あめみや ゆう

虎女のことを知って欲しい。日本三大敵討ち「曽我物語」の悲劇のヒロイン。平塚市山下に産ま…

あめみや ゆう

虎女のことを知って欲しい。日本三大敵討ち「曽我物語」の悲劇のヒロイン。平塚市山下に産まれた虎女さんを知らしめる為にお話しを書きました。 これから noteに少しずつ載せて参ります。 皆さん、是非読んで下さいね。 火曜日と金曜日に配信予定です。

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大切な物を失くす前に、私にできること

我が家から程近い国道沿いに今どき珍しい茅葺き屋根の民家がひっそりと建っていた。  商業施設に利用されるでもなく、主のいないその家は、そこだけ時が止まったかのようだった。何のあざとさ もなくただ立っている その家が好きだった。  そこへある日突然、黄色いブルドーザーがやって来た。 その 茅葺き屋根の小さな家は一瞬で潰された。抗う術もなく。僅かな砂煙りは、せめてもの抵抗か。  取り壊されたいきさつは分からない。茅葺き屋根の家を維持することは大変だろう。でも、やっぱり寂しい。わたし

    • 「いかなる花の咲くやらん」お陰様で最終話まで載せることが出来ました。 毎火曜金曜に投稿しておりましたが、今日は水曜日。今、後書きを書いております。金曜日には間に合うと思います。 宜しくお願いします。

      • 「いかなる花の咲くやらん」第14章第2話 「縁(えにし)」

        令和四年(2022年) 平塚 三年の月日がたった。永遠と和香菜は、平塚の白藤稲荷に来ていた。 「今年も、藤の花が咲いたね。すごい良い匂い」 白藤稲荷は今は小さな祠と、畳二畳ほどの藤棚のこじんまりとした社になっている。通りに「虎女の文塚」の看板はあるが、気付く人も少ない。看板にはそれでも、毎年5月になると白い藤が咲く。大ぶりな花びらで、香り高い。 「永遠ちゃん、藤の花って色々花言葉があって、白藤は「なつかしい思い出」という花言葉もあるんだって」 「なつかしい思い出か」 「言

        • 「いかなる花の咲くやらん」第14章第1話 「令和に戻った永遠」

          令和元年(2019年) 初夏 平塚 永遠は花の香りに花をくすぐられ、目が覚めた。真っ白い部屋に寝かされていた。枕元の花瓶には藤の花が生けられていた。ここは病院のようだ。ベッドから夕焼けに赤く染まる高麗山が見えた。(テレビ塔が見える。ということはここは平塚市民病院かな。それにしても、丸いアンテナをいっぱい付けられてしまって、テレビ塔はイカのゲソみたいになっちゃったな。 あれっ、私どうしたんだっけ・・・。あーそうか、高麗神社のお祭りで足を滑らせて、落ちたんだ。 ・・・なんか、

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        大切な物を失くす前に、私にできること

        • 「いかなる花の咲くやらん」お陰様で最終話まで載せることが出来ました。 毎火曜金曜に投稿しておりましたが、今日は水曜日。今、後書きを書いております。金曜日には間に合うと思います。 宜しくお願いします。

        • 「いかなる花の咲くやらん」第14章第2話 「縁(えにし)」

        • 「いかなる花の咲くやらん」第14章第1話 「令和に戻った永遠」

          「いかなる花の咲くやらん」第7章第3.2話「身代わり石」

          一足先に大磯へ来ていた五郎と虎女が化粧井戸で話をしているところへ十郎がやってきた。 「兄上。おみ足をどうされたのですか」 馬から降りた十郎は左足を引きずるようにして歩いていた。 「いや、先ほど賊に襲われてな。こんな貧乏な身なりの武士を襲っても腹の足しにもならないだろうに」 「十郎様、よくぞご無事で」 「うむ。その時、不思議なことがあってな。まず矢を射られた。突然のことで防ぎようもなかったところへ、米俵ほどの黒い石が現れて矢を受け止めてくれたのだ。そして落馬した私に別の賊が斬り

          「いかなる花の咲くやらん」第7章第3.2話「身代わり石」

          「いかなる花の咲くやらん」第7章第3.1話 「十郎、襲われる。」

          その日も十郎は虎女に会うために大磯に向かっていた。 二宮の小動浜に差し掛かった時、背後にヒューと音がした。振り返ると一本の矢が十郎めがけて飛んできた。 「しまった」 よもやこれまでと思った時にどこからともなく黒い米俵のような物が現れ、矢を受け止めた。 「なんだ。なんだ。確実に仕留めたと思ったのに。いったい何が起こったのだ」 一人の賊が驚いている間に、もう一人の賊が刀を抜いて、体勢を崩して落馬した十郎に斬りかかってきた。 ところがその切っ先は大きな火花を散らしながら、折れて飛ん

          「いかなる花の咲くやらん」第7章第3.1話 「十郎、襲われる。」

          「いかなる花の咲くやらん」

          いよいよ最終回も間近になりました。が、しかし話しを1つ挿入させて頂きたい。 と、申しますのも「虎御石」が曽我十郎が賊に襲われた時に、身代わりとなったという言い伝えがあります。しかし、自分で曽我物語を読んだ時には見つからず、詳しい事が分からないので話しの中に盛り込むのを断念いたしました。 ところが過日、延台寺様に伺い「虎御石」を拝見いたしましたら、ハッキリと矢と刀の傷が残っておりました。ご住職様の仰るには、穴の大きさと矢の寸法がピッタリだとか。言い伝えの信憑性と、直に見る石のオ

          「いかなる花の咲くやらん」

          「いかなる花の咲くやらん」第13章第2話 「虎女の文塚」

          それから何日かの間、特になんということもなく過ぎた。出家するにしても、元の時代に戻るにしても、その前に十郎からもらった手紙を燃やすことに決めた。寺にも未来にも手紙を持っていくことは出来ない。愛する人の一言一句を忘れることなどない。却って手紙を燃やすことで、十郎の思いをすべて自分の物にできると思った。 平塚の白藤稲荷の境内で永遠は亀若と一緒に、手紙を燃やした。一通一通火にくべる度、自分の体も消えていくように感じた。固くなっていた気持ちがほぐれて少しずつ煙とともに十郎のもとへ行け

          「いかなる花の咲くやらん」第13章第2話 「虎女の文塚」

          「いかなる花の咲くやらん」第13章第1話 「エピローグに向けて」

          「亀若ちゃん聞いてほしいことがあるの。私、実は・・・」 永遠は自分の身に起きたこの四年間のことを亀若に話した。 「では、永遠ちゃんは今から八百年未来からこの時代に来てしまったの?」 「信じてもらえないと思うけど」 「信じるよ。さすがに八百年先って、想像もできないけれど。私とは何か違う不思議な女の子だと思っていた。もしかしたら月から来たのかなあなんて考えていた。信じられないようなことでも永遠ちゃんが言えば全部本当だと思えた。だから信じるよ」 「信じてくれてありがとう。五歳の時に

          「いかなる花の咲くやらん」第13章第1話 「エピローグに向けて」

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第4話 「いかなる花の咲くやらん」

          寝室で永遠は窓辺に虎御石を置いて、月を見上げた。 (今宵は中秋の名月なのね。涙だかすんでおぼろ月にしか見えないわ) 軒端に吹きくる風の音、雁の群れの羽ばたく音、枕元で弱弱しく鳴く螽斯(きりぎりす)、静かな夜のかすかな物音の全てが永遠の心を傷つけた。 (秋が過ぎ冬になったら私は雪や霜になって消えてしまいたい)  『嘆きにはいかなる花の咲くやらん 身になりてこそ思ひ知らるれ』  (嘆きという木にはどのような花が咲くのでしょう。実がなってから分かるように、我が身のことになって

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第4話 「いかなる花の咲くやらん」

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第3話 「心が通う虎女と母」

          歳月人を待たず。永遠がどんなに嘆いていても,月日は以前と変わらず過ぎていった。夏がいき、秋も深まろうとする頃、永遠は母親の万劫御前が箱根権現で兄弟の供養をなさると聞き、自分も共に供養したいと申し入れた。万劫御前はたいそう喜んだ。亀若も一緒に行きたいと思ったが、五郎にとどめを刺したことが気にかかり、万劫御前に会うのが怖かった。詫びを入れなければとおもいつつ勇気が出なかった。また、最近は気鬱になり、臥せっていることが多くなっていた。もうしばらく大磯で休養するように菊鶴にも言われ、

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第3話 「心が通う虎女と母」

          亀若

          今回は「亀若ちゃん」について少し話します。 亀若ちゃんは吾妻鏡にも、その後の言い伝えにも出てきません。「いかなる花の咲くやらん」のオリジナルキャラクターです。 曽我五郎さんにも素敵な恋人がいたなら良かったなあという思いからうまれました。 (後に語られた話しでは、五郎さんにも良い人がいたという説もあります) 亀若ちゃんは虎女(永遠ちゃん)の親友として、彼女を支える存在になりました。 そして、節々で出てくる女性の影、例えば工藤祐経が討たれる前に女性と共にいたなどの女性を亀若ちゃん

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第2話 「母の悲しみ」

          曽我の里へ訃報が届いた。この知らせを悪夢と思いながらも母は形見の品を目の前に嘆いた。 「共にあの世へ参りたい。一緒に参ります。置いていかないで。十郎、五郎」と泣き叫んだ。そこへ頼朝の使者として、甲斐の国へ行っていた蘇我祐信が帰ってきた。子供たちからの二通の手紙を胸に抱き、読むこともできず泣き続ける妻を前に、おろおろと立ち尽くすばかりであった。その祐信にすがりつき、「これらの小袖は、最後に身につけておきたいと、欲しがったものを、私はすぐに返せと言ってしまった。なんと心無い。五郎

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第2話 「母の悲しみ」

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第1話 「悲しみに身をゆだね」

          亀若は大磯へ帰ってきた。何処をどう帰って来たのか、自分でも分からない。着物は着崩れ、髪は振り乱れ、草履が擦り切れた足からは血が滲んでいた。途中水だけは飲んでいたようだが、もう何日も食べものを口にしていなかった。本能だけで大磯まで帰ってきた。通りをふらふらと歩いて来る亀若を見つけたのは、高麗神社から戻った永遠だった。 「亀若ちゃん。どうしたの」 永遠の腕の中に倒れこみながら、今まで無表情だった顔が崩れた。乾ききった頬に涙が溢れた。「五郎様を、五郎様を、私、五郎様を殺してしまった

          「いかなる花の咲くやらん」第12章第1話 「悲しみに身をゆだね」

          「いかなる花の咲くやらん」聖地巡り 富士宮

          富士宮市の「白糸の滝」は観光地として有名です。幅広く流れ落ちる滝はとても素晴らしい景観です。 そのすぐ隣にあるのが「音止めの滝」です。 ここに行く橋は「曽我橋」 この橋を渡るとすぐにあるのですが、滝の上はカフェの土地になっています。 そして、そこから2分程の所に、曽我兄弟がどうやって、工藤祐経を討ち取ろうか相談した 「曽我兄弟の隠れ岩」があります。 ここに 隠れて相談する時に、滝の音がうるさくて、会話がままならなかったので、曽我五郎が滝に「うるさい!」と怒鳴ったところ

          「いかなる花の咲くやらん」聖地巡り 富士宮

          ついに、敵討ちを果した曽我兄弟ですが、共に命を終えてしまいました。 その舞台がどのような所なのか、富士宮聖地巡りを載せたいと思います。 毎週火曜日と金曜日に更新しておりますが、明日の土曜日にさせて頂きます。ごめんなさいm(_ _;)m

          ついに、敵討ちを果した曽我兄弟ですが、共に命を終えてしまいました。 その舞台がどのような所なのか、富士宮聖地巡りを載せたいと思います。 毎週火曜日と金曜日に更新しておりますが、明日の土曜日にさせて頂きます。ごめんなさいm(_ _;)m