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月刊イランだより (仮)〜テヘランへお引越し〜

 TK874便搭乗ゲートに向かい猛スピードで空港内を走るバギーに揺られる。思えばこの時からイランの洗礼は始まっていた。

 数ヶ月前、私は上司からイラン赴任の異動通知を受けた。誤って赴任先の第2希望欄に「イラン」と書いてしまった日から、いつか言われるのではないかと心づもりしていたが、いざ言われてみるとショックは大きく、ドキリと胸が痛むのを感じた。
そこからの毎日は目まぐるしく、あっという間に出発当日となり、多くの人に見送られて飛行機に乗り、経由地トルコに着いた。
イランはイスラム教を国教とし、イスラムの厳格な戒律に沿って法律が作られているため、女性は体の線を隠す服装が義務付けられており、飛行機が着陸し入国する時からヒジャブ🧕の着用が義務付けられている。
私は経由地トルコで購入することにしていたので、乗り継ぎ時間にターミナル内でヒジャブを購入した。そして、ついでに会計の店員にフライトチケットを見せ、搭乗ゲートまでの行き方を尋ねた。スタッフはゲートの番号を見ると時計の針を確認し、今すぐ向かうよう促した。
イランなんて国に行く奴は少ないからだろうか、搭乗ゲートは世界第6位の広さを誇るイスタンブール空港の端っこ、徒歩では30分以上かかる距離だった。私達は急いで店員の指した指の方向へ歩き出し、目に入ったバギーに乗り込んだ。荒い運転で人並みをするするとかき分けながらバギーは進み、搭乗ゲートに着いた。
着いて改めて時間を確認すると、フライトの出発時間の1時間も前に集められていた。
そしてまだ飛行機に乗れるわけでもないのに、ゲートの前には列ができていた。
訳もわからず並び、ゲート前に到達すると、グランドスタッフにチケットではなくパスポートの入国スタンプページの提示を求められた。
1時間も前に集めた理由は、乗客の入国履歴をチェックするためだったのである。
もうイラン政府の監視下に下ったのかと緊張感が高まった。
ゲートが開き、飛行機の入り口まで歩くと、飛行機に片足突っ込んでいるにも関わらず、手荷物が多すぎると何人もの乗客が降ろされそうになっており、スタッフ対客の激しい口論が繰り広げられていた。重さの制限を課している以上簡単には許せないスタッフVS今更乗れないと言われてもキャンセルして数十万支払って新しいフライトを手配するなんてことはできない客。口論は激化した。
そんなカオスな機内で、緊張しないわけがなかった。
不安でいっぱいの中、どう決着がついたかは不明だが、1時間遅れてやっと飛行機が出発した。
3時間後、わたしのイラン生活が始まる。


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