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"I don't know, I need your help"からはじまる「フロー型のリーダーシップ」|コロナ下の旅館がMBAの教材になった、話


おはようございます。せんとです。

私が経営する旅館「扇芳閣」が、ロッテルダム経営大学院のMBAコース向けのケーススタディ(教材)になったので、その話をしたいと思います。
僕自身、2020年4月にこの大学院を卒業しましたが、こんなにも早く自分が教材になるとは思っていませんでした。(記事|7分程度)

授業紹介映像|クライシスリーダーシップというテーマでした

全てのきっかけは、何気ないLinkedinへのポスト

正直、コロナウイルスの影響でかなり視野狭窄(しやきょうさく)になっていた自分でした。しかし、ある朝目覚めた時に、不意にこう思いました。

自分が大変な時は、自分の周りの人も大変なはず
企業の壁なんて取り払って、力を合わせて乗り越えないと

そう思い、Linkedinに以下のポストをしたことが全てのきっかけでした。

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【意訳】
困っている旅館やホテル関係者からいろいろな質問や相談をもらいます
弊社も昨年と比べADR(平均単価)&売上、ともに壊滅的です(涙)
しかしながら、大変な状況だからこそ、お互いに手を取り
悩みや苦悩を共有しながら頑張って行きましょうね!
「ホテルや旅館の人は何が困っているのか?」
「何かサポートできるようなことはないかな?」

という気持ちでしたポストでした。このポストを読んだ、紹介動画に登場する大学院の教授(ソファイア)から「それぜひ授業で扱わせてもらえないかな?」という電話をもらい、この授業実現に至りました。(余談|時差8時間もあるにもかかわらず、迷いなくかけてくれた彼女に感謝!笑)

そして、彼女の授業でMBAに所属する150名のプロ学生に旅館の現状を説明し、今後の戦略/対応について議論する、ということに繋がりました。

MBAのケーススタディーとは?

「MBAのケーススタディになりました!」と言っても、そもそも、MBAとは?ケーススタディーとは?が分からない人もいらっしゃると思います。MBAは、Master of Business Administrationの略語です。経営学全般(財務、戦略、人事、マーケティングなど)について1~2年間で学ぶ「大学院プログラム」です。

MBAでは「ケースメソッド」と呼ばれる授業形式が広く採用されています。「ケース:Case」は特定の企業/人/製品/サービスなどについて作成され「学生がディスカッションをする材料/素材」としての役割を担っています。

A4の紙で15~30ページほどの分量で、「実際に経営者/当事者が直面した経営判断」についての詳細が記載されています。教授がファシリテーターの役割を担いつつ、授業の中でMBAの学生は「自分が当事者であれば、どんな決断をするのか?」について考えさせられます。
 
教授からよく”Case discussion is not the time for listening, but this is a real-practice to make YOUR decision!!"と言われました。ケースの授業は、受け身で聞いてるだけではなく、お前の意見を決める練習だ、ということですね。少し時間がたった記事ですが、ケースメソッドについての詳しい記載は、HBSの日本リサーチ・センターで働かれていた山崎繭加さんの「ケースとはお寿司のようなものだと思います」というブログをご参照ください!

コロナ下の旅館から学ぶ「クライシスマネジメント」

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写真|オンライン授業の様子
【とっても大変!困りに困っている、課題等】
「売り上げ90%減、どうする?」
「ウイルスの蔓延を防ぐ防御策、はあるの?」
「サプライアーとの買掛金の延長交渉、すべき?」
「旅行会社からの売掛金の回収、って出来なかったら?」

挙げればキリがありませんが、上記を題材に「クライシスリーダーシップ」について、3時間×6クラスのオンライン授業をMBAの学生を対象に実施しました。(結構、時間的にもコミットしたので大変でした!笑)

あなたが旅館の経営者だったら?

ケーススタディでは、いくつかの質問がありました。以下はその一部。

【背景】
日本ではコロナウイルスの感染者数が3月頃から増加。それを受けて、休業するホテルも出現。レジャー旅行者は減少傾向だが、ビジネス旅行者の需要は継続。ホテルは旅行者以外にも、不特定多数の人が往来する施設
【質問】
Q.1 このような社会状況の中で、あなたは営業を継続しますか?

Q.2 営業継続、もしくは休業することによって生じる影響は?

Q.3 意思決定をする上で、必要/有効なリーダーシップとは?

冒頭の動画の中でも少し触れましたが、うちの旅館は典型的な「トップダウン型」の企業文化/組織です。経営者と各部署のマネージャーが意思決定をして、それをスタッフが実装するという形式です。そこから、どのようにリーダーシップの構造を変化/適応させ、旧来型のマネジメントから改革するのか、というのが一つのチャレンジでした。

学び①|「I don’t know, I need your help」

改めて確信したことは「 I don’t know, I need your help」と発言する勇気、周りの人に対しての好奇心を持つことの大切さです。

僕自身、コロナウイルスが蔓延し始めた当初は、NewspicksやYoutubeを眺めながら「どんなふうに観光業界変わっていくのだろう?」と一人で思案していました。

しかし、考えても考えても、二進も三進もいかず、前に進まない…。

結果、自分の自分の殻に閉じこもって、ネットで情報収集をするのではなく、スタッフや関係者と話をして泥臭く「ぜひ、みんなの意見を聞かせてください」というコミュニケーションに変更しました。

分からないことを、分かるまで自分で調べるのではなく
分からないという不完全な自分を受け入れた上で
「どうぞ、助けてください!よろしくお願いいたします!」

とVulnerable(批判を受容する)な姿勢を見せることが、結果的には物事を前に進める上ではキーになると感じました。

他にも、授業を通じて、沢山のフィードバックを学生からもらいました。生徒は、僕よりもマネジメント経験が豊富な人々なので、的を射た意見ばかりでした。個人的に最も響いたフィードバックは、

有事の際のリーダーシップは「民主化」と「独裁化」のバランスが大事
意見集めのプロセスは民主的に、実行は一貫性(独裁化)が求められるよ!

でした。有事の際は、様々な意見/見方が意思決定の前にも後にも発生します。異なる意見全てを汲み取ることは不可能だからこそ、可能な限り意思決定前は、意見を集め、決定する。そして、決めた後は、批判を恐れずに、それを(ある意味)独裁的に実行していくというスタイルが大事だ、ということでした。

今書いてみると、そんなに驚くこと?と思ってしまいますが、渦中で混乱している自分にとっては、とても響く言葉でした。

学び②|「困難」は自分の成長の糧にも、誰かの成長の糧にもなる

大変な時だからこそ、それを乗り越えればきっと自分の成長につながる!
神様は自分が乗り越えられないチャレンジは与えないよ!

本当にその通り。しかし、このような状況であるからこそ、「自分の成長に繋げるだけではなく、誰かの成長にも繋げてもらえる」なんてこともあるのでは?と私は思います。

言うまでもなく、自分が死のもの狂いでやるのはもちろんですが、頑張ること自体が目的化してしまっては意味がありません。ですので、

自分の困難を学びの糧だと思う
その糧は自分だけではなく、誰かの成長の糧にしてもらう
自分が得た学びの糧/種を、周りにお裾分けする気持ち

というリーダーシップもあっても良い、と思いました。「出来ること」と「出来ないこと」をきちんと見極め、出来ないことは周りに助けを求める。

自分の直面する困難を抱え込まずに、成長の種だと捉える、そしてその学びの種を周りにもお裾分けして、一緒に花を咲かせるための伴走役を担ってもらう。そんな考え方も、有事の際(もしくは、これからのVUCAの時代)にあっても良いと思います。

まとめ|"I don't know, I need your help"が、「フロー型クライシスリーダーシップ」の始まり

コロナウイルスの蔓延時には「お金がないわけではなく、お金のフローがなくなったことが問題である」と言われます。これは、経済以外のことにも当てはまるのだと思います。

コロナによって、隔離や断絶が増した?ことで「人と人のインタラクションが減り、断絶が起こることが問題が解決されない根本にある」のではないのか?と思いました。

逆に言うなれば、如何に、課題/問題を抱え込まずに、外へフロー(流す)させるのか、フローさせることでそれを解決する最適なアプローチやチームと繋げられるのか、が有事の際のリーダーシップでないかと思いました。

経営者やリーダーに限らず、人は誰かからよく見られたい、弱みは見せたくないというところがある生き物です。だから、抱え込んでしまう。でも、困難に直面した時ほど、大きな声で「...To be honest, I don't know, I need your help!!!」と言葉にするのは大事ですし、それによってフローする情報(種子)は、より最適な解決策を運んできてくると思います。

大きな声で「負けた!」と認められることが
次の勝ちにむけた最初の一歩

昔、野球コーチから教えてもらった言葉をこのnoteを書きながら思い出しました。さぁここからだ!

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以上、ご笑覧いただきありがとうございました。

今日は、コロナウイルスの蔓延下における「有事のリーダーシップ」についてでした。オランダの経営大学院にこのような機会をいただいたことがとても嬉しく感じると共に、こういうインタラクションの機会を今後も確保していきたいな、と思いました。

回し者ではありませんが、MBAに興味がある人や、旅行/観光業界に興味がある方、いつでもご連絡くださいませ。何かできることあれば協力させてください!

せんと

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伊勢湾を見下ろす高台にある旅館「扇芳閣」

「鳥羽」は古くから、伊勢神宮のお膝元として栄た観光地であり三島由紀夫が「潮騒」などを書いたように、多くの文豪から愛された文化の町です。

扇芳閣も昭和の文豪、山本周五郎の「扇野」の舞台となった場所に館を構えております。伊勢湾と自然の風景、そして豊富な海の幸、和の風情たっぷりの温泉、露天風呂をお楽しみいただけます。ご予約は公式Webサイト:旅館「扇芳閣」から。



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