで読んでいた小説についてあれこれ考えを巡らせた。 ここ数年はとにかく「サイコパス」という単語を使いたがる。 ちょっとドが過ぎるオイタのレベルで「ええ、それサイコパスじゃぁん」なんて反応がされる。 それを言っている人間もそれを引き出した人間も、なぜかどことなく満足そうにしているのが気に入らない。 そう思っていた矢

      • 今日は疲れちゃったので毎日投稿小説はお休みです。

        • 【小説】図書館-4【ある喫茶店にて】

          受け取ったコーヒーをさっそく飲んでみると、ハワイ・コナはなんともさわやかで読書が捗りそうな気になった。 これはいいかもしれない。 嬉しくなりながら俺は本を開く。 今日もまた読み切ることはないけど、かなり読み進めた。 コーヒーを飲み、ページをめくり、ページをめくり、ページをめくり……コーヒーを飲む。 そのうちカップの中はからっぽになり、ページをめくるだけになった。 「お客様、あと5分で閉店の時間です。退店の準備をしてください。」 昨日と同じ声が今日はオレの真横から聞こえた。

        ちょっとイイ感じの素材を見つけちゃったんだよねぇ。でも、彼は客としてこのお店を気に入っているみたいだったし、あんまりお客様を取り込むのもためらわれる。どうしたもんかな。この図書コーナーにあんなに真剣な目を向けたのは彼が初めてだったから、つい嬉しくなってその後ろ姿を眺めちゃったよ。

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        • 【小説】ある喫茶店にて
          11本
        • 有料記事まとめ
          20本
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        • 【小説】オレンジ色の男
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        記事

          【小説】図書館-3【ある喫茶店にて】

          翌日、朝兼昼ごはんを済ませて、オレはまたあの喫茶店へ向かった。 昨日とは別の本を持って、小道に入る。 数軒過ぎたその先にある店の扉を開くと、すぐに店員が出迎えてくれた。 「いらっしゃいませ。……昨日は大変失礼いたしました。また来てくださって、何よりです。説明は不要ですね。お好きなお席へどうぞ、メニューを持ってきます。」 店員はそう挨拶するとカウンターへ戻っていった。 昨日と同じカウンター席が空いていたのでそこへ座る。 カバンから本を出していると、横からメニューが差し出された

          【小説】図書館-3【ある喫茶店にて】

          【小説】図書館-2【ある喫茶店にて】

          まずはコーヒーを少しだけ口に含む。 火傷をしないように気を付けながら味わって飲み干すと、むしょうにフィナンシェを食べたくなった。 ピックにフィナンシェをひとかけら刺して口に運ぶ。 しっとりとした生地と甘さがこれからの読書に備えて脳にエネルギーを送ってくれているような感じがした。 よし、気合を入れて、読むか。 「お客様、あと5分で閉店の時間です。退店の準備をしてください。」 そんな声が少し離れた場所から聞こえてきた。 スマホを取り出して時間を確認すると、「15:55」と表示さ

          【小説】図書館-2【ある喫茶店にて】

          【小説】図書館-1【ある喫茶店にて】

          「では、返却は二週間後までにお願いします。ありがとうございました。」 事務的に必要事項が伝えられ、目の前のカウンターにはずいと本が差し出された。 それは間違いなくオレが自分で予約した本たちだった。 この町に住んで良かったと思えるのは、図書館がそこそこ大きいってことだ。 新作も旧作もわりと抱えているし、地域に点在する他の図書館に蔵書があれば取り寄せることもできる。 その取り寄せサービスにさえ、料金はかからない。 オレみたいな半分ニートにはありがたすぎる存在、それが図書館だ。

          【小説】図書館-1【ある喫茶店にて】

          今日のおまかせメニューはバタートーストにマーマレード添え。飲み物はイラムティー。これは紅茶とウーロン茶のミックスみたいな味で面白かったなぁ。ご飯や和菓子との相性もよさそうだ。いくつか見繕って持ってこよう。営業後の店内であの子と試食を楽しめるのは僕だけの特権。誰にも渡す気は無いよ。

          今日のおまかせメニューはバタートーストにマーマレード添え。飲み物はイラムティー。これは紅茶とウーロン茶のミックスみたいな味で面白かったなぁ。ご飯や和菓子との相性もよさそうだ。いくつか見繕って持ってこよう。営業後の店内であの子と試食を楽しめるのは僕だけの特権。誰にも渡す気は無いよ。

          【目次】ある喫茶店にて

          序章第一章「カフェオレボウル」1.何も考えたくない人のためのおまかせメニュー 2.大きいメニュー、小さいどんぶり(仮) 3.フィティング・カップ 4.両手でかかえる、ひみつきち 四月の店主日誌「AtoZ」 第二章「図書館」1.テーブルランプのあるカウンター 2.お詫びのマンデリン

          【目次】ある喫茶店にて

          4月の店主日誌【ある喫茶店にて】

          今月の簡単な振り返りは……。 客入り、多い。 売上、まあまあ。 所感、リピーターになりそうな人が多かった。 細かい金勘定は、別紙を参照。 細かい振り返りやデータ算出は後でいい。 とにかく今感じているものを書いておくのが大事だ。 肌感とか体感とか、人によっては温度って呼ぶのかもしれない。 ともかく、数字や事実的なものではなくて私の主観を残しておくこと。 これが、その月の締めくくる大切な儀式になっている。 手帳を閉じたのと同時に、「儀式は終わったー?」とのんきな声が聞こえてくる

          4月の店主日誌【ある喫茶店にて】

          体調不良のため、投稿はお休みします。

          体調不良のため、投稿はお休みします。

          【4月の第四週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          「ありがとうございます。またどうぞ。」という声に見送られてお店を後にする。 小道を戻って道路に出ると、人の往来があった。 学校帰りの学生や、夕飯用の買い物をしたと思しき袋を持っている老人、犬の散歩をしている親子。 いつもなら、私が絶対に見られない光景だ。 私がこの道を通るのは早朝か深夜のどちらかで、犬と一緒にランニングしている人が通り過ぎることはあるけど子どもなんて絶対に見かけない。 「ここって、こんなに人が住んでるんだ……。」 自分が住む地域に住む人たちの多さにもそうだけ

          【4月の第四週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          【4月の第三週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          カフェオレボウルは取り置きしてもらうことにして、その場ではお金を払うだけに終わった。 これであのボウルは私だけのものになった。 妙な満足感がある。所有欲というか支配欲というか、そんなものを刺激されている気がする。 何かを手に入れるときに、こんな気持ちになることってあったっけ。 意識したことのない感覚にちょっと不安を覚えはしたが、私はそれを上回る興奮に満たされてた。 ……鼻息が荒くなってはいないだろうか。 いけない、ちょっと落ち着かないと。 「ありがとうございます。」とお礼を

          【4月の第三週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          【4月の第二週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          するすると湯気の立つカフェオレはまさかのサイズで度肝を抜かれた。 すっごく、すっごく可愛いんだけど、陶器のお椀に入ったカフェオレはめちゃくちゃシュールだった。 そして、ぽってりとしたバナナブレッドは「軽食」と読んだら詐欺だろうというレベルの厚さでこちらも度肝を抜かれた。 ビッグサイズのお店なんだろうか。 抱えるようにお椀(もはや小さいどんぶりか)を持ってゆっくりとカフェオレを口に運ぶ。 こんなにたっぷりとカフェオレを飲めるなんて、なんて贅沢なんだろう。 ごくん、と喉が鳴る。

          【4月の第二週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          【4月の第一週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          「はあぁ。」 うららかな日っていうのは、今日みたいな日のことをいうんだろう。 暖かくて、からりと晴れていて、空色が澄んでいて。 タンポポが揺れてる道を、ネコが横切っちゃったりして。 うん、間違いなく良い日のはずだ。 なのに、なんでこんなにも憂鬱なのか。 「はあぁ。」 私は100メートル歩く間に、二階もため息をついたのだった。 ふと見やると、右手に小道がのびている。 この道路の両脇に道がのびてるなんて、気にしたことなかったな。 いつもはそれどころじゃないから……。 でも今日は

          【4月の第一週】ひみつきちのはなし【ある喫茶店にて】

          【序章】店主のはなし【ある喫茶店にて】

          いらっしゃいませ。 こちらのお席へどうぞ。 今は混んでいるので、注文は10分後に聞きに来ます。 お急ぎですか?では、またいつか。 こちらの方は、お待ちになれますか? では、このお席をどうぞ。 お待たせしました、ホットコーヒーとスコーンのセットです。 ごゆっくりどうぞ。 お待たせしました、ご注文はお決まりですか? ホットティーとスコーンのセットですね。 本日のジャムは苺ですが、アレルギーはありませんか? かしこまりました、ではジャムも一緒にお持ちします。 少々、お待ちください。

          【序章】店主のはなし【ある喫茶店にて】