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白雪姫の悪役は実母。

 今や世界的に有名な物語となった『白雪姫』は、ドイツ各地の民話メルヘンを収集したグリム兄弟により編纂された『グリム童話集』を原典とします。

 CERO規定の厳しい現代社会のような生温い物語ではなくて、グリム童話の直訳本は相当に残酷で不気味なホラー系雑誌でした。もしもグリム童話を忠実に再現した映像作品が現代にあったら、CERO Z(18禁)だと思います。

 創作物に寛容であった当時のドイツにおいても、『白雪姫』には一つ大きな問題がありました。それは配役の問題です。

 当初、悪役は実母でした。

 自身の理想の娘を産みながら、しかし娘が自分より優れることを是とせずに、鏡に美しいものは誰かと問い、白雪姫を憎み、迫害し、家来に殺害を命じ、猟師の持ち帰った白雪姫の内臓(実際にはイノシシの肝臓)を塩茹でにした後に嬉々として喰し、白雪姫の存命を覚知すると幾度も殺害を企てて実行し、絞殺、呪殺、毒殺を以て凶行を重ねた末、遂には白雪姫に復讐の機会を与え、結婚披露宴で灼熱の鉄靴てっかを履いて死ぬまで踊り続けたのは、 

 白雪姫の実母です。


 そのほうが自然であるとグリム兄弟が考えたのか、或いは伝承自体が実母と娘の話だったのか分かりませんが、グリム童話集の初版に収録された物語には実母による主人公の殺害が明確に描かれていたことは事実です。

 しかしそれは都合が悪いということで、第二版から悪役は継母であると改訂されてしまいました。

 もしも彼女が継母だったら、白雪姫にあれほどの嫉妬をすることはなかったと私は想像します。何故ならば産まれてくる娘に対して極めて具体的な美のイメージを押し付けたのは実母であり、彼女にパーフェクトベビー願望があったのは明白だからです。呪いの櫛毒林檎の存在から示唆されるように、白雪姫の実母が魔女のような毒親であったことは想像に難くありません。

 そう、白雪姫とは毒親と娘の物語なのです。


 ここで現代の研究論文を御紹介いたしましょう。

全文はリンク先pdfファイル参照

https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/advpub/0/advpub_2019.001/_pdf


 表1にあるように、児童虐待の加害者で最も多いのは実母(48.5%)であり、次いで実父(38.9%)です。実母以外の母親(継母)が児童虐待の加害者となるケースは0.6%に過ぎません。様々なケースがあることは理解しますが、それでも童話『白雪姫』が継母への風評被害作品であることを否定できません。マスメディアの取り上げる虐待事例に実子以外が目立つのは、何らかの偏向報道であると疑わざるを得ないでしょう。こうした研究が明らかにすることは、グリム兄弟が卓越した洞察力と取材力を駆使して人間の本性や社会の闇について赤裸々に描いたという歴史です。


 白雪姫コンプレックスという言葉があるように、私の懸念事項は虐待サバイバーである白雪姫と、屍体愛好家ネクロフィリアである王子様の結婚生活です。彼が第何王子なのか不明ですが、王族には子を継ぐ責務が課せられます。仮にも実母を、結婚披露宴の余興として惨死させる夫婦のもとに子どもが生まれたら。


 果たして物語は、どこに向かうのでしょうか。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、子どもの人権が侵害されることのない社会が実現しますように。




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