見出し画像

氷菓のある風景

 夏の色は鳴りを潜め、散歩道も秋の装いになりました。肌寒い風の吹く帰路を経て家に着くと、私は冷凍庫の扉を開きます。

 そう、我が家の冷凍庫は一段全てアイスです。

 屋外が寒くなろうとも、家の中ではアイスを食べたくなります。部屋を暖めて、或いは風呂上がりの温かい身体に沁み渡るアイスクリームは、その冷たさと裏腹に心を優しく溶かしていくような、そういう安らぎを齎します。

 その日の風呂上がり、私はいつものように冷凍庫の前に立ちました。すると同じく風呂上がりの息子が「ぼくも。」とアイスをねだります。
 あんなに小さかった息子も、もう3歳になります。いつの間にか言葉も増えて、一人称も「ぼく」になったんだなぁとしみじみ思いながら、どのアイスがいいかそれぞれ選びました。

 ソファに座って、今日という日を振り返りながら、二人でアイスを楽しみます。

 会話の途切れ、一瞬の凪の後に、不意に息子が呟きました。

「やっぱりお家には、
 パパがいてくれないと困るんだよ。」

 色々な事をよく観察している息子のことです。この数ヶ月の家庭環境にも、多くを感じているのでしょう。

 しばらく前から頻繁に口にするようになった「パパは怖くない。」という言葉の背景に、どれほどの主観的事実と感情が込められていることかと想像すると、なんとも言い難い気持ちになります。

「ありがとう。そうか、パパがいないと困るんだね。大丈夫、パパはずっといるからね。」

 そう応えると、息子は屈託のない笑顔を咲かせて私の胸に飛び込みました。

 
 大丈夫。
 きっと、大丈夫。

 腕の中の小さな温もりを抱きしめながら口にしたアイスクリーム、甘く、ただひたすらに甘く、心の空に溶けていきました。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、子どもたちの心が守られる社会でありますように。


#子どもの成長記録
#日常の一場面を #再現してみた
#氷菓 #ただアイスクリームという意味でタイトルにしました #名作アニメ氷菓を期待して記事を読んでくださった方には深くお詫び申し上げます #いったいどれくらいの方がアニメを想像して記事を開いてくださったのでしょうか #わたし気になります
#冷凍庫 #アイス #アイスクリーム #冬でもアイスを食べたい #風呂上がりにアイス #たまに風呂でアイス #エッセイ #日記 #記録 #恐怖
#人生 #生きる #今生きているということ

ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。