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恐竜博士と隕石の風景/2歳児の登園拒否から考える人生と仕事の話

 恐竜をこよなく愛する息子は齢2歳ながら多くの種類の恐竜を識別し、ちびっ子用の図鑑に飽きてきて詳細な図鑑を求めるようになりました。最近は学童用の図鑑から洋書まで広く読み漁って楽しそうにしています。

 例えば箱にディプロドクスと書いてある小さなフィギュアを「これはブラキオサウルス!」と主張するので見分け方を尋ねてみたところ、息子から「足が違う」という返答がありました。ここで「これはディプロドクスだ」と否定するのはナンセンスです。商品に書いてあることが正しいとは限らない。教えてくれた息子にお礼をいってから調べますと、ブラキオサウルスのブラキオは「腕」の意味で、他の竜脚類と比較して前脚が後脚より長いことが最大の特徴であったようです。見ると確かに件のフィギュアは前脚が長い。この骨格はディプロドクスよりもブラキオサウルスと考えた方が妥当であると、彼は判断したようです。


 先日図鑑を読み聞かせていた折、ついに息子が「なぜ今、恐竜がいないのか」という疑問に行き着きました。動物園にもいない、水族館にもいない。博物館には骨しかない。恐竜はどこにいるのか、と。

 諸説あるけれど、と前置きした上で通説を噛み砕いて説明します。すなわち、巨大な隕石が地球に衝突したことで気候変動と分厚い雲等により太陽光が殆ど届かない状況が続き、その間に多くの植物が死滅し、このために植物食恐竜が餓死し、それを餌にしていた肉食恐竜も絶滅に至ったと。

 息子は「Wow…」と言って背筋を伸ばし、頷きながら「そういうことか…」と呟きました。


 それから数日後のことです。
 寝かしつけに絵本を読み聞かせてきた妻が息子の様子を教えてくれました。どうやら新しく購入した絵本の中の「恐竜ニュース。メキシコに巨大な火の玉が落ちてきて…」というシーンで息子が不意にピンと反応したようです。

これは……!!
パパがさっき言ってたやつだ…。
大きな火の玉が落ちてきて、で、で、
空が暗くなって、植物が枯れちゃって…
それで、植物食恐竜が「おなかすいた〜」って
死んじゃって…で、みんな死んじゃったんだ。

息子語録「ぼくのきょうりゅう」より抜粋
過去は全部「さっき」になる息子


…ちゃんと理解していたのか、君は。

 たった一回の説明で理解して記憶し、食物連鎖や死を概念として捉えたようでした。本を自分で読みたい気持ちから文字を学び、いつの間にかアルファベットをマスターしてひらがなの読みに挑戦している彼をみて、そんなに焦らなくてもいいのにという気持ちを抱きます。一方、これほどまでに彼を突き動かす「好き」という衝動を決して邪魔してはいけないと強く思うのです。

 渡邊家は夫婦共働きですから、子ども二人は日中保育園に預けています。ところが息子は「今のしごと(保育園)は合わないんだ…」と言って、登園を拒否する日が出てきました。工夫しながら楽しむ方法を考えてみたら、という提案をしたこともありますが、「いろいろやってみたんだけど、合わないんだよ。」と既に創意工夫をした上での感情の表出であったようです。出来ることなら彼の気持ちを優先させてあげたい。そういう思いを背景に関係各所と相談を重ねた結果、私が育休を取得できることになりました。

 一緒に見学に行った幼稚園のうち幾つかは「ここなら良い。幼稚園がいい。」と気に入っている様子でしたから、休みをとりながら入園準備を進めていきたいと考えています。私の仕事はしばらく休んだってどうとでもなりますが、彼の人生は「今」が大切です。大人も仕事が合わなければ転職を考えます。当然、彼も同じように環境を選んでいく権利があるはずです。

 人生は縁で成り立ちます。
 二人の子どもに巡り逢えたことも不思議な縁。
 今、私の人生にも転機が訪れています。

 子どもを守らなければ未来はない。
 言葉だけではない行動の一手を私は選択します。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の人生が貴方の選択によって肯定的に展開されていきますように。


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