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学園祭でスーサイド

セックスと文化祭は始まる前が一番楽しい。らしいの。
大学生の兄の友達が酔いながらアタシに話しかけた。無視していたけれど、ちゃんと耳に残っていた。

昔から幸が薄かった。そのせいでいじめを受けたり、失恋したり、にきびをつぶしまくったりしているうちに、アタシはオトナになった。まだ17歳だけど。こんな豊満なボディーをほっておく男はいない、ときたもんだ。
まぁその男は赤の他人で、疲れ切ったサラリーマンばかりだけど。
幸の薄さとグラマラスバストの相性がよいのか、さんざん痴漢された。
電車が怖くて乗れなくなった。男子と話すのもつらくなった。
でも、今はちょっとマシかも。

「マカロニえんぴつ。の後だと何が盛り上がるかな?」
「曲によるんじゃない………」

クラスメイトの渚が、体育館でコピーバンドの演奏をするという。
そういえば、文化祭まであと8日だ。
聞けば、渚たちの一個前の演目に穴が開いたという。
C組の男子たちのブレイクダンスが無くなったのだという。あいつら、なんか野蛮そうだから嫌いだ。アタシのことなんて知らないだろうけど。
「椿、なんかやりなよ」
「無理」

その30秒後。アタシは前々からやろうと思っていたことをひらめいた。
将来的に絶対やるんだから今しかないでしょ、と。

アタシは大道芸をすることにした。イリュージョンでもいいんだけど、アタシ、引田天功見たら寝れない時期あったし。

大道芸の道具は少ない。椅子と太いヒモだけ。
体育館に集まる大勢、いや30人くらいか。そいつらの前で死んでやることにした。
メッセージもないし、誰かへの恨みもないし、驚かせたいわけでもない。
生きているのがつらいから、アタシなりの大道芸で、演目の穴を埋めてやろうと思ったのだ。
渚は不思議そうにアタシを見ていた。
「まさかね、マジとは」
「………アタシの後の一曲目、YUIのチェリーにしてよ」

文化祭まであと5日。
その日の朝、大久保先生が痴漢で捕まった。

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