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松坂大輔投手、ラスト5球。場内の選手、観客らは数々の松坂ドラマを思い出しながら見守っていたはずだ

高校時代、日本のプロ野球、メジャーリーグ。それぞれで頂点に立った松坂大輔投手(41)が、現役生活を締めくくるマウンドに上がった。

西武の本拠地で、シーンと静まり返った中で、最後の投球が行われるとは思わなかった。選手も観客たちも、それぞれが印象に残る松坂投手のドラマを思い出しながら見守ったように思えた。

19日の日本ハム戦。先発でマウンドに上がった。バッターは近藤選手。1球も振ることがなかった。松坂投手は5球を投げて、結果は四球。

初球から制球が定まっていないようだった。無理もない、右手中指の感覚はなく、ボタンを締めるのも苦労するぐらいなのだから。

本人は「本当はなげたくなかった」と打ち明けるが、ラストピッチングを見たい人たちのためにマウンドに立つことを決心したそうだ。

交代が告げられマウンドを下りた後、相手のファイターズベンチの前まで向かい「ありがとうございました」と深く一礼するシーンが印象的だった。こういう気遣いが松坂投手の素晴らしいところだと思う。

静かなスタジアムでのピッチングだっただけに、私はメジャーで初めてイチロー選手と対戦した日を思い出した。

2007年4月11日。本拠ボストンでの試合だった。マウンドに立つ松坂投手に、打席に立つイチロー選手。場内は総立ちで、割れんばかりの歓声がフェンウェイパークにとどろいていた。一球一球に拍手や大歓声。「狂乱状態」に近かった。その日、イチロー選手から1奪三振を含め、4打数0安打に封じた。

松坂投手がメジャー1年目の年だった。この年、レッドソックスは世界一に輝く。松坂投手もレギュラーシーズンで15勝を挙げて、ワールドシリーズでも第3戦で勝利投手となり、世界一に貢献した。

そして、今年、レッドソックスでは、メジャー1年目の沢村拓一投手が奮闘している。日本時間19日にアリーグ優勝決定シリーズ第3戦に登板して、12-3の勝ち試合のラストを締めくくった。

レッドソックスでのメジャー1年目で「世界一」に輝いた男。同じチームでメジャーデビューし「世界一」を目指す男。19日に一人はマウンドを去り、もう一人はマウンドで好投した。2人が交錯した今年、レッドソックスは、世界一に輝くのかもしれない。

松坂投手、日米23年で377試合登板、うち170勝。本当にお疲れ様でした。

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