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大切な物を失くす前に、私にできること

我が家から程近い国道沿いに今どき珍しい茅葺き屋根の民家がひっそりと建っていた。
 商業施設に利用されるでもなく、主のいないその家は、そこだけ時が止まったかのようだった。何のあざとさ もなくただ立っている その家が好きだった。
 そこへある日突然、黄色いブルドーザーがやって来た。 その 茅葺き屋根の小さな家は一瞬で潰された。抗う術もなく。僅かな砂煙りは、せめてもの抵抗か。
 取り壊されたいきさつは分からない。茅葺き屋根の家を維持することは大変だろう。でも、やっぱり寂しい。わたしの中で、そこにあるべきものが消えてしまったことが悲しかった。私には何の縁もゆかりもない家屋。抗う術が無いのは、その家も私も同じだ。
 私は他にもこの町に好きな場所がある 。曽我物語に出てくる 曽我十郎の恋人 虎女さんの生家や 虎女さんが恋文を燃やしたといわれている 文塚がそれだ 。そこで いにしえの悲恋に思いをはせる。800年もの昔、はかなく散った恋。しかし、地元の人にも、この史跡のことはあまり知られておらず訪ねる人も少ない。
 そこにもいつか、いきなり黄色いブルドーザーがやってくるのだろうか?その時も私に抗う術はないのだろうか?本当に?何か出来ることはないか?
  何でもいい 。やってみよう。まずはその場所のことを人々に知ってもらおう。
 「吾妻鏡」などによって伝えられる曽我物語と各地に散らばる曽我兄弟の伝説をファンタジー溢れる小説に著してみるのはどうだろうか。私の話を読んでくれた人が、私と同じように、この場所で昔の恋に思いを寄せてくれたら嬉しい。
 虎女さんの史跡が、今に、そして未来に伝えようとしていることは何だろう。そんな思いを誰かと共有したくて、noteに「いかなる花の咲くやらん」という題名の小説の掲載を始めた。いつかそこに多くの人々が訪れることを夢みて。

#未来のためにできること

宜しくお願いします。

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