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デパチカ・ラブライブ ~失恋を癒やすのはラザニアだったりもする~

35歳。世間から積極的に年齢を聞かれなくなる歳。
この歳になるとお金を使うこともグンと減る。そのせいか、無駄に夕食を贅沢にしてしまう傾向にある。かと言って自炊もする甲斐性もないし、一人で外食をする勇気と鈍感力もなくなる。
「そうだ……!」
だから、決まってデパートの地下食品売り場に立ち寄ってしまう。

買うのは、エレベーター付近の角にあるイタリアンのラザニアだ。
結婚相談所を辞めてから急にお金の使い道が分からなくなった僕にとって、ちょっと高いラザニアぐらいが腹と幸福感を満たすのにちょうどよかったのだ。
そして、そこで働くショートカットで丸顔のサエキさんが好きだった。
まぁ、顔から入った。たぬき顔は男たちの正義だ。
顔が好きといえば好きだが、彼女が店のラザニアの味付け担当と聞いてから、彼女が好きなのか、ラザニアが好きなのか分からなくなってきた。
ラザニアとタコハイをほおばりながら、僕の平日は過ぎていく。

でも――先週から、デパ地下の店にサエキさんが来なくなった。
さりげなく聞いてみると、「サイキさん」だったことが分かって、産休に入ったのだという。ちぇ。
その舌打ちの意味を知る前に、僕はあることをひらめいていた。
いうなれば犯罪だ。

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