脇役のドラマ 『THE FIRST SLAM DUNK』
中学3年の夏、最後の公式戦。
なんとなく友達が入るから入部したバスケ部を3年間続けた。
地区大会2回戦。
うちは強豪でシード校だからこれが初戦。
1Q、2Q、3Qレギュラーが圧倒的点差をつける。
3Q中盤、控えの3年達が呼ばれ始める。
レギュラーと一人、また一人交代していく。
まだ、呼ばれていない3年は僕ともう一人。
4Q、残り5分。ついに僕が呼ばれた。
実はこの時まで、僕は公式戦で一度も得点できていなかった。
それはチームメイトも応援に来てくれている人達にも知られている。
きっと次の試合で出番はない。
これがラストチャンスだ。
チームメイトは僕の為にパスをくれる。
応援も僕がボールを持つ度、盛り上がる。
みんなが僕の初得点を願っていた。
がむしゃらにゴールを狙うけど、相手も勝てない点差とはいえ最後の大会、本気であたってくる。
得点できないまま時間が刻々と過ぎていく。
ついに試合は残り1分20秒。
神様が試合に出られずとも、腐らずまじめにやってきた僕に力をくれたのか。はたまた、積み重ねてきた努力が実ったのか。
その時、身体が勝手に動いたようだった。
3ポイントライン上、右45°でパスを受け取る。
左にフェイントを入れ、右のドライブで相手を抜き去る。
ゴールに向かって一直線。ディフェンスはいない。
フリーでレイアップシュートを打つ。
一瞬の静寂の後、大歓声が沸き上がった。
まさに山王戦、ミッチーの3Pバスケットカウントが決まった時のような。
これが中学バスケ公式戦、3年間で僕の決めた唯一の2点だ。
この後、高校に入ってもバスケを続けた僕は公式戦で何点も得点できるようになった。でも、自分の中で一番残っているプレイは、ずっとこのワンゴールだ。十数年も前の話なのに、未だに親も、見に来てくれていた整骨院の先生もこの話をしてくる。
傍から見れば僕は、試合にほとんど出ていない脇役だったかもしれない。
でも、そんな脇役にもドラマはある。
それは時に心を大きく震わせ、鮮明に残る。
小暮さんだって、海南の宮益さんにだってドラマはある。
⚪︎⚪︎⚪︎
映画『THE FIRST SLAM DUNK』を観た。
面白かったし、感動したし、嬉しかった。
もう新作はないと思っていた、大好きな作品の映画。
どんな話をやるのか、前情報は入れないで観に行った。
めためたカッコいいOPで理解した。山王戦をやるんだな!
漫画で何回も読んだシーンが動いてる、喋ってる。
何度も胸を熱くした山王戦がスクリーンで観られる。
最高だった。所々、涙が込み上げてきた。
ただ、一つだけファンとしてワガママを言っていいのなら、
丸々、山王戦で観たかった。
観たかった好きなシーンが入っていなかった。
所々、回想シーンが入ることでテンションが途切れる。
井上先生や製作陣のインタビューを読めば、今回の映画の形は大いに納得できたし、『THE FIRST SLAM DUNK』という一つの映画として最高の出来だと思う。原作も脚本も監督も原作者の井上先生なので、これが正解であるのだろう。
これはナンセンスな意見かもしれない。
ただ、いちファンとして、漫画で山王戦を読んで感じたあの気持ち、
もっと熱い山王戦が観たかったなと思っただけ。
そう思うのは、まだ、心が未熟で青いのかな。
100点の作品を120点に出来たんじゃないかっていう、個人的な感想。
ただ、映画も好きすぎて3回観に行ってますから。安心してくだせぇ。
⚪︎⚪︎⚪︎
最後にスラムダンクで一番好きなセリフを
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