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アルプスの底で僕らは 二

カタカタカタ。

壊れかけの扇風機から吹く風がそよ風のようで心地いい…

わぁっ  

痛たたた。どうやら床に落ちたあいつの服で滑ったようだ。
って、あいつもうシャンプーしてる。僕も早く入ろっと。


こじんまりとした小さい湯船が一つ。
不思議な色をしたタイルが沢山敷き詰められていた。

蛇口を捻るとすごい勢いでお湯が出て来たものだから、
慌てて反対側に少し捻った。

するとあいつの笑い声が銭湯中に響いた。 

僕も少し笑ってしまった。

僕は汗まみれの体を綺麗に洗い、
真夏の昼間に風呂に入るのもどうかと思ったが、
思い切ってざぶんと浸かった。  

湯船からお湯が波の様に溢れた。

「スッゲー」

やつが目を輝かしてこちらを見ている。

僕相撲やってるんだ。
そう言って僕は目を逸らした。


「絶対君強い。あとで僕と勝負してよ僕、力には自信あるんだ。負けないよ。」

そんな話をしているとそろそろ名前を知りたくなってきた。

君、名前なんていうの?

そう尋ねるとやつは

…「僕の事は、アルプスって呼んで」

と言ったのでアルプスくんと呼ぶ事にした。…..続く

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