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尼僧の懺悔

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女は灰になっても女。 女であることは業なのか。 これは堕落なのか自我を取り戻す旅なのか。
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記事一覧

尼僧の懺悔0

私は今から10年ほど前、尼僧を辞めた。 直接の原因は適応障害になって、心身共にその生活を維…

尼僧の懺悔1

その頃の毎日は、将来の夢や理想などはなく、ただひたすらに今があるだけだった。 出家から5…

尼僧の懺悔2

道場修業時代は、僧侶としての基礎を教育されるとともに、僧侶の裏の慣習にも親しむことになる…

尼僧の懺悔3

どういう偶然か、境遇の似た二人の出家が、ネット上で出会った。 最初はそれだけだった。 仏…

尼僧の懺悔4

男と寝て、罪悪感はなかったのかと言われれば、それは確かにあった。 どう方便を回しても、破…

尼僧の懺悔5

出家同士の恋は先がない。 どこぞの子弟である彼も、師匠の鶴の一声でどこかの寺へ婿養子に入…

尼僧の懺悔6

どんなものでも、終わりが来る。 それがこの世の理である。 私の表側の毎日は、少しずつ荒んでいった。 師匠の病は、大型行事前で多忙もあって、悪化の一途だった。 夜に妄言で起こされることも度々あった。 前触れも心当たりもなく突然疑われ、怒鳴られた。 尼寺は女の出入りが多い。 駆け込み寺よろしく、様々な女性がやって来ては去っていった。 その中でも一番困ったのは留学生だった。 日本人なら説明のいらないことを、ゼロ以下から説明しなければいけない。 寺の生活では、理由を訪ねられて

尼僧の懺悔7

転落のスタートは体が壊れはじめたことだった。 長引く咳と胃の不調で内科を受診したところ、…

尼僧の懺悔8

いつからだろうか、寺の太い梁を見ると首を吊りたくなった。 逆流症食道炎になって以降、瑣末…

尼僧の懺悔9

終わりの日は突然にやってくる。 それは実に些細なことが始まりだけれど、ずっと抱えていた小…

尼僧の懺悔10

実家に戻った私は、とにかく眠った。 この先どうなるのか、という不安が時々心を掠めるのだが…

尼僧の懺悔11

久々に自坊に戻っても、私はあいかわらず病人のままであった。 セクハラ加害者である兄弟子も…

尼僧の懺悔12

師匠と数回の話し合いを経て、一か月ほど後に私は再び実家へと返されることになった。 尼僧を…

尼僧の懺悔13

実家に再び戻った私は、絶望感とともに同じような生活を送っていた。 仕事もなく、社会の歯車から外れている人間は、責任も危機感もなく焦燥感だけが募る。 実家は自営業で、PCで文書入力の作業などを頼まれた時は、渋々ながらそれを手伝っていた。 年下の彼とは、細々とメールのやり取りを続けていて、時々電話などをしながら、それはそれなりに遠距離恋愛を続けていた。 たとえ無職でニートで毎日が失意のどん底でも、誰かに愛されているということは絶大な精神的支柱であった。 実家に帰って一年が過ぎ