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タイムリープ・ストレンジ・マーダーケース ~え、犯人でしたよね?~

「犯人はあなたですよね? 三好さん……!」
俺は震える手をグッとこらえて、アリバイを崩し終えた三好さんを指差した。驚く一同。高笑いをする三好さん。チェックメイトーーだった。

次の瞬間、雷が鳴る。

俺はベッドで寝ていた。
慣れない推理を披露したせいか、倒れてしまったのか。外はやけに静かだ。
きっと三好さんは「……そうだよ、私だ。――許せなかったんだ、尾上が」
と泣き崩れながら、ようやくやってきた警察に連れていかれたころだろう。
そう、豪雨警報も解除され――。

ガガガ、ガガガ。屋根を揺らすような雨が降っている。まるで昨日までのように。
「…………」

部屋を出ると、広間は真っ暗だった。事件の後はこうも静かになるのか。
電気をつける。
背中を一突きされて血まみれになった三好さんがフローリングに横たわっている。一目で死んでいると分かる。
「え?」

階段を下りてくる客たち。昨日殺されたはずの尾上、加奈子、最後まで怪しかった尾上の愛人・紗千香、包帯でぐるぐる巻きの顔をした煙山。一同が集結した。
「いやぁぁあぁぁ!」
加奈子が叫ぶ。いや、殺されたよね? 尾上が爪を噛んでいる。いやいや、アンタバラバラにされたよね?
「これは――殺人ですね」
包帯男の煙山がつぶやく。
2日前と同じように不気味な声色で。

ベタに時計を見てみる。
「……そうなる……わけか」
2日前に時間が戻っている。
タイムリープ。そんな言葉が存在するなんて思わなかったけれど、状況が状況だし、なんか信じたいし。

でも、尾上さんが死んでいるのは理解できない。だって、俺が頭を使って解き明かしたもん、アリバイ。尾上さん、犯人だって気づいたときの達成感えぐかったもん。

なんで犯人が殺されているワケ? タイムパラドックスじゃないの?

俺は必死に尾上さん殺しの謎を解く。愛人の紗千香が氷を使って死亡推定時刻をずらしていた。
「犯人は――紗千香さん、アナタだ」
「……チっ」
舌打ちをする紗千香。思わず俺は口角を上げる。冷静に、冷静に。

雷が鳴る。

また、部屋で目を覚ました。まさかね。そんなね。嘘だよね。
広間に出て、電気を付ける。
鍵のかかった部屋で包帯男が殺されていた。
また、一同が集まってくる。
また、2日前に戻っている。被害者だけが入れ替わった状態で――。

俺は頭をしばらく抱えていたが、包帯男の部屋へ向かった。
アリバイを解き明かすために。
もう迷わない。もう怖くない。

どうせまた目が覚める。


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