「見通しの良い生活」への道:生活マントラ<その2>
◼️ケース・スタディで見通しをつける
生活マントラの第二回です。生活思創は、今まではどちらかというと「生活思創って何だろう(Why-What)」が中心でしたが、このシーズン5は「生活思創ってどうするの(How-What)」に重きを置いて、試考していきます。
生活マントラはそんな実践ツール候補ではないかと見込んでおります。今回は前半にツールとしての骨格を描いてみます。後半は、実例として小生を差し出してみます。こっぱずかしいけど、日々の暮らしに記号接地しているのが生活思創ですからね。
娘「生活マントラって、別に言うだけだから、叶うわけじゃないんでしょ?」
父「そうだな、『唱え続けると、夢が実現する』っていうのとは違うなあ」
娘「ご利益ないのかー」
父「いや、ご利益らしきものはある。生活の『見通しが良くなる』からね。夢が実現するかどうかも心配しないで済むよ」
娘「それって、いいことなの? なんか、夢がないじゃん」
父「そう、強めに言うと、生活の見通しが良くなると夢が霧消するんだ。でも、夢がなくなるんじゃない。夢が人生の覚悟を決めた目標になるってことだよ」
娘「夢が夢でいられなくなるのか。ちょっと夢がある話だね」
では、本題へ。
◼️<前半>「ツールとしての骨格」について
だんだん生活思創の組み立て手順がわかってきたのですが、その一つに、現状の世界からベース図を作ってから進める、というのがありそうです。ここで生成AIが威力を爆発させるわけですが、世界をスライスして、その断面を舞台にして新たな生活を思創するっていう手順です。
やや専門的ですが、市場調査でスクリーニング条件をかけて、世界を圧縮していくやり方に近い印象があります。
どのあたりで世界をスライスするかというと、まず「人の口癖は、環境の状況変化と自分の人生信念がずれた時に、違和感に対して思わず出るもの」と定義して、ここでギーって機械(生成AIのことね)で切り込んで断面図を作ってみます。生成AIには、ここでの感情的なズレが何なのかを類型化してもらいました。概念上のカッティングですかね。
口癖が多種多様なのは当然なので、ある条件(ここでは環境とのギャップへの反応)で口癖を絞り込んだわけです。では、生成AIが絞り込んだ口癖パターン群で地図を作成してみましょう。
「見通しのなさ」をスタートラインだと考えていくので、図表193(「見通しの良さ」と「見通しのなさ」の対比表)の生活感情センサーの下段(信念と環境ズレで起きる4方向)で、地図の東西南北を決めてみます。
※ 対比表の詳細については、「生活思創」を試考する<終編>見通しの良さが評価軸」を参照してください
生成AIからの提示は7ケース。いつもながらのマジックナンバーの7だが、まあ、素材なので気にせずに進みます。 生活感情センサーの4方向(優越感、劣等感、闘争感、孤立感)に対して、複数の感情が入り込んでそうなのもあるので、そんな距離感を反映してプロットしてみました。この背景にあるのは、自己認識や環境認識がズレているのも関わらず、今までの比較パターンを適用してしまう古い信念です。
口癖の感情的な背景(4方向)と、「見通しのない」生活での代表的な感情(7ケース)を、同じ平面に紐で付き(気取って言うならコーディング)にしたものが、図表194です。
さて、ここから「見通しの良い」につながる生活マントラが持つであろう必要条件を試考します。つまり、今度はゴールイメージですね。中央の菱形に焦点を当てて拡大してみます。
生活マントラの「その1」でも語ったように、今までの信念が自己認識と環境認識のズレで、「おいおい、なんか違うぜ」状態になった時、思わず呟いてしまうものをここでの口癖(条件絞り込み済み)としてます。「見通しのない」生活を否定せず、自分と環境にニュートラルな態度を取らせようとするものが「見通しの良い」生活です。全ては部分的に正しくて、部分的に間違っている、っていう方針です。
ですから、相補性のある2つが作る「優越感ー劣等感」軸の感情の振れ幅を吸収できるか、または、「闘争感ー孤立感」軸の感情の振れ幅を吸収できることが生活マントラに求められる条件となります。言い方を変えると・・・
「優越感ー劣等感」軸を統合できている生活マントラは口癖3.6、5パターンあたりをつぶやく時に、自分を中庸にしてくれるようなフレーズが望ましいものになります。
同様に、「闘争感ー孤立感」軸を統合できている生活マントラは、口癖1、2、4、7パターンあたりで、中庸になれるものが望ましいと言うことになります。
残念ながら、今のβ段階ではこのぐらいの粒度ですな。たぶん、この先がまだまだあって、「優越感ー劣等感」軸の統合に重心を置く方が良い人と、「闘争感ー孤立感」軸の統合に重心を置く方が良い人との違いまでは特定できるのかも知れない。まあ、そのうちにってことで。
◼️<後半>実例として小生を差し出す
では、お約束通りに実例で具体度を高めてみましょう。生活思創の記号接地の精神に則って、小生の場合を当てはめてみましょう。
前回も書いた事例は、生活マントラの範疇に入るとは言えますが、マーケティング・コンサルタントとしての信条がフレーズになったものです。いわば、仕事マントラですw
ですから、口癖側には、思わずクライアントに対して言いそうな独り言がならんでおります。その度に「いかんいかん、フリーのコンサル風情が何を詰まってるんじゃい」って自戒していくわけですな。
でも、ここに生活マントラの原風景があるので、それほど遠い話でもないのです。
紹介済みの4つの生活マントラ(仕事寄りのマントラ)も、先の必要条件にあった脱「優越感ー劣等感」軸と脱「闘争感ー孤立感」軸のそれぞれに該当しています。ただし、生存者バイアス(正解だから残ったのではなく、残ったので正解に見える)っぽいところは否定できません。もっと中庸化に貢献してくれる切れ味の良い方向性を持ったフレーズもあるでしょう。あくまでも、必須な視点を包含していそうだという事例で見てください。
メインとなる事例は、小生の事例で、親と不登校の子どもが「見通しのなさ」から始めて、生活思創を経て「見通しの良さ」に近づこうとする姿です。晒すよ。不登校問題の課題関心人口を増やすためにも!
まず、子供は4年生から不登校になるのですが、生活感情的な「ゆらぎ」はかなり生じました。「見通しのなさ」分解図には、親である私、過去の私、未来の私、私の子ども、私が関わる社会、の5要素で組まれています。
親である私を中心に、4つの感情センサーに最も反応している対象を選定してます。それぞれの関係との間に、私のほぐしたい信念があることを整理している図です。
最初は、左側の闘争感だね。「なぜ、行けないの?」みたいな。つまり、「学校は普通行くでしょ」が刷り込まれてますから、強い違和感があったわけです。
次は、下側の自分の過去に照らし合わせて、「俺は学校に行ったし、学校制度でかなりいい線いってたぞ」みたいな、俺はできてるのになぜ?系の上から目線の感情でしょうか。つまり、学校に行くことには自分の優越感を保ってくれる世界が維持されるってことなんですな。
その次が未来からの劣等感ですかね。自分の子供が既存の学校制度から離脱してしまう不安が湧いてきます。もしかしたら、これは彼女の人生の躓きになるのかと思うことでの、未来を勝手に妄想して作った劣等感です。
そして、最後に来るのが、社会制度というか、学校制度自体への不満です。やや、「うちの家庭は・・・」的な被害者意識っぽいやつでしょうか。孤立感に近い。
この4方向の分布が「見通しのなさ」の上記の分析図です。(図表197)
そして、生活マントラへの展開を思考したのが下記(図表198)です。キーの登場人物は自分と子供なので、自分向けの生活マントラと、子供向けの生活マントラを書いてみました。登場人物との関係線の分だけ生活マントラがあるっていうのは、手筋っぽいね。
書いてて気づくのですが、脱「優越感ー劣等感」軸系のセリフは、普段から使うもので埋まっていきましたね。なるほど、これを意識的に行けばいいのね。もちろん「ウチは不登校ですから」って開き直っているわけですけど、本当に社会的な課題への関心が高まるといいなあと願っております。(課題関心人口を増やす、っていうやつだよ)
むしろ、盲点だったのは脱「闘争感ー孤立感」軸にある「休み休みやっていくとか」、「ゆっくりいきな」とかを創ったことです。これらは、あまり普段使いしてない類のフレーズです。自分は急かしすぎている。結構、オイラはせっかちだとは思ってたが、これは生活マントラにまで昇華させる意義がありそうだと気づくのだった。
生活マントラを作成プロセスには、自身の生活の癖との対話が含まれていそうだな。
とはいえ、サンプル数1の事例ですから、書き方を参照するためのものと解釈していただければ幸いです。あくまでも、書き手の生活での記号接地があってこそ、「腑に落ち感」が生まれるものなのです。パーソナル・ユースだよw
◼️そんなこんなで、まとめ。
・まとめ(1)=小生親子にとっての、新たな「見通しの良い」生活の分解図
ゴールからの眺めでできた地図です。生活思創の4つの視点で小生の「見通しの良い」生活像を整理します。
記号接地では「子どもと同じ時間を共有すること」、カテゴリー越境では「自ら新しい学びの過程をサポートしていくこと」、対称性では「変化していくことが前提で、どんなに流転してもそこに対称性はあるので、自信を持つってよいこと」、相補性では「自分の境遇、つまり、彼女の不登校がひとつのセットで、相補性がある。だからこそ生活思創のきっかけをくれていること」、が書き込めました。
・まとめ(2)=新たな「風通しの良い」生活に貢献しそうな生活マントラ
とりあえず、出てきた8案を分解図に散りばめてみました。
生活マントラは、それだけで「見通しの良さ」を提供するような凄腕のツールではありません。あくまでも、自分の「見通しのなさ」に言葉で向き合う機会の提供です。
それでも、手持ちの道具のなさからは改善されるのではないでしょうか。徒手空拳からは解放されます。肝を据えて自分の古き信念に向きあえるなら、丹田で納得できる人生に近づくようには感じますね。
せっかくですから、小生も8案を日常生活で唱えてみますよ。特に、脱「闘争感ー孤立感」軸の生活マントラは、「見通しの良い」生活の重点行動っぽいぞ。
娘「確かに、ゆっくりって大切かも。いやなんだよね、あの学校の慌ただしさ」
父「そうでしたか。父も学校のテキパキさが標準だと信じていたフシがありますので、猛省しております」
娘「いいんだよ、わかってくれればw」
父「『今を大切に』って言っていながら、もっと立ち止まったり、ゆったり進むことを行動に出したいよな」
娘「そのための生活マントラにもなりそうじゃん」
父「ああ、休み休みやっていきましょう。それが本当に見通しが良い生活なら、きっと、夢に変わる人生の目標らしきものが見えてくるでしょう」
次回は、著名な生活マントラから学ぶ、なんて思っております。生活マントラというより、生活マントラになりそうな箴言たちから試考してみるって感じでしょうか? どうなることやらです。
Go with the flow.
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