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生活空間の思創(1)「移民・移住・移転」

シーズン6は生活空間について試考します。空間の話に先立って時間の話からしますね。

 家族で生活していると、時間の話が多くなりますね。1日単位の、早く行きなさいとか、いつ帰ってくるのとかw。一年単位の、次は中学校だとか、高校はどうするのとか。もう少し長くなると、子供が巣立ったらどうするか、なんて会話はどちら様も定番ではないかと推察いたします。生活思創でも時間軸が図解に組み込まれるパターンは非常に多いので、実生活の切実さを語る時の中心となる視点が「時間」ってことやもしれません。

一方で、時間ー空間ってセットな概念です。「空間」も生活思創でもっと押し込んでみたら、「時間」並みの歯応えのある試考ができる気がしております。ということで、シーズン6は「生活と空間」にしてみたのでした。


娘「我が家は、信州松本に住んで今年が10年目だそうで」

父「ええ、早いものでトーチャンも長野県人に近づきつつあるなあ。あなたは、もう完全に長野県人だな」

娘「その前は東京なんでしょ。都会からの移住ってやつなんだね」

父「そういうことです。子供には自然が多い広い場所が良いと思ってね、子供ってあなたのことですよw」

娘「気を遣ってくれてありがとね。東京の思い出はすっかり忘れたけど。とにかく、ここは気に入ってるし」

父「まあ、そうは言ってもさ、あなたもここを離れてどこか遠くの大都市に行く時が来るかもしれないよ。都会の賑やかさが楽しい、なんて思うようになるのさ」

娘「イオンモールよりも賑やかだからね」



◼️生活拠点と移民・移住・移転

シーズン6の第一回は生活拠点とそこからの移動についてです。生活拠点の移動にも幅があるので、移民ー移住ー移転とかレベル差をつけて呼ぼうと思います。

・移民:国を跨いだ生活拠点の変更
・移住:国内で都道府県を跨ぐぐらいの生活拠点の変更
・移転:同じ都道府県内での生活拠点の変更

まずは、こんな感じで引越し距離の長さと比例するイメージです。以降、移民ー移住ー移転を上記のレベル差で使っていきます。レベル差は3レベルで「生活拠点を変えていく」(平たくいうと、お引越し)を試考します。


◼️移民の視点

「生活と空間」を移民の視点から始めます。国を超えて生活拠点を変えることは生活者にとっては最もインパクトの大きい引越しでしょうから、試考にもメリハリが出てきそうだからです。

しかし、移民と言っても差が大きくあって、やむにやまれぬ生活拠点の変更もあれば、ラグジュアリーな海外移住と呼ばれるような生活拠点の変更もあります。名称区分は移民と言えますが、その動機は天と地とほどの差があります。「移民せねば、生きていけない」と「移民で、よりあなたらしい人生の実現」はニーズが極端に違います。まずは、このあたりを生成AIで整理します。

移民と海外移住をニーズの観点から説明すると、欠乏系のニーズと充足系のニーズに対応していると考えられます。それぞれのニーズを通じて、移民と海外移住の違いを次のように説明できます。

移民(欠乏系のニーズ)

移民の場合、欠乏系のニーズに基づいて行動することが多いです。欠乏系のニーズは、基本的な人間の欲求や必要性が満たされていない場合に生じます。
生存: 戦争、迫害、自然災害などの危険から逃れるために、命を守るための移動。例えば、内戦地域から安全な国への難民の移動が該当します。
安全: 経済的困窮や治安の悪化により、生活の安定やセキュリティを求めて移動すること。例えば、経済的に不安定な国から安定した経済環境を持つ国への移住が該当します。
健康: 食料や医療の不足、汚染などの健康リスクを避けるために移動。例えば、自然災害や健康リスクが高い環境から安全な環境への移動が該当します。


海外移住(充足系のニーズ)

海外移住の場合、充足系のニーズに基づいて行動することが多いです。充足系のニーズは、基本的な欲求が満たされた後に生じる、自己実現や成長、満足感に関連するニーズです。
キャリア: 専門的なスキルの向上やキャリアの発展を求めて、より良い職業機会を探すこと。例えば、海外での昇進や専門知識の発展のための移住が該当します。
自己実現: 新しい文化の体験や自己成長のために、異なる環境で新たな経験を求めて移動すること。例えば、新しいライフスタイルや趣味の追求を求めて海外に移住する場合が該当します。
ライフスタイル: よりリラックスした生活、気候の良い環境や文化的な豊かさを求めて、心地よい生活を追求すること。例えば、リタイア後のセカンドライフを楽しむための海外移住が該当します。


このように、移民と海外移住の違いはニーズの観点からも明確に区別できます。移民は欠乏系のニーズによって動かされており、生存や安全のような基本的な必要性を満たすことが中心です。一方、海外移住は充足系のニーズに焦点を当てており、自己実現や満足感を求める動機が強いです。

生成AI

まずは、生活拠点の変更インパクトが最も強いであろう、国境を跨ぐ移動の移民でニーズの二極を図表にしてみました。現状があって、そこを満足度100としたときを基準に、過剰に欠乏した生活になればマイナスに、過剰に充足できるならプラスになるわけです。でも、国境を越える移動ともなると、それぞれ閾値を超えて「止むに止まれぬ思い」まで行き着く必要があります。

図表242

 まとめると・・

・生活充足欲求は、生活拠点の変更の内的な動機。より高い充足を求める期待があり、閾値を期待が上回る時、拠点の移動を決断する

・生活欠乏欲求は、生活拠点の変更の外的な理由。失望状態にある今の生活を、基準となる生活満足度に戻すために、閾値を失望が上回る時、拠点の移動を決断する

このあたりは、マズローの欲求段階の世界観と合致してます。



◼️移住の視点


次のレイヤーである国内移住で試考します。こちらも2極の欲求がベースになります。昨今の都会からの地方移住とかは、生活充足欲求が背景にあります。 また、地元には仕事がないから都会に出るパターンは、生活欠乏を埋めようとする欲求(図では生活欠乏欲求)です。

 子供の成長をきっかけに東京から長野への移住した小生のケースは生活充足欲求パターンの一つです。東京時代は、良いと思える幼稚園の入園が志願者が多くて大変そうとか、近所の子供が住宅街の狭い場所でサッカーしてる光景とかがあって、ジワジワ心の底に溜まるように未充足の嵩が増していくのでした。で、生活拠点の変更に踏み切ったわけです。

 そして、もう一つは、生活欠乏欲求の場合もあります。これも小生が東京に住んでいた時ですけど、2011年に東日本大震災があり、例の原発事故が起きました。この時は、最悪のケースが起きた時、原発から200km以上離れている必要があるらしいと思い、日本地図を眺め直した思い出があります。幸い、その最悪は避けられたので、そのまま東京に住み続けましたが、あの時は、「縁のある街に移住すること」を真剣に検討しました。会社員時代に2年間住んでいた名古屋とか、大学の講師を累計2ヶ月ほどさせてもらった大分とかね。なんか、リアルに思い出します。
 

国内での移住についても、外部の環境変化に対応するパターンと自己変化に対応するパターンがあり、それぞれ異なる理由が存在します。同様のフレームで具体的な理由を整理して説明します。

環境変化に対応する国内移住

外部の環境変化に対応する移住は、欠乏系のニーズによって動かされます。以下がその具体的な理由です。

経済的困窮: 経済の悪化や産業の衰退によって仕事がなくなり、生活のために移動するケースです。例えば、産業が衰退した地方から、仕事の機会が多い都市部への移住が該当します。

災害: 地震、台風、洪水などの自然災害が住んでいる地域を襲い、安全や生活基盤を求めて他の地域に移住するケースです。例えば、津波の被害を受けた海沿いの町から内陸部への移動などがこれに該当します。

治安や安全: 地域の治安が悪化したり、政治的な不安が高まったりした場合に、安全を求めて他の地域に移住するケースです。例えば、暴力事件が増えた地域から安全な地域に移動する場合がこれに該当します。



自己変化に対応する国内移住

自己変化に対応する移住は、充足系のニーズに基づいて行われます。以下がその具体的な理由です。

キャリア: キャリアアップや専門的なスキルの習得のために、より良い仕事の機会がある都市に移動するケースです。例えば、研究施設が多い都市部に引っ越し、研究開発の仕事をする場合などが該当します。

ライフスタイル: 趣味やライフスタイルの向上のために、より適した場所へ移動するケースです。例えば、自然が好きな人が都会を離れ、田舎や海沿いの地域に移住する場合が該当します。

教育: 自分自身や子供のために、より良い教育環境を求めて移動するケースです。例えば、子供をより良い学校に入れるために、教育施設が充実している都市に引っ越す場合が該当します。


このように、国内での移住についても、環境変化への対応と自己変化への対応でニーズに基づく動機が異なります。環境変化への対応は、生活の安定を求めて行われるのに対し、自己変化への対応は、キャリアやライフスタイルの充実を目指して行われます。

生成AI

生成AIは二極にそれぞれ3つの理由と動機を紹介しています。本来はもっと多様な理由や動機があるはずなので、あくまでも生成AIは代表例の提示で仕事を済ませていると推測できます。キリないからね。生活思創では、直感的に「見通しが良い」と感じる全体図(統合ね)まで押し込めれば良いので、扱い勝手を考慮して、この3X2=6要因で試考します。



◼️プッシュ型の生活拠点の変更

さて、では、環境変化に対応する移住を、外部からの理由での移住なのでプッシュ型として見ます。3つの代表的な理由は、場面場面で重なりが異なるでしょう。移住の理由が一つだったり二つだったり、ってね。理由をReasonのRで示して図解して見ました。当然ですが、3Rで重なるところが移住理由が最も高いところってことです。


図表243

プッシュ型の生活拠点の変更は、外部環境の変化がなければ「できれば、このまま生活拠点を変えたくない」わけです。しかし、何らかの生活立て直しが必要だと感じる状態です。「生活拠点の変更」をさせる理由が重なることで移民・移住・移転のトリガーが引かれます。

図表244

東日本大地震では小生は移住にまで至りませんでしたが、2024年元旦の能登での震災などを目の当たりにすると、移転・移住・移民を考えざるを得ない日がいつ来てもおかしくないと感じます。

生活インフラが戻らず、仕事も滞って、住んでる家も傷んでいるとなれば、生活の場を変えるのも視界に入ってきます。

日本に来る移民の話も、「生活拠点を変えると決めなければならないほどの理由」に晒されてきた人たちの一つの答えだと思うと、複雑な感情になりますね。明日は我が身やも知れん。



◼️プル型の生活拠点の変更

生活充足の動機が生活拠点の変更に繋がるケースを試考します。プル型と呼んでみます。これも3つの円のベン図で表して見ました。絵柄は生活欠乏からの理由の図表243と同じです。しかし、、描いてみるとその要素が生活拠点の変更にまで影響する過程は異なります。
 欠乏系は、理由が重なれば重なるほど生活拠点の変更につながります。一方で、充足系は、動機が増えれば増えるほど、どこに生活拠点を変更すればいいか定まらなくなります。
 キャリアに焦点が行けば大企業や先端企業とかがある、より経済的な活動拠点に惹かれます。教育なら、ユニークな学校や海外留学などで生活拠点が検討されます。ライフ・スタイルなら海とか山とかの自然をベースに次の場を考えたり、アートや音楽などの芸術活動が集まる場を候補にしたりします。いずれにせよ、そのどれかに強い動機が突出していることが生活拠点の変更のトリガーになります。複数の動機は、むしろ、拠点選択への迷いからすくんでしまう力学が働きます。


図表245


プル型とプッシュ型の生活拠点の変更を図表242に照らし合わせて加筆してみました。


図表246



◼️文明・産業・文化の視点で再整理してみる

移民や移住の理由や動機をいろいろ捏ねて見ました。もし、生活欠乏と生活充足の視点を統合してみたら、どうなりそうかを押し込んでみます。

 生成AIの提示は、それぞれの要素が3つという数でまとめられていました。きっと、そこにも意味があるのだろうと考え、新たに文明、産業、文化をカテゴリー名称で括って見ます。これらはライフスタイル、キャリア、教育、経済的困窮、災害、治安・安全の動機&理由の6要素から、見通しの良さげなものを、小生が任意に選んだものです。
 まあ、この3単語も定義が怪しいし、意味の粒度(特に産業はズレ感ありますね)も異なる感じがしますので、生成AIに定義を①意味のレイヤーを揃えて、②文章表現のフォーマットを共通にして、提案してもらいました。
 恣意的な選択したものもAIで外部加工を施すと、ひとりぼっちじゃない気分になるねw

文明、産業、文化はそれぞれ異なる側面から人間社会の進化や発展を示しています。これらを同じフォーマットで定義することで、それぞれの特性と相互作用を明確に理解できます。


文明

定義: 文明は、技術、知識、社会システムなど物質的および組織的なインフラストラクチャに蓄積される生活の知恵の活用である。これには、法律、政治、経済システム、都市設計、交通システムなど、社会の基盤となる構造やシステムが含まれる。


産業

定義: 産業は、製品やサービスの生産、分配、消費に関連する活動であり、人と人との価値交換の行為に蓄えられる知恵の活用である。これには、農業、製造業、技術、金融サービスなど、経済活動全般が含まれる。


文化

定義: 文化は、言語、芸術、信仰、社会規範、生活様式など、個人またはコミュニティに蓄えられる生活の知恵の活用である。文化は人々の行動、思考、感情の表現を形成し、世代を超えて伝えられる。

このように、文明、産業、文化はそれぞれ人間の活動や社会の進化において異なる側面から貢献しており、相互に影響を与えながら発展しています。文明は社会の物質的・組織的な基盤を形成し、産業は経済的な活動を通じて社会の経済的基盤を築き、文化は個人や集団のアイデンティティや価値観を形成することで、これらの進化に深く関与しています。

生成AI


結構、見通しの良さがでてきたので、図解化しました。生活拠点の変更って、誰にとっても最後に近い選択肢ですよね。それが充足でも欠乏にもかかわらず、文明・産業・文化に人生を委ねている部分が大きいですな。

図表247

ちなみに、この文明ー産業ー文化の3層って、マーケティングのマクロ分析(Politics,Economics,Social,Technologyの頭文字を取ったPESTが有名)と同等ですな。こちらは、「人間の集団の構造を規定するのが文明」、「集団の機能を規定するのが産業」、「集団の意味を規定するのが文化」、と見做せます。「人は一人で生きていけない」と言い切れるのは、「集団の文明、産業、文化とのやりとりがあってから、はじめて個人を規定することができるから」とも言い直せますな。少なくとも、この3層のバランスが崩れた場所には人は生活し続けたくない、のです。

※学校界隈での理系とか文系とかの分け方は、個人の学びコンテンツベースでの区分です。「集団とともに生きる」がベースになるなら、文明、産業、文化の比率違いで分けるのもアリだな。このあたり、いつかもう少し押し込みたいお題でございます。


父「どこか移住したい場所があるかい?」

娘「うーん、今のところは、ここがいいな。友達もいるし・・・」

父「じゃあ、もし、ここがネットが繋がらなくて、物を買うところも周りからなくなってしまったら、どうかな?」

娘「え?、そんなの考えられないよ。そんなことあるの?」

父「例えば、ここに大地震が来て、いつまでたっても復興ができない状態になったら、ヤバいでしょ。おまけに学校やフリースクールも閉鎖になって、友人とも会えなくなるかも」

娘「そりゃ、酷い話だな。想像するのも嫌だな」

父「トーチャンも同じです。人が今の生活拠点を放棄するって、そんな簡単なことじゃない。だけど、それでもそこに居られない人もいることだけは確かだね」

娘「移民の人とか?」

父「普段から、少しは想像しないといかんのかもな」


シーズン6「生活空間の思創」ってのを始めてみたよ。昨今の国際情勢やら社会事情なんか見ちゃうと、シャレにならない話に思えたりして。まあ、悲観的になりたいわけではありませんが、戦争の話で生活思創をカマしたときと同じような不穏さは隠せませんね。

Go with the flow.


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