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パラノイア 《詩》

「パラノイア」

其処にはかつて掲げられていた

理想が色褪せながら
風に吹かれていた

挑戦的で

鋭く叫び続けられていた言葉は無く

掲げられた理想は輝きを失い

気怠い静けさだけが
周囲を覆っていた


漠然とした失望感が漂い 

攻撃的で垂直的な思考は

個人主義で防衛的な
水平を保ち地平線に沈む

目的の喪失がもたらす限りない閉塞感

無防備な神秘主義は強い力を持ち

現実との差異が支柱から垂れ堕ちる

これが明白な善であると
彼等が差し出した物には

形はあるが心が無かった

そして彼等が進むべきだと
指差した方向には

大切なものは何も無かった

敗北に似た風が吹いている


僕は其の疑問の延長線上を

歩き続けている

目を開けば殺人的な満員電車に
揺られていた

僕は立ったまま眠っていた

そして自嘲的に微笑んだ 


正義の為に闘え 武装化しろ

仮想敵 反社会的なパラノイア

異なった架空の物語と

実際の現実との間にある

真っ直ぐな一本の線

其れはただの線ではない 

君の書いた文字だ
そして 僕の書いた文字だ

其の1列に並んだ文章を読み続ける 

僕等の書き残した長編小説が其処にある

其の物語の中に本当の君が居る
そして僕が居る

僕自身の投影なのかもしれない


いくら追いかけても遠ざかって行く
砂漠の蜃気楼に似ている

だけど言葉は ずっと君の中に残る

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